31話 ゲートル領
翌日
ガレオン号艦内
「甲板に絨毯を敷け、一番高級な応接セットを出せ、魔道具を・・・・・・」
朝から艦内は、隊員たちが忙しく働いていた。
アレクは、いやオリオン家は獣人達を保護している。
今回の会談者が獣人と敵対しているのか。
それとも獣人と友好的なのかが分からなかった。まだ結論は出せない。
「師匠、この魔道具どこに置きますか。」
「これは・・・目立つ所に置け。あと、隊員たちにローブと杖を持つようにしといてくれ。」
「わざと全員が魔法使いとわかるように。」
「魔法使いたいの復活だ。」
「・・・・・・・・」
ゲートルはどうして自分はこんなに不幸なんだ。
魔物に襲撃され、空飛ぶ船が来たり、他の領地に行けばいいのにと思ってしまう。
だがゲートル領に来たのだ。今は下手に出ることしかできない。
相手の考えが判らなければどうにもできない。
ゲートルと部下たちはどうするか、どうしよう、どうにかなるかと考えても考えても答えは出てこない。
「ゲートル様、お時間です。」
「・・・」
ガレオン号甲板
「ゲートル男爵、ようこそオリオン号に」
「オリオン準男爵、船への招待に感謝する。」
ゲートル男爵はオリオン号の甲板に着いたときにびっくりしてしまった。
甲板にふかふかの絨毯が敷き詰められ。高級なソファーが置かれ。調度品の代わりに、魔道具らしき物が置いてある。
「ゲートル男爵、皆さま方もお掛けください。」
アレクは、直前で作戦を変えた。色々と準備をさせて砲術外交をするつもりでいた。
だが自分が高圧的な態度で話し、脅して、怖がらせ、言うことを聞かせても上辺だけだ。
疲れるしやめようと思い、普通に接しようと思ったのだ。
ただ余計に怖がられた事が予想外であった。
「ゲートル男爵、昨日は失礼しました。こんな子供が大きな態度を、申し訳ございませんでした。」
ゲートルは戸惑ってしまった。昨日と今日どちらが本物だと。
「いえいえ、私も昨日は色々と有り過ぎて取り乱しました。」はっはっはっ
「ゲートル男爵、オリオン家は、山脈南側の調査を目的としています。調査目的以外はどうでもいいのです。」
「えっぇ。」
ゲートル、言葉を失う。
アレクはゲートルに対して大森林の中に町がある。オリオン家はその領地を所有していること。そこに獣人が住んでいること。
調査も大森林を一周して、帰るつもりだったと。
ゲートルは、余計に迷ってしまったのだ。だがアレクの一言で決まった。
「誰でも、魔法を使えるようになりますよ。」
この山脈南側でも1000人に1人しか魔法使いがいなかったのだ。
ゲートルのいるこの地はミルトン王国である事、そのミルトン王国は人間が多いが獣人も住んでいる。特に差別はないが人数が少ないので立場が弱い事。
現在、隣国のグラムット帝国と戦争状態との事。その関係で兵がいなく魔物の襲撃を撃退できなかったと。
ミルトン王国とグラムット帝国は、いままで大森林を領地として主張していない。
グラムット帝国は、10年前に獣人の国を、滅ぼした国だと教えてくれた。
アレクは思う、「グラムット帝国とは仲良くできないな。」
アレクは、ゲートル領の利点を探す。
ゲートル男爵領は農作物が多く交易もできる。オリオン領からより近くゲートル領の方が飛行艇は運航がし易い。
「取りあえずは交易をしましょう。」
「オリオン領は魔道具などを輸出できますが、ゲートル領は何か輸出できるものはありますか。」
「家は耕作地帯ですから、・・農作物です。」
「ではそこから始めましょう。あとは追追と。」
等々色々と話を進め最終的には、ハロルド・オリオン伯爵の決済が必要だが大丈夫と伝えた。
あと倒した魔物は放棄した。面倒だから上げますよと言ってしまったのだ。
これにはゲートル男爵、大喜びだった。
そんなこんなで話も進み、翌日には城塞都市を見て回れる事なった。
翌日
アレク、ユリ、リック、マックは4人で出かけた。
他の隊員は、順番で出かけるようになった。
「初めて来る街は、わくわくしますね。」
「マック、お行儀よくね。」
「ユリは、すぐ怒るよな。」
ユリ、マックを睨む、マック冷や汗が出る。上下関係がわかりますね。
「食堂がある。入ってみよう。」
「席、あいてますか?」
「いらっしゃいませ。好きなところにどうぞ。」
「何かおすすめはありますか?」
「香辛料を混ぜた。料理でカレーがおすすめですよ。」
「カレーですか、ライスはありますか?」
「ライスですか?ありますが、パンはいらないのですか?」
「両方ください。みんなも、絶対美味しいから頼みなよ。」
「はい、同じもので。」
「カレー4人前、お願いします。」
「はい、カレー4人前。」
「・・・・・・・」
「なんですか、この匂いは。美味しそうなにおいです。」
「リック、小鼻が広がってるよ。」
「そんなことないよ。」ちょっと怒ってるリック。
「お待ちどうさま。」
みんな無言であった。カレーの色合いがユリたちには衝撃的だったのだ。食欲を誘う匂いであったが、見た目が良くなかった。黄色い液体で見た目がウンチを想像してしまったのだ。
「こ、これ食べれるんですか。」
「・・・食えるのか。」
そして・・
「うまっ」
「うっ、うまい。」
「・・・・・・・」 パクパクもぐもぐ。
「カレーライス美味しい。」
アレクは、大満足であった。
大森林で香辛料が採れるよな。あとサトウキビもありそうだな。
アレクは、この南の気候から香辛料とサトウキビはあると踏んでいる。
グラムレット帝国は、行っても無駄になりそうだから一度帰ろうかなと思っているアレク。
「次の店に行ってみよう。」
「私、洋服店に行ってきます。」
「マック、ユリについて行って。」
「はい。」
「僕たちは、あっちに行こうか。」
「師匠、孤児院のお土産選ぼうよ。」
「そうだね何か珍しい物でも探そう。」
アレクとマックはその日、大量に買い物をしてしまった。
大人買いだ。 子供だけど。