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302話

グラムット帝国


アレクはグラムット帝国の帝都城へ来ていた。帝国宰相マトリック・グレイトスと会談をするためである。


「宰相久しぶりだな。」

「おぉアレクス殿久しぶりよな。」

「私が来た理由は分かっていると思いが、何か言う事はあるか。」

「すまなかった。」

グラムット帝国宰相は素直にアレクに謝った。まさかグラムット帝国宰相が素直に謝るとはアレクも思っていなかったのであった。

「謝られても起きてしまったことはどうにもできまい。謝罪を受け入れるとしよう。だがこれからの事を話さなければなるまい。」

「分かっておる。此度は申し訳ない事をした。」

「宰相、グラムット帝国でも、あの者達はどういう扱いなのだ。」


宰相は皇帝崇拝者の内情をアレクに説明をしていく。それは皇帝崇拝者たちの皇帝の位置付けにあった。崇拝者内で皇帝を神としている。これは皆同じだ。だが神に祈るだけの者と、そうでない者に分かれ、そうでない者の中で過激派がいるのであった。

皇帝崇拝者2000万人のうち過激派と言われる者達は約20万人とされている。この過激派たちは神を崇拝しているうちにグラムット帝国自体を神の国と称するようになっていた。神の国を侵略してきたオリオン王国は神の敵となったのだ。神の敵としているのは過激派だけである。他の崇拝者たちはあくまで皇帝を神としているだけである。

グラムット帝国内でも過激派の思考は受け入れられない者であった。皇帝を崇めているだけであれば問題は無かったが、皇帝とグラムット帝国を神の国などと称していることが問題となっていた。

宰相もグラムット帝国の民である事から対応に二の足を踏んでいたのである。


「宰相、オリオン王国いや、オリオン王国連合に対しての攻撃があったのだ。生半可な対応では済まさぬぞ。」

「ドワーフ王国に対しては使者に対してきちんとした保証を行う。それにドワーフ王国の城の再建も行う。」

「そんなことは当たり前だ、グラムット帝国の民がやった事なのだからな。」

「アレク殿、過激派の対応をグラムットに任せてもらえないだろうか。」

「それは無理だな。こちらは直接狙われているんだ。」

「では二月の時間を貰えないだろうか。」

「宰相は二月で解決できる算段を持っているのか。」

「ある。」


アレクはグラムット帝国の宰相がどのような手を打つのか興味を惹いた。

「二月だな、グラムット帝国の宰相ともあろう者が失敗はするまい。任せよう、だが二月経っても解決できないときはこちらの言う事を聞いてもらうぞ。」

「分かった。」


グラムット帝国宰相であるマトリック・グレイトスは過激派と言われる者達の幹部と会談をした。過激派の中でも今回の実行部隊を指揮していた、メットという者を除いた幹部と会ったのである。デイトナとカルメルの二人である。

マトリック宰相はこの二人にメットを今回の主犯として引き渡す様にしたのだ。その代わりにグラムット帝国内でデイトナとカルメルに過激派たちの領地を与える事を約束したのである。グラムット帝国ではこの者達は平民である。領地を貰う事は貴族として取り立てる事を意味している。

二人は大喜びで承諾をしたのである。グラムット帝国での領地としては子爵位ぐらいの領地であったが20万人者人々を囲い込むのには十分な広さであった。

メットを主犯とした計画に係った者達数百人を引き渡しグラムット帝国内で公開処刑としたのだ。このニュースはアース大陸南部を駆け巡った。何しろオリオン王国の次期王が狙われたのだ、その責任はグラムット帝国にあるのである。グラムット帝国が下手な対応など出来るはずもない。

マトリック宰相は帝国民に対して罪の罪状を伝え過激派がいかに偏った思考をしているのか民に浸透させたのであった。

グラムット帝国の民たちは過激派に対し元から良い感情は持っていなかったが、この事が決定打となり過激派たちは肩身の狭い思いをすることとなった。一部は過激派を抜ける者もいたほどであった。

宰相は過激派の幹部を取り立てる事で貴族と領地を与えている。肩身の狭くなった過激派たちは挙ってその領地に移っていった。

過激派たちの領地にいた者達は他の領地に移され過激派しかいない領地となっていた。ここまで一月しか経っていなかった。


マトリック宰相は過激派に対して手を緩める事をしなかった。領地に封じ込めた過激派と幹部二人。この幹部二人を争わさせたのだ。デイトナとカルメルの二人を同列の共同領主としたのだ。

過激派の中でデイトナ派とカルメル派に別れ争いに発展するまでにそんなに時間はかからなかった。

そして過激派の中でスケープゴートにされたメット一派の生き残りを宰相は利用して二人の争いを煽ったのだ。

領内で三つ巴の戦いが行われ、過激派同士の殺し合いが行われていた。

領内での争いは酷いものであった。同じ皇帝を崇拝する者同士が権力に取りつかれ相手より有利な立場になろうと争っているのだ。領内では誰を支持している事が分かるように服の色で分けていた。違う色の服を着ていた場合は、他の色の服の者達が集団で暴行を加えて殺していったのである。

三つの勢力のどれかに入らなければこの場所で生きていけない状態であった。領内を抜けようとする者もいたがデイトナとカルメルによって妨害され、領外に出る事が出来ないようになっていた。

こうなるともう神の崇拝どころではなくなっていた。この事はグラムット帝国の内外に情報が流されていた。過激派以外はグラムット帝国の恥と言われるようになっていた。

このグラムットの恥たちが争い、より過激になった時にグラムット帝国宰相が動いたのである。

グラムット帝国最強の軍である、第一軍団と第二軍団が過激派の領地の内乱鎮圧を目的として過激派の領地に進軍したのである。

過激派の者達はグラムット帝国軍が領地に来るまで何も起こさなかった。領地の外に気を配っていなかったのだ。焦ったのは貴族となったデイトナとカルメルの二人である。帝国貴族としての貴族法を知らない二人は、グラムット帝国軍に対して猛抗議を行った。グラムット帝国軍はそんな二人を会談に来たところを捕らえてしまった。

そして過激派たちを捕らえていったのであった。

グラムット帝国軍は過激派たちをすぐには殺さなかった。手傷を負わせたがきちんと捕らえて裁判を行ったのである。


これは宰相の手際の良さを見せつける物であった。


20万人にも及ぶ人々を捕らえる事は難しい、この領地内から出さないようにしたのだ。そして一人一人を裁判にかけていったのである。裁判は二月以内で終わる物ではない。そこはオリオン王国と宰相はうまく調整を取っていたのである。

アレクは手際の良さに感心していた。だがこれからがグラムット帝国として腕の見せ所だと思いアレクは静観する事にしていた。


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