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300話

マルテナ王国の公爵、そこには中年を少し過ぎた男がいた。

「公爵様・・」

誰かが公爵を見つけ声を出していた。静かなこの空間でその声が響いていた。

この場にいる貴族達が一斉に公爵を見る。見られている侯爵は何事もなかったように大広間の真ん中を歩き玉座に向かっている。

玉座にたどり着く寸前にアレクにその公爵は呼び留められる。

「そこの中年のおっさん。」

公爵は自分の事とは思わずに知らん顔をしている。通常公爵であればおっさん呼ばわりをされても怒るか部下が手を下すであろうが、今この場所では誰も何も言えない。

「お前だよ、いきなり入ってきて玉座に向かって歩いているお前だ。」

「なんだ我の事か、良きに計らえ。」

公爵はアレクを無視して玉座に向かう。アレクはその公爵を魔法で吹き飛ばす。公爵は何が起こったのかが分からずに壁に激突してしまう。そのまま気を失い動かなくなった。

誰も公爵に近づこうとしない、アレク達は公爵をそのままにして貴族達との話を続けていく。

暫くすると公爵が気が付き怒鳴りだす。

「なんだお前らは我は公爵であるぞ。お前たちその者を捕らえよ。」

貴族達は誰も動こうとはしない。公爵を冷たい目で見ているだけであった。

「な、何をやっている早くしろ、我は公爵であるぞ。」

「そこの公爵だというおっさん。マルテナ王の親戚の公爵で間違いないか。」

「なんだ我の事を知っているではないか。良きに計らえ。」

「おい、この公爵を拘束しろ。」

広間にいる衛兵はアレクの指示に従い公爵を拘束する。侯爵は何が起こったのかが分からずに抵抗するが衛兵に押さえつけられて何も出来ない。

「は、なはせ我は公爵であるぞ、お前らは死刑だ、死刑だぞーー。」

「公爵さん、お前はこの場所に何をしに来たのだ。」

「我が王位に着くために来たのだ。」

「はぁー、王位につくだと。そんなことできる訳ないだろう。誰に言われたのだ。」

「我の忠実な家臣が今日この場所に行けば王に成るかもと言っていたぞ。」

アレクは公爵の家臣が嘘をついてこの場所に送り出したのだと思っていた。何もしなければ処刑と分かっている家臣が公爵に出来る精一杯の事だったのだろう。

だがそんな事は関係ない。この公爵が原因で争いが起きたのである。

「そこの公爵、お前は処刑となった。後日公開処刑とする。」

公爵は何を言われているのかが分からなかった。まさか自分が処刑されるなどと思ってもいなかったのである。

「ななな何を言っているのだ。我が何故処刑になるのだ。」

「お前はマルテナ王国とエルフ、ドワーフの問題の元だろう。処刑は当たり前だろう。」

「エルフとドワーフの争い、そんなものは知らんぞ。」


このおっさん公爵は自分のやったこと自体忘れていた。エルフの女性に惚れドワーフの夫なる者にやきもちを焼きエルフとドワーフに色々とちょっかいを出したことを完全に忘れているのであった。公爵が家臣に指示を出した。公爵はもうその事は終わったことになっていた。家臣に指示して終わりなのである。


アレクはこの公爵の話を聞いてあきれてしまった。公爵という位に胡坐をかき好きなように暮らしている。王の親戚という立場もあっての事だが誰も何も言わずに従っていたのである。

そして王以外には怒る者さえいないのである。


「もういいこいつを連れていけ。」

公爵を拘束している衛兵は公爵を連れて広間を出ていくのであった。

「皆の者よく聞け。公爵は後日、争いの原因として公開処刑とする。この中で異議のある者がいるなら今言うが良い。」

アレクの言葉に誰も反応しない。出来るはずも無いのだ、先ほど殺される様を見ているこの貴族達は何も言えないのだ。

貴族達も王族の血が途絶える事は悔しいが、それ以外の事は妙に納得していた。公爵がしでかしたことの責任は誰かが取らなくてはいけない。公爵自身が生きているのであれば自分で責任を取らせるしかないのである。

身代わりなど認められないだろうが、貴族達はそんなつもりなど露ほども思っていない。


こうしてマルテナ王国の割譲等の事柄が一件落着したのであった。


「やっと終わったな。」

「カイン兄は黙っていただけじゃないですか。」

「アレク、ずーーっと黙っているのも疲れるんだぞ。」

「まぁそうですけど。でもドワーフとエルフの領地が増えてよかったですね。」

「アレクそれは違うぞ。」

「ルドルフ兄の心配は分かりますよ。種族が違う者たちをドワーフとエルフが受け入れないと思っているのでしょう。」

「そうだな。ドワーフもエルフも頑な所があるからな。」

「それではドワーフもエルフも発展しないんですよ。今の時代は他種多様な時代になってきました。一つの種族だけで固まっていては取り残されてしまいます。今やらなければできませんよ。」

「そうだな、これからドワーフ王国とエルフ王国に行かないとな。」

「そうですね両国に報告と説明をしに行かないといけませんね。」


アレク達はマルテナ王国からまずはエルフ王国へ向かう事になった。


エルフ王国についたアレク達は王に割譲の事やマルテナの貴族達の事を知らせる。

「ケースト王、久しいな。」

「ルドルフ殿お久しぶりです。アレク殿カイン殿もお久しぶりです。」

「ケートス王にはもう報告が大使より届いていると思うが一応説明に来たのだ。」

「はいマルテナ王国の割譲の事は連絡が来ています。」

「話が早くて助かる。これからは領地も人口も増えていく。エルフだけではなく人間も国民となるのだ。オリオン王国連合としてしっかりと政治を行ってくれ。」

「はい分かっております。これからは大陸の西に向けて進軍する事を念頭にいれ国力を上げていきます。」

「ケートス王、今、何か不吉な事を言わなかったか、西へ向けて進軍と聞こえたが聞き間違いかな。」

「えっ西へ向けてオリオン王国は戦をするのではないのですか。」

「誰がそんなことを言っているのだ。」

「先日ドワーフの大使が言っておりました。マルテナ王国を降伏させたのちには、それを足掛かりに西へ向けて領土を広げると言っておりました。」

ルドルフは頭を抱えたくなった。ドワーフの自分勝手な解釈で大事になりそうな予感がしたのである。それに事を大事にする天才二人がこの場所にいるのである。

アレクは黙って聞いているが、カインは何やら嬉しそうににやけている。


ルドルフはドワーフ王国に行くことが恐ろしくなっていた。ぼそっと「病気になろうかな。」



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