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295話

マルテナ王国王都


アレクとカインは店の中に入り、食事と酒を飲んでいた。その店は庶民の食堂のような店である。店はテーブル席が10席にカウンターがあるごく一般的な店だ。店員は二人の女の子がおり、カウンターには女将さんなのだろう、厨房にはご主人と思われる人が料理を作っている。お客はアレク達を入れても4組にしかいない。その4組は酒を飲みアレクとカイン以外はかなり酔っている。


アレクとカインはワインと食事を冗談を言いながら楽しんでいた。そこに寄ったお客がアレクに絡んでいく。

「おう、いいとこのぼっにゃんか俺様におごれよ。」

「もう坊ちゃんって年でもないんだがな。」

アレクとカインは年の割には若く見える。スキルのせいもありかなり30歳をこえても20ぐらい見えるようだ。

「えーー、何だ若造俺様はなこの王都で一番の冒険者だぞ、貴族にも顔が利くんだぞ。」

「一番の冒険者が若造におごれなどと言ってはまずいでしょう。逆におごる位でないと一番の冒険者とは言えないですね。」

「ああーーーーーーっ、」

突然その男はアレクに殴りかかった。アレクは冒険者を座ったまま避ける。男は空振りした勢いで転んでしまった。転んだ勢いで他のテーブルに頭をぶつけ血を流している。一緒に飲んでいた仲間が集まって来た。


「どうしたレビンソン。」

「大丈夫かレビンソン。」


仲間の二人はアレクとカインに剣を抜き構えている。アレクとカインは関心がないのか知らん振りをして飲み続けている。

「お前たちうちのレビンソンに怪我さておいて、そのままで済むか、あーーー。」

「殺すぞーー。おらーー。」

仲間であろう二人は剣でアレクに切りかかった。アレクが一睨みすると剣を振り上げたまま固まってしまった。恐怖で動けなくなってしまっている。


異常な光景であった。テーブルに頭を打ち付けて血だらけの男、剣を構えて固まっている二人の男、その近くで何事も無かったように喋っている二人の男アレクとカインである。カインはそんな男たちはいない者と思っているように、店員にワインのお代わりを頼んでいる。

店員は引きつった顔をしているがワインをカインに持っていく。

「お客様、早くお帰りになった方がいいですよ。この人たちは冒険者でお仲間が沢山いますよ。」

「気にすんな、こいつらオブジェみたく動いていないだろう。こいつら動きたくとも動けないんだよ。」

「えっ、そうなんですか。私はまた脅していると思ってました。」

「ああ、だから小声だったんだな。アハハハ。」

アレクとカインはそんな事等気にせずに食べて飲んでいた。そこにぞろぞろと冒険者らしき者達が店に入ってくる。固まっている冒険者たちの仲間のようだ。他の客が仲間を呼び集めたのである。人間、獣人、エルフと色々な種族がいる。

その中の獣人の一人が「ああーーーーー、カ、カイン様。」

獣人の冒険者を他の冒険者が一斉に見る。「カ、カカカイン様、どどどどうしてこここんなところに居るんですか。」

「何だ俺のことを知っているのか。」

「カ、カイン様を知らないやつは獣人ではありませんよ。」

「それならここで固まっているやつを連れていけ、鬱陶しいからな。」

「もしかしてカイン様たちにこいつら絡んだんですか。」

「おうこいつら酒おごれとかアレクに言っていたな、それでアレクが睨んで動け無くなったんだよ。こいつら弱すぎだろうアハハハハ。」

「ば馬鹿な奴ですよく言っておきます。すいませんです。」

獣人の男は他の冒険者たちに説明をしている。粋がっている冒険者もいるが他の冒険者が止めている。カインの強さを分かっている者がいるために大事にはならなくて済みそうである。


「お前らおごってやるから好きなのもを頼め。」

「えっ、カイン様いいんですか。こいつら物凄く食べるし飲みますよ。」

カインは店員を呼び金貨の入っている袋を出し店員に渡す。これでこいつ等に好きなだけ飲ませるように伝える。店員はその袋を見てびっくりして女将さんの所に駆けていく。女将さんがカインの所まで来てお礼を言っている。「その金貨分飲ませてやれ。」

それからはその店に人が集まるは集まるは物凄い人数になっていった。店の中には入り切らずに隣の店も臨時に借りての大宴会となっていた。


「カイン様ーー、聞かせてください。大森林の中で建国したんですよねーー。」

「カイン様、獣人の神様なんですよーー。」

「カイン様は英雄なんです。偉い方なんですよーーー。」

カインをべた褒めする獣人達、カインも酔っているのか気分よく相手にしている。

アレクは一人カウンターに移り女将さんと話をしている。

「女将さん、悪かったね騒ぎになっちゃって。」

「何言っているんですか、こちらは大助かりですよ。こんなに金貨を貰っているんですから。一晩中飲んだって使いきれませんよ。」

「いや足りなくなるよ。ただ酒が飲めるというような話は伝わるのが早いからね、下手したら王都中の人たちが寄ってくるよ。特に冒険者はまだまだ来ると思うよ。」

アレクは予告のような事を女将さんに伝えると、自分の持っているマジックバックから酒と食料をカウンターに置いていく。それと金貨の詰まった袋を二つカウンターに置く。びっりしている女将さん。

「お客様、これは何でしょうか。」

「酒と食料と金貨だな。」

「それは分かっています。何でここに出しているんですか。」

「それはこれから夕方になるだろう。もうすぐ冒険者や職人なんかが押し寄せて来るぞ。手伝いとかを探しておけ。」

女将さんはアレクの言うことを信じて近くの店や人たちに金貨を配り状況を説明して応援を頼んだ。近くの店もタダで飲み食い出来るようにしたのである。それはこの町全体に広がっていった。この王都の飲み屋街は今日は飲み食いがタダになると冒険者を中心に広がっていた。人の話は伝わるのが早い、夕方には人で溢れかえっていた。もうお祭りであった。店を中心に通りにはイスとテーブルが置かれ、色々な店から料理と酒が置かれている。もう誰が頼んだのかが分からなくなっている。


王都の見回りの騎士や兵士までが飲み食いをしている。店の女将さんがこの事態を騎士や兵士に説明をして了解を取ったようだ。この女将さんかなりやりてのようだ。

この日はこの飲み屋街一日の売り上げが飲み屋街の数か月分であった。

マルテナ王国王都はこのところ不景気であった。オリオン王国連合やグラムット帝国の経済活動の影響で人がいなくなり仕事が減っているのである。そこに一時でも景気の良い人がただの飲み食いの為に大量に金を使ったのだ。さらに酒も食料も提供までしている。ほぼ人件費だけのようなものである。


「カイン兄、やっぱりいいねどんちゃん騒ぎは楽しいね。」

「そうだな、アレクも最近はやっていなかったもんな。」

「そうですね、自治領では今では年一回はやっていますが私はいかないですからね。」

「まぁ今日は朝まで騒ごう。」


「お前らーー飲むぞーーー。」


「おおーーーーカイン様ーーーーー。」



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