294話
「それで父上、マルテナ王国とは戦争しますか。」
「マルテナ王国に大義を与えずに出来るならやる。出来ないのなら静観だな。」
「オリオン王国とグラムット帝国が関与しなければどうでしょうか。あくまでドワーフとエルフが対応するのはどうですか。」
「ルドルフそれは少し無理があるんじゃないか、ドワーフもエルフもオリオン王国連合の国だからな。」
「そうですね、出来れば戦争はしたく無いですね、オリオン王国は今大事な時期ですから国の基盤を強化しなければいけません。」
「ルドルフ、いざ戦争になったらうちには戦争担当がいるではないか。」
みんながアレクとカインの方を見ている。カインは照れたようなしぐさをしているがVサインをしている。アレクはなぜ私まで戦争担当なのって顔をしている。
「そうですね、戦好きがいましたね。」
「ルドルフ兄、カイン兄と違って私はいつも仕方なく戦争をしているんです、そこをお忘れなく。」
「分かった分かった。アレクは仕方なく戦争をしているんだよな。」
「なんかいやな感じですね。」
「お前らいい加減にしろ話が進まんではないか。」
「すいません。」
「マルテナ王国には大義を与える事はしない。ドワーフもエルフも仕掛ける事はさせない。マルテナ王国に仕掛けさせるかマルテナ王国に諦めさせるのどちらかだ。」
「父上、マルテナ王国は西を纏めるだけが目的でしょうか。」
「分からん。西を纏める事も目的だが、それ以外にもあるかもしれん。」
「ならオリオン王国から一度使節団でも派遣してみましょう。マルテナ王国の真意が分かるかもしれません。」
「使節団かダメもとで出してみるか。このままでは解決策もないしな。」
「そうですよ、喧嘩っ早いカイン兄と人の話を聞くルドルフ兄で行けば物事が動くかもしれませんよ。」
「アレク。俺は喧嘩っ早くないぞ。」
「カイン兄は考えるより手の方が早いじゃないですか。それを喧嘩っ早いっていうんですよ。」
「アレクならお前もそうじゃないか、すぐ魔法で敵をぶっ飛ばすもんな。」
「カイン兄ほどではありませんよ。」
「なにぃ、アレク勝負しようじゃないか。」
「いいですよ、泣きの一回も無しですよ。」
「俺がいつ泣きの一回をお願いしたんだ。そんなことしてないぞ。」
「いい加減にしろーーー。ルドルフ、カイン、アレクの3人で言ってこいいいな。」
「「「はい分かりました。」」」
ガレオン号艦内
「なんか久しぶりだな。カインとアレクと一緒なんて。」
「そうですねルドルフ兄はいつもオリオン王国内にいますからね。」
「アレクとカインはいいよな自由で、俺なんか数分刻みのスケジュールなんだぞ、こんなにのんびりした事なんて何年ぶりだろうな。」
「マジですかルドルフ兄、そんなに仕事して楽しいですか。」
「アレク、楽しいわけないだろう。お前たちのおかげでいつも仕事に追われているんだぞ、責任を感じてくれよ。もうこれ以上国を広げないでくれ。」
「ルドルフ兄、それはアレクに言った方がいいぞ、俺はいつもアレクに頼まれて戦争しているだけだからな。」
「何言っているんですかカイン兄、カイン兄は戦争している所に追いかけてくじゃないですか。」
「何言ってんだアレク、俺はいつも仕方なく行っているんだぞ。」
「へーーー、じゃ今度は黙ってやりますよ、いいんですか。」
「アレクごめん、俺を呼んでくれ。獣人達がうるさいんだよ戦わせろって俺も困っているんだ。」
「まぁあの脳筋たちでは仕方ないですよ。」
「本当にお前たちはいいコンビだな。羨ましいよ。」
「ルドルフ兄だってレオン兄と仲いいじゃないですか。」
「いや仲はいいんだが俺は長男だって意識があってな。レオンもそんな俺を立ててくれているんだ。レオンは良い奴だし優秀なんだけど俺の方がなんか引け目を感じていてな。」
「ルドルフ兄、俺たち兄弟はルドルフ兄の事をみんな尊敬しているよ。だってオリオン王国を実質纏めているのはルドルフ兄だもん。俺たちはオリオン王国があって初めて動けるんだ。ルドルフ兄がいるから俺たち兄弟は繋がっていられるんだ。」
「アレクの言う通りだぞルドルフ兄、俺とアレクとレオン兄だけだったら喧嘩になって口もきかなくなっているぞ。」
「そうだねそう思うよ。レオン兄に聞いても同じ答えが来ると思うよ。今度聞いてみれば。」
ルドルフ、カイン、アレクの3人はマルテナ王国へ向かうガレオン号の中で兄弟の語らいの時間を過ごした。ルドルフにとってとてもいい時間であった。カイン、アレクという派手な弟がいるために影に隠れた存在となっているルドルフであるがかなり優秀なオールラウンダーである。カインは戦いに特化している為に政治や内政などにはかなり疎い。アレクは戦闘も政治もそつなくこなすが飽きっぽくすぐに逃げ出す。
ルドルフは何事にも前向きで忍耐力がある。戦闘も政治も土木工事もすべてこなす。そんなルドルフを兄弟姉妹のみんなはかなり頼りにしているのだ。
アレクとカインがルドルフに対して言葉で言ったのは初めてであった。ルドルフは一人になった時に少し感動していた。だがこれからルドルフはアレクとカインの行動に巻き込まれ一人苦労する事になるのである。
そうこうしているうちにマルテナ王国に到着したオリオン使節団はマルテナ王国王都の城に案内された。
マルテナ王国の国王に会う前にマルテナ王国の宰相やら大臣など色々な者達が使節団との対話を願い出てきていた。
マルテナ王国としてはオリオン使節団と王が謁見するときには何かしらの有利な事を条件に付けたい考えがあるようだ。王との謁見は最後にしてその前にすべて決めておきたい思惑が見え隠れしている。
そこは直感のカイン、強引なアレクでは相手が出来なかった。ルドルフが政治の駆け引きをしてうまくかわしていた。アレクとカインは対応をすべてルドルフに任せて自分たちはマルテナ王都の見物に出ていた。
オリオン王国連合の国々では顔を知られ自由に動けなくなっていたアレクは解放感ではしゃいでいた。カインも同じようなもので二人でお土産などを物色していた。
「アレクたまにはこんなのもいいな。」
「そうですね知らない国で過ごすのもいいかもしれませんね。オリオン王国では顔が知られすぎて行く先々で挨拶やらいろいろと面倒ですからね。」
「そうだよなー、本当に疲れるよなー。」
「おっあの店に入ろうぜ。少し飲もうか。」
「いいですね昼間に酒もたまにはいいでしょう。」
二人は酒の飲める食事処に入る事にした。丁度昼を過ぎて他の客が少なくなっている為にゆっくり出来そうである。