289話
イード王国が滅び、国の立て直しをしなくてはならない。今回のイード王と貴族の無能が表面化した事で爵位剥奪や代替わりなどをさせ能力のない貴族達を排除していた。そうなるといつもの事だが貴族が足りなくなる。
そして王になる者がいない。マクシス王国はカインに振る事が出来た。イスパス王国は王女がいた。
だがイード王国は王族をすべて処刑している。イード王国の貴族の中にも目立つ人材はいない。
ノースオリオン王国に併合しようとレオンに打診もしたが今はハルノール併合とジョアンナ王国、カイン王国の支援で手がまわらないと断られてしまった。それにノースオリオン王国には飛び地となるために余計に要らないようだ。
悩んだ末にアレクはリックを呼んだ。
「師匠ーー、お久しぶりです。艦隊も大きくなって全然会えませんでしたねー。」
「そうだなリックも今じゃオリオン王国連合全艦隊の司令官だからな。」
「艦隊もアース大陸、タンドラ大陸にエデンともう大変ですよ。守る場所が大きくなりすぎて分割しないといけませんね。」
「そうだよな、他の事で忙しくてオリオン王国連合の事はリックにまかせっきりだったしな。」
「そうですよ、師匠空軍に戻ってきてくださいよ。」
「リック私は今でも空軍の最高司令官だぞ。仕事はしてないがな。」
「・・・・・・・仕事しましょうよ。」
「あっ、そうだリックには新しい仕事があるんだ。」
「イード周辺の防衛ですか。ここはまだ周りの国との争いが多いですからね、1艦隊駐留させましょう。」
「いや、リックお前この国の王をやれ。以上。」
「そうですか王ですか。い・や・で・す。」
「いやって、リックこれはせSEオリオン王国の人事異動だ。拒否は出来んぞ。」
「えーー、だって俺はユリを見ていてあれだけはやりたくないと思っているんです。」
「心配するなリック、私の初めての直臣にそんな苦労をさせるわけがないだろう。」
「し、師匠、何か物凄く嫌な感じがするんだけど。」
「リック、気のせいだ。」
「リックはSEオリオン王国の公爵だ、だから公国だな。んーーーいい響きだなーー。」
「・・・・・・」
「リックこう考えてくれ、ただの領地替えだ。SEオリオン王国とは離れている。だからSEオリオン王国の一員と分かるように公国にするんだ。私はリックを手放さない、何しろ直臣だからな。」
「師匠、何か無理があるぞ。それに俺は政治なんてできない。今でさえ領地は任せっきりで行った事も無いんだから。」
「心配するな、リックの国にはパウルを宰相として付けるからみんな任せてしまえ。それにこれからこの地域は争いが多くなる。リックが必要になってくるんだ。」
「やっぱり戦争はまだまだ続きますか。」
「そうだなオリオン王国はアース大陸を統一する。それまで戦争は無くならないな。リックはこの国の防衛と隣のジョアンナ王国を守ってくれ。カイン兄とレオン兄はどうにでもなるからな。隣のジョアンナ王国は軍事力もない、今は何もないからな。」
「まぁ政治をしないでいいなら今と変わりないからいいかな。」
「政治なんかパウルがやってくれる。リックだって空軍で書類のサインをしていただけだろう。」
「うっ、…そんなことないよ。訓練とか、訓練とかしてたし。」
「リックもここで艦隊運営していれば大丈夫だから、あとは書類にサインだけで大丈夫だ。」
「師匠、疑うわけじゃないんだけど、SEオリオン王国の領地としてではダメですか。」
「リック私もそうは思うんだが、こんな大きな領地だと公国として国の体制でないと近隣国に対等に付き合えないんだ。領主では舐められてしまうな。」
「だから公爵の国なんだ。」
「そうリックはSEオリオン王国の公爵で私の初めての家臣だからな。」
「ここならタンドラ大陸にも南部より近いですね。」
「ああ南部よりここからの方がTオリオン王国には近いだろうな。」
「よしマックにも会いに行けるな。」
アレクに騙されて、いいやのせられてリックは公国の王となる事を承諾した。リックはあとで物凄く後悔する。何しろ今のイード王国には貴族がいない、人材もいないのである。
「リック、私はカイン兄とレオン兄の所に行かないといけないから、あとは頼むよ。すぐにパウルを呼ぶからね。機人と木人も輸送するから心配はないよ。」
アレクはなぜかすぐにいなくなってしまった。残されたリックはとりあえず元イードの官僚たちを集めてイードの現状を説明させようとしていた。
「リック王、初めましてアレクス王よりリック王にすべて任せたと聞いております。これからよろしくお願いします。」
「そ、そうか頼むぞ。し、アレクス王からは他に伝言はあるのか。」
「はい、アレクス王がここを離れるときにアレクス王とカイン王がリック王にごめんと伝えるように言っておりました。」
リックは顔が真っ青になる。
リックはその官僚からイード王国の内情などを聞き出す。イードは貴族が激減している為に各地の統治が出来ない状態であり、早急に貴族を各地に派遣する必要がある。貴族同士が争っていたために隣地の貴族同士が不仲になっているのだ。その調整を取らない事には前に進むことが出来ないのであった。
リックはアレクの性格を知っていた。妙に持ち上げるときは何かあるのだ。リックはアレクと会う事が久しぶりで忘れていた。
「し、師匠ーーーーーーの馬鹿やろーーーー。」
リックの叫びはむなしく響いていた。
それからのリックとパウルは大変であった。すべての生き残りの貴族を王都へ呼び寄せ調整を行った。説得などではなく武力をちらつかせた脅迫であった。そうでもしないと話にもならなかったのである。
アレクのイード王国への謀略で貴族同士が争いを初め王族はすべて処刑されている。そして多くの貴族が亡くなっている。国としてボロボロである。
パウルもアレクに騙された一人である、アレクより辞令が出され元イード王国で侯爵としてリック王の補佐として勤めるようにとなっていたが、着いてみればリックは途方に暮れていた。
だがリックの為にアレクが何もしなかったわけではない。機人と木人を大量に送り、他国に侵略が出来るほどに送っている。物資と資金もイードの国家予算の数倍も送っているのだ。
それがまた混乱を起こしていた。元イード王国、仮リック公国は物資の仕分けさえできない程に人材不足であった。
リックは自分の伝手とパウルの伝手を使い人材確保に奔走していた。とりあえずはリック艦隊の人員がリック公国の各地に配置された。艦隊の人間が慣れない国の運営に着いたのである。
リックはユリに連絡を入れて応援を呼んだ。ユリはマックと大勢の人材を連れてリックの公国運営を支える事になった。