254話
タンドラ大陸の中でアレクは改めて反コルンの国を調査した。中立に近い国はあったが全てが反コルン王国となっていた。Tオリオン王国とコルン王国とで支配している地域は大陸全体の4割である。もちろんゼスト王国等の国も含んだ地域である。
タンドラ大陸の国力としては圧倒的にTオリオン王国とコルン王国が上である。総合の戦力としても上であるが、国を平定してまだ日が浅い。民の掌握がまだ出来ていないのが現状だ。こればかりは月日をかけていかなければどうする事も出来ない。
Tオリオン王国の新領地、元ビルキア王国と元サレント王国の2か国民の掌握には多少の時が必要であった。
だがアレクは月日をかけるつもりは無かった。銀行、商会、SEオリオン王国から資金を出させて一気に開発に乗り出したのだ。民の暮らしが豹変した町、村までに魔道具があふれ暮らしが楽になった。農地開発、区画整理等の開発を進め、目に見える形のものを優先的に行っていった。
今まで仕事の無かった者や、貧困者に仕事がいきわたり一気に好景気になっていった。
コルン王国はそこまでの勢いでの開発では無かったがコルン王国もSE銀行とリア銀の資金が豊富に流れている為に開発は進んでいる。
アレクはコルン王国とTオリオン王国内の商人たちに資金援助を行った。資金を得た商人、商会は交易に出る者、タンドラ大陸内で販路を広げる者と色々であったが、商人たちがTオリオン王国とコルン王国の高景気を大陸中に宣伝をしていった。
元々このタンドラ大陸は人口が他の大陸に比べて多い。そのため仕事に就けない者が多くTオリオン王国とコルン王国へ仕事を求めて移住者が押し寄せていた。アレクの狙いの一つであった。その中で優秀な者達は召し抱え、そうでない者には労働の仕事を与えていた。
農地開発は早急な課題となっていたが、農地改良で同じ広さの農地であってもTオリオン王国とコルン王国、以外では作物の収穫量が全く違っていた。Tオリオン王国とコルン王国の収穫量は他の1.5倍になっていたのである。
これを見た農家の者達は人口が増えたせいもあり収入が増えたのであった。
そのため新しい農地は移住者へ与えることが出来た。
他国はこの事実に驚愕していた。どうの様にすればそんな収穫量を上げられるのか。密偵がTオリオン王国とコルン王国の2か国に多く入り込んだ。アレクはこの密偵には好きなように調べさせた。
調べても真似ができないからと諸外国に知らせるためである。そして一つの噂が各国に出回っていた。
Tオリオン王国とコルン王国側に加われば恩恵が受けられる。
その宣伝に使われたのがゼスト王国であった。
ゼスト王国の新領土、元イースト王国では農作物の収穫量が軒並み上昇していた。これにはイーストの商人たちも驚いたようだ。
タンドラ大陸では各国が揺れていた。反コルンの旗頭となってまとめていたアルカデア王国とスマイク王国の2か国は反コルン同盟国の引き留めに四苦八苦していた。何かの支援や恩恵を約束しないと引き留めも出来ないような状態にまでなっていたのである。
これでは総攻撃どころか自国が攻められそうな勢いになっていた。
アレクはこの2か国を亡ぼせばタンドラ大陸の統一の目処が立つと思っている。
そのために反コルン同盟を瓦解させたかったのだ。反コルン同盟の国々もTオリオン王国とコルン王国の経済力の恩恵を受けたいがすぐには受けられないでいた。Tオリオン王国とコルン王国への貢献をしなければいけないからだ。反コルンの国々は同盟の契約があるためにTオリオン王国とコルン王国との戦争を継続となっていたが事実上の中立となっていた。いまTオリオン王国とコルン王国へ攻め入れば自国が滅ぼされると思っている。1国だけでは太刀打ちできない事を理解している。
反コルン12か国が一斉にたち向かわなければ勝利など不可能だと理解しているからだ。
もう反コルン同盟に勝ち目は無くなっていた。
アレクはゼスト王国、トミス王国と元レジット王国の者達に、アルカデア王国に侵攻させた。もちろんTオリオン王国とコルン王国も一緒に兵を出している。Tオリオン王国の総大将はマックでありアレクは参戦していない。コルン王も家臣に任せ参戦していなかった。
家臣たちに手柄を立てさせるために参戦を控えたのだ。
そのために戦争が少し長引いた。不慣れな連合軍となり調整が必要であり、練度不足で兵が付いてこれなかったのだ。
この戦争でトミス王国ゼスト王国、元レジット王国の王族たちは必死であった。特に国がない元レジット王は死に物狂いに働いていた。Tオリオン王国側が勝つのは分かっている。勝ち方が問題であった。レジットが貢献していなければ国としての再興が出来ないからであった。
元レジット王国の貴族達は領地は減らされたが貴族として残る事が出来た。だが王族たちの立場が決まっていないのだ。レジット王は元レジット貴族達に兵を集めさせ必死であったが貴族達は落ち着いたものであった。
それも仕方のない事である。レジット王は一人空回りしていた。その焦りが大きな失敗へと変わった。レジット軍が戦闘で敗北したのである。レジット軍15000は敵軍15000と対峙していたが、じりじりと攻められ後退していった。
他の軍が勝っていたから最終的には勝利したがレジット軍が敗れたことで被害が大きくなった。
レジット軍は数を9000まで減らしていたが、戦線を離れることはしなかった。レジット王が引き上げを拒否したのだ。だがもう最前線に出ることは無かった。弱い兵を前線には出せないからだ。
それを喜んだのはトミス軍であった。トミス軍は前回大敗をしている。今回敗れれば国の崩壊もありうると思わせるほどの危機感を持っていた。相手がアレクス王である、トミス王国など一言でなくなってしまうのだ。レジット軍が大敗したことによりトミス軍に余裕ができた。トミス軍はその余裕が良かったようだ。敵軍に焦って突撃する事もなく、きちんと攻撃を受け止め各個撃破を行った。大いに戦果を上げたのであった。
一度良い方に転がると良くなっていく。連戦連勝を重ねていき、トミス軍は前回の汚名を返上できたのである。
アルカデア王国はゼスト王国とトミス王国が大きく貢献したことで決着がついた。アルカデア王国は滅亡したのである。アルカデア王国が戦争をしている間、隣国であり反コルン王国のスマイク王国は援軍も出さずに沈黙を続けていた。次はスマイク王国が攻略対象と分かっているはずであるが沈黙していたのである。