248話
ゼスト軍へ向かう2万の兵に艦から一人の男が飛び降りていた。
アレクである。
アレクはサレント軍2万に広域魔法を放つ。炎と竜巻の複合魔法である。その威力は人間を巻き上げ竜巻の通った後には何も無いのである。綺麗なこげ茶の大地だけがある状態だ。炎の竜巻は敵2万の中を荒らしまわった。ただ荒らし回っただけではない。敵軍を中央に固めるように竜巻は動きまわっていたのだ。
炎の竜巻が消えると。敵軍は中央にかたまった状態になっていた。そこにアレクはサンダーレインの雨を降らせたのだ。
残っていたサレント軍はサンダーレインによって全滅をした。
後はゼスト軍を囲んでいるサレント軍2万だけである。
アレクはゼスト軍を囲んでいるセレンと軍へ向かって歩き出していた。
サレント軍はゼスト軍を包囲していた囲いを解いてアレク側にいや兵6000がアレクへ向かってきた。
向かってくる兵たちは必死な顔をしている、先ほどのアレクの魔法を目撃しているため、恐怖が顔に出てしまっている。これではまともな戦にもならない、普通に戦っても負けてしまうほど実力差があるのに恐怖に陥っている兵ではどうにもならない。向かって兵たちはアレク方へ向かって走っていたがアレクを目指して走っていなかった。段々とアレクから離れるように走っていた。
アレクは遠ざかっていく敵兵に泥沼を発生させ兵たちの動きを止めた。動けない兵たちは後回しにするようだ。包囲の崩れたサレント軍へ突入していく。アレクが突入していくとサレント軍はアレクに道を譲るように二手に分かれていった。もう戦闘は行われていなかった。二手に分かれて塊になった敵をサンダーレインで殺していく。簡単な作業になっていた。アレクはゼスト軍の中に入っていった。
「ゼスト王、よく耐えたな。」
「アレクス王、救援感謝いたします。」
ゼスト王国軍は疲弊はしていたが何とか耐えきった。戦死者は約3000である。残りの兵も無傷な者はおらず疲れ切っている。アレクが片手をあげると何処からか輸送船が飛んできた。そしてゼスト軍に傷等の手当てに当たったのだ。
2日の休養経て進軍する事となった。その間に瓦解していたトミス軍の生き残りたちがゼスト軍に合流していた。トミス軍は1500余りまで兵は減っていたが2日目の朝に兵1000を率いて合流してきた。トミス王はアレクに謝罪をしていた。自軍を率いていなかったことを謝罪していたのだ。アレクは別に気にすることはないと言っていたがトミス王に対しての評価は下がっていた。
アレクは両軍9500を率いてサレント王国王都へ向かうことになった。
途中の村や、町に立ち寄り支配下に置いていったが町や村の人々は素直に従っていた。アレクは町や村から食料などを高めに買っていたことが好印象を与えていたのかもしれない。
略奪なども一切なかったことも有り途中の町、村では大いに歓迎をされていた。
ミスト王とゼスト王は戦争の現場を見たことがなった。家臣からの話を聞くだけであった。街を占領したら暴行、略奪は当たり前、敵国の者はすべて奪うと教えられていた。戦争での家臣たちの自慢話にも暴行の事や略奪した品々を戦利品として見せられたことも有った。王太子であったゼスト王は根本から間違っていた事に気づき軍の改革を進めるように決意をしていた。
ところが現実を見てみるとこれから支配者となる領民に略奪、暴行をしてもなんの得にもならないことを初めて理解をしたようだ。
サレント王国の王都は国のほぼ中央に位置している。数日かけて王都まで来たアレク達は王都を包囲した。
包囲するには少ない兵だが二つある門にゼスト軍7000とトミス軍2500に別れて門の前に布陣していた。アレクはトミス軍2500を助けるためにトミス側にいる。
アレクはサレント王都へ向けて拡声器で伝える。
「サレント王国の民たちに伝える。私はTオリオン王国の王だ。サレント王国の民たちは家の中に入り出てこないように。これから我が軍はサレント城へ攻撃を開始する。死にたくなければ家から出るな。」
王都の門を守るサレント軍は逃げ腰だ。もう敵わないと思っている。アレクが門に向けてストーンウォールを門に投げつける、轟音と共に大きな門は無残に壊れてしまっていた。
アレク達は悠々と王都の中に入っていく。門を守っていた兵たちは逃げていく。
誰もいない街中をアレクは歩いて王城へ向かう。その後ろからトミス軍が付いてくる。
トミス軍はなぜか優越感に浸っているような表情をしている。自分たちが強くなったと思っているようだ。
アレクは王城に着いたが門が閉ざされている。堀の跳ね橋も挙げられている為に兵たちは中に侵入できない。アレクは一人でジャンプして城の中に入ってしまった。
残されたトミス軍はその場で待つこととなった。
アレクは城の中を歩いていた。時折、兵が襲ってきたが一瞬で倒されていった。城の行政を行っている場所だろう。文官たちが固まって怯えている。アレクは王族の居住位置を確認して再び城の中を歩きだす。
城の兵もあらかた逃げ出したのだろう、あまり人がいない状態になっている。
ようやく騎士たちが現われアレクに襲い掛かるが相手にもならなかった。一人の騎士に王族のいる場所まで案内をさせる。もちろん対価は払う、騎士の命だ。殺さないと約束をしていた。
10数分も歩いただろうか、一つの部屋の前に案内される。前には騎士たちが守りを固め入れないようにしている。アレクはそんな騎士たちを斬り捨てる。そして部屋の中に入るとそこは今にも自決をしそうな場面であった。
アレクはじっと待った。自決をしてもらえば面倒がなく手間が省けると思ったからだ。だが一向に自決をしない。しびれを切らしたアレクは「自決するなら早くしてくれ。」
「・・・・・・・」
「普通は敵の着く前に自決するぞ。早くしろよ、待ってやっているんだ。」
「・・・・・わしは王だぞ、使い道とかあるんだ、普通は止めないか。」
「王がいたら面倒だろ、死んでくれた方がいいな。」
「・・・・・・・」
「仕方がない、殺してやるよ。」
アレクは剣を抜いて王に近づくと、王は下がる、また近づくとまた下がる。
「サレント王よ自決は出来ない、殺されるのも嫌か、お前生きたいのか。」
「あ、当たり前ではないか。」
「お前が生きていても悲惨なものになるぞ、生きているより死んだ方がいいと思うがな。」
「・・・・・・・・・・・・」
「まぁ話を聞こうか、どうしてTオリオン王国の謀略を仕掛けたのだ。」
「・・・・・」
「答えぬのなら殺すだけだぞ。」
「アルカデア王国とスマイク王国が反コルン同盟を結成したのだ。これなら勝てるというから参加したのに騙された。」
「バカかお前は人に言われてそのまま信じるのか。」
「・・・・・」
アレクは城内の者たちを広間に集めた、ついでに外で待機していたゼスト軍とトミス軍を城内に入れた。