242話
元海賊たちは良く働いている。元が商人というのも嘘では無いようだ。農作業は苦手なようだがそれ以外はそつなくこなしていく。
レリウスは少し安心していた。もし自分の目が曇っていて本当に海賊として演技をしていたらと警戒していたのだ。ウルとルフに監視をさせているので大事にはならないだろうが女子供の多いこの場所は海賊にはいい場所なのだろう。レリウスははやくまともな村にしたいと焦っていた。
そんなレリウスにマリアーヌは話しかける。
「お兄様。一人で悩んでいないで。ファーレスお兄様に相談してみれば。私ではお兄様のお役には立てないかもしれませんが、ファーレスお兄様なら大丈夫ですよ。」
「マリアーヌ、俺は遣れるんだろうか。父上に国を興せと言われても自信がない。」
「父上はみんなで国を興せと言ったんですよ。お兄様一人でなんて言っていませんよ。」
「そ、そうだな。みんなでだったな。だけど俺は一番年上だからな。」
「お兄様。齢なんて関係ないですよ。レインは7歳ですよ。お兄様がオリオン家に来た時と同じ齢なんですよ。その時のお兄様は今のレインぐらい強かったのですか。」
「そうかレインと同じ年に俺はオリオン家に来たんだな。同い年の奴にも負けていたな。」
「父上が言っていたではありませんか、みんなで協力してやれと。」
「みんなで話し合いましょう。大丈夫ですよ。私たち兄弟姉妹は最強ですからね。みんなの齢を合わせれば父上なんかより倍以上も年上ですよ。」
「アハハハハハー。そうだったね。俺たちは最強の兄弟姉妹だったよ。」
何かレリウスは吹っ切れた思いがあった。
「ファーレス、相談がある。」
「兄ちゃんなに。」
「人を増やしたい、何か考えはあるか。」
「そうですよね、人が居ないと活気も出ませんしね。かと言ってこの前みたいなのはご免ですからね。」
「そうなんだよ、変な奴が増えても問題が出てくるだけだしな。」
「そういえばレインの連れてくる人たちはいい人ばかりだな。」
「そうなんですよ、不思議ですよねー。」
そんなレインは又拾い者、もとい人助けをしていた。
「ぎゃーーー。助けてくれーーーー。」
「パン、パン、パン,パン、パン。」「大丈夫ですかー。」
「ぎゃーーーーー。魔物だーーーーー。」
「違わないけど、ここですよーー。」レインはグリーの背中から顔を出して手を振っている。
「あ、あなたはこの魔物をティムしているんですか。」
「ティムって何。」
「あっ、魔物を従属させることです。」
「んーーー。似たような物かもね。友達だからね。」
「そ、そうですか、助けてくれてありがとう。」
「ん、いいのいいの。魔物狩りをしていたからついでだから。」
「わ、私たちはこの先の村に住んで居ます。何かあれば言ってください。あまり裕福ではありませんが寝るところぐらいはあります。」
「あーー、心配しないで僕はここから海に向かった方角に兄弟たちと住んでるから大丈夫だよ。」
「そうなんですか。も、もしかして塩とかありますか。」
「塩ならあるよ。取りにこれるかな、それなら売ってあげるよ。」
「本当ですか、ぜひ伺います。場所を教えてください。」
レインはこの人たちと村まで一緒に行くことにした。
「へーー、意外とうちと近いね。」
「そうなんですかここ最近魔物が減ってきたおかげで外に出れるようになって少し油断してしまいました。」
「魔物が減ってきたんだ。それはねー、家のシルバーウルフのおかげだよ。家のシルバーウルフがこの一帯を縄張りにしたから魔物が減ってきたんだよ。」
「えっ、そうなんですか。」
「呼んであげるね。ウルーーー。ルフーーーー。」
グリーが鳴く「キューーーーーゥ。」
少し時間が経つと。100頭以上のウルフの群れが現れた。その中から2頭の大きなシルバーウルフがレインのもとに寄ってくる。「クーゥン、クーゥン。」
「ウル、ルフ突然呼んでごめんね。ウルフたちに言っといてねここに村があるから一緒に守ってあげてね。」
「ウオン。ウオン。」
「その変わり今日の夕飯はオークのお肉をいっぱい上げるね。」
「オウーーっ。うおーん。」
「ありがとうまたね。」
シルバーウルフは二手に分かれて見回りに行ってしまった。
「す、凄いですね。魔物の言葉が分かるんですか。」
「わかんないよー、でも人間の言葉は理解しているよ。だから大丈夫なんだよ。」
「家の村へようこそ。どうぞこちらです。」
「うわー、結構、家があるんだね。」
「そうですか今では少なくなりました、魔物が多くなってからは大きな街へ引っ越していくものが多くなっています。」
「へーー。そうなんだ。」
「村長に説明してきますから待っていてください。」
男は急いで大きな家の中に入っていった。数十分ぐらい待つことになったが一人の女性がやってきた。
「私が村長をしています。ルカと申します。塩を売っていただけるというのは本当ですか。」
「うん、いいよ、交換できるものはありますか。」
「この村で交換できる物は野菜と麦ぐらいしかありません。よろしいでしょうか。」
「うん、大丈夫だと思うよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「じゃぁ取りあえずドラゴンに乗ってうちの港にいってみよう。」
「ええーーーーー。」
村長のルカはドラゴンの背中にしがみ付きレインと一緒に港に戻ってきた。
「レリウス兄ぃーーーー。塩を売ってほしいんだって。」
空から大声で叫んでいるレインにみんなが気付く、猫族3人はレインに手を振っている。
必死にしがみ付いているルカは周りを見る余裕などは無く。落ちない様に祈っている。
「レイン、この人はどこの人だい。」
「あ、すいません。私はこの近くのカルセ村の村長をしています、ルカと申します。よろしくお願いします。」
「ご丁寧にどうも、俺はレリウス。レインの兄です。」
「あの塩を売ってもらえると聞いたのですが本当ですか。」
「ああいいけどなんでだ。こんなに近くに海があるのに塩なんて欲しいんだ。」
「えっ、海ですよ。しょっぱいですけど塩にはなりませんよ。凄く不味いんです。」
「あーーー。知らないのか。」
「えっ、海の塩って美味しくなるんですか。」
「海の水を煮詰めて塩を作った事はあるようだな。」
「はい海がしょっぱいので煮た事はあります。というかそれしか塩を手に入れる方法がありませんので今でもやっています。」
「よくあんな苦い塩食べれるなー。」
「・・・・・・それしかありませんので。」
「わ、悪かった。ごめんな。」
「いいえ大丈夫です。」
「レイン塩持ってきてあげて、申し訳ないから一袋上げるよ。」
「えっ、麦で買います。物々交換しか出来ませんがちゃんと払います。」
「今でも海から塩を作っているといったよね。きちんとした塩のつくり方を教えるからやってみないか。利益は折半でどうだ。近くの村とかに売れるようになれば儲かるぞ。」
「塩のつくり方ですか。そんな事教えていいんですか。初対面ですよ。」
「ああいいんだよレインが連れてきた人だからね。」
「ええーーー、そんな理由ですか。ありえませんよーー。」
「レリウス兄ぃーーー、塩もってきたよーー。」
レリウスは塩造りの人手の確保に成功した。カルセ村が港の近くにある事でレリウス達との交流も生まれ少しだけにぎやかになりそうである。