241話
エデン
「これで引継ぎは完了だな。」
「リックさんあとはお願いします。」
「ああ、任せとけよ。ここは楽しい所のようだからな。ひっひっひっ。」
「リックその笑いはまずいぞ。奥さんに報告しとくよ。」
「ま、待ってください師匠、今のは無しです。真面目に仕事しますから。妻には何も言わないで下さい。」
「今回は大目に見るけど、絶対にダメだよ。私が殺されるからな。」
「はい。分かっています。」
「アレクス様。」
「どうしたテルセ。」
「レリウスたちが新大陸に行ってるんですか。」
「そうだ、レリウスたちに国をつくれと言って行かせたんだ。」
「本気で言ってるんですか。」
「あぁ、本気だ。あいつらなら創れるさ。」
「そうですか俺も一度行ってみたいですね。」
「テルセの行きたいところに行けばいいさ。だけど戻って来いよ。お前の帰る場所はここだからな。」
「エデン以外なら行きますよ。ここは嫌です。」
「ハハハハ、そうだな。違う場所を用意しとくよ。」
「そうだテルセ。このエデンで新種族がいたって本当か。」
「はい正確には新種族ではないですねエルフ族です。」
「何だそうか。」
「ですが普通のエルフではないですね。海エルフです。」
「海エルフってなんだ魚人ではないのか。」
「エルフですね。エルフの特徴を持っています。ほぼ海の中で生活していますので今まで分からなかったんですよ。まぁ正確にはエデンの洞窟の中ですがほぼ海に沈んでいます。」
「そうか色んな種族がいるな。そういえばドワーフもこのエデンにいたな。大丈夫か。」
「エデンのドワーフはきちんとしていますよ。アースのドワーフとは大違いですね。」
「そうなのかやっぱりアース大陸のドワーフは少しおかしいんだろうな。」
「ハハ、そうですね。ここのドワーフは違いますよ。何しろ真面目ですね、それに作る武器は一級品ですね。飛ぶように売れています。」
「このエデンでは人間が少数派だからな。珍しい場所は確かだな。」
「そうですね、他は人間であふれているのにエデンだけは殆んど人間がいません。人間はSEオリオン王国か商船の船乗りだけですからね。」
「住人は殆んどいないな。」
「そうですね商会の人間が持ち回りで住んでいるぐらいです。」
「まぁリックも大変だろうが頑張ってくれよ。」
「師匠も仕事してくださいね。」
「分かっているよ。じゃぁまたな。」
アレクはオリオン王国新王都へ向かう。
その頃、フロンティア大陸では
「レリウス様。」
「マシューどうした。」
「しょ、商船が来ました。どうしましょう。」
「商船だと。ありえんな。」
「えっ、どうしてですか。商船みたいな船ですよ。」
「まぁいい、行ってみよう。」
天然の港となっているこの入り江に1艘の大きな船が停泊していた。見た目は商船であるが如何も怪しい雰囲気が漂っている。レリウスはファーレスとオスカーを呼び3人で船から上陸している人の元へ行く。
「あなた達が商船の方たちですか。」
「ああそうだ俺たちは商船の船乗りだ。水と食料を頼む。」
「対価は何で払ってもらえますか。金ですか物ですか。」
「対価はお前たちの命でどうだ。これ以上の物はないだろう、これからも俺たちの為に色々と頑張れよ、ここは人も少ないようだし、俺たちのアジトにぴったりだな。ハハハハハ。」
「「「「「そうだ、そうだ。そうだな、アハハハハーー。」」」」
「あなた達は馬鹿ですね。ファーレス、オスカー二人で船を制圧してきてくれ。」
「了解。」
「うん分かったー。」
目の前にいる商船の乗組員たちは子供の話に舐め切っている。何を制圧だー。無理に決まっていると馬鹿にして相手にしていなかった。もう自分たちのアジトの様に無視をしているのだ。まぁ普通はそうだろう。レリウスでも13歳、ファーレス12歳、オスカーは10歳である。レインに至っては8歳である。子供の使いにしか見えないのだろう。
レリウスはその者達を殴り倒し拘束したのだ。
「レインこいつらを見張っていてくれ。ウルとルフに見張らせればいいだろう。」
「うん。」
ファーレスとオスカーは商船の甲板に降り立った。海賊のようなもの達が一斉に襲い掛かってきたが相手にさえならなかった。ファーレスとオスカーは普通に歩いて敵の剣を交わし相手を斬っていく。海賊約100人は殆んど切り殺されていた。
船長のような人が出てきたがオスカーの一撃で吹っ飛んでいた。
ファーレスとオスカーは船内を捜索していった。そうすると檻があり、その中に囚われている者達が30人ぐらいいた。
「すいません。あなた達はどうして檻に入っているのですか。」
「・・・・・・」
檻の中の囚われている者達は船に子供が要る事自体、海賊の子供と判断していた。下手に答えれば殺されると思い黙っているのだ。
「言葉が喋れないのですか、仕方ありませんね。今からこの鍵を壊しますので、少し下がってね。」
バキッ。「甲板で待っていますから上に来てくださいね。」
囚われている者達は戸惑っていた。いつ殺されるかと思っていたのだ。すでに数人は殺されている。囚われ人たちはどうなっても同じと考え甲板に上がっていく。そこで見た光景は海賊どもの死骸である。
二人の子供がその周りで話している。死体を何とも思っていない、いないものとでも思っているのか普通におしゃべりをしているのだ。
「あっ、やっと来たね。喋れる人はいるのかな。」
「は、はい。みんな喋れます、先ほどは驚き過ぎて声が出ませんでした。申し訳ありません。」
「いいよいいよ、気にしてないから。それよりあなた達はどうして捕まっていたの。」
この囚われた人たちは元は商船を率いて商売をしている者達であった。それがこの船の救援要請に騙されて船ごと取られてしまったという。
「で貴方達の船はどこにあるんですか。」
「知りません。」
「まぁいいでしょう。ブロこの船を引っ張って船着き場に着けて。」
するとドラゴンが商船を先端を掴み引っ張り出した。船は陸に上がれるところまで引っ張られ、囚われ人達は陸に上陸したのだ。
「ファーレスその者達はどうした。」
「兄ちゃん。牢屋に入っていたから出して連れて来たんだ。まだ味方かは分かんないな。」
囚われ人は驚いた。自分たちを味方と思っていない。
レリウスが囚われ人に質問をする。
「あなた達は誰ですか。」
「・・・・・私たちは奴隷にされ売られる予定です。」
「いつ頃捕まったのですか。」
「・・・・・・・」
その中の一人がレリウスにひざまずき誤った。
「も、申し訳ございません。商会も奴隷も嘘です。仲間割れをして牢に押し込められていただけです。どうかお助け下さい。」
「んーーあなた見たことがありますね。」
「兄ちゃんほらこの大陸に来た時に港で喧嘩した奴だよ。」
「あぁーーあの弱い海賊たちだ。」
「・・・・・・・・」
「海賊なら殺すしかないね。」
「お助け下さい。お願いします。」
「まぁ理由を聞いてからにしましょうか。どうして仲間割れしたのですか。」
「俺たちは海賊と言っても元は商人だったんです。殺されるよりはいいかと従っていたのですが、人が多くなり弱い我々は奴隷のように扱いがかわり。牢に閉じ込められ、そして本当に奴隷として売られるところでした。」
「どうししようかな。」
レリウスは先ほど捕らえた者の所に行った。
転がっている者にレリウスは質問をする。
「お前たちの船の中に牢屋があるな。その中にいた者が自分たちが本物の海賊でお前たちは不意を突いて偶然に囚われて負けてしまったと言っているがどうなんだ。」
「へん。何だとあんなごみの虫野郎なんかに負けるかよ。元商人で計算が出来るとか、そんなもん必要ないんだよ。あんなくずどもは奴隷にして売るんだよ。何が海賊だよ。人も殺せないような奴ら海賊でも何でも無い。」
「お前たちは本当の馬鹿だな。」
レリウスはその者達の首を落とした。
レリウスは元海賊か元商人かは判断できないが、一時保留とした。いま人手が欲しい時であり30人もの人手がいるのはありがたい事である。監視付きで仕事をさせて様子を見る事にしたのだ。
30人の男たちは泣いて喜んでいた。
「一生懸命に頑張ります。」
「もし裏切るようなら殺すからね。疑われるようなことはしない事だね。」
「「「「はい。絶対しません。」」」」