232話
迷宮都市アルテミス
「お待ちしておりました。アレクス様。」
「ヘルモンド殿か。他の領主たちはどうしたのだ。」
「はい、少し時間をずらして伝えてあります。」
「何か相談でもあるのか。」
「はい、アレクス様にお願いがございます。迷宮都市の事を教えてもらえませんか。この国の領主でありながら何も知りません。私はこの迷宮で生まれ生きてきました。外の事も何も知りません。グラムット帝国の宰相も何もしゃべりませんでしたから。」
「グラムット帝国とはいつからの付き合いなのだ。」
「私の祖父の時代からです。申し送りで今の状況が続いていました。」
「そうですか、ヘルモンド殿は知ってどうするつもりですか。」
「正直に言えば、分かりません。ただ自分は何者なのかを知りたいのです。」
アレクはヘルモンドに少し変えて話をした。アルテミスが死んだことは伝えなかった。
「では我がアルテミス王はこの世界をお創りになった神と融合されたのですか。」
「まぁ、神とは少し違うな。神ではなくただ力のある者だな。」
「いいえ私にしてみれば同じことです。この大地を創られたのでしたらそれが神です。」
「まぁヘルモンドがどう捉えようと個人の自由だな。」
「それでアレクス殿はすべてを受け継いだのですか。」
「そうなるなアルテミス王にも寿命がある。このアースを長い年月を守ってきたのだ、3億年もの長い時間だ。私はその意志に報いなければと思う。私の命がある限りだがな。」
「そうですか、よくわかりました。アレクス様は神ですな。」
「お前は馬鹿か、何故私が神になるのだ。おかしいだろう。」
「いいえ創造神アルテミス様からこの世界を引き継がれたアレクス様は神ではないですか。」
「どうしてそうなる、違うだろう。ただの引継ぎだぞ。」
「いいえ違います。私はアルテミス様をよく知っています。今まで迷宮国家以外の者とは喋る事さえいたしませんでした。アレクス様だけは違っていました。アルテミス様は嬉しそうにしておりました。待ち望んでいた者が現われたと大変な喜びようでした。もっ、もっ、もしやアレクスさまはアルテミス様の夫になられたのですか。」
「違うだろうーー。どうしてそうなるのだ。全く違うぞ。」
アレクはヘルモンドとの話を諦めた、何を言ってもヘルモンドの頭で神に変換されてしまうからだ。だがこれがいけなかった。数日後には創造神アルテミスの像が出来上がっていた。そしてアレクスの像もあったのだ。
ヘルモンドは他の領主にアルテミスの偉大さを伝えた。そしてアレクスがアルテミスの後継者になり神になったと伝えていたのだ。その噂は迷宮国家の中で広まった。翌日には迷宮内の誰もが知っていた。
アレクは頭を抱えたくなった。どうしてこうなった。
アレクはヘルモンド達にアルテミスの像は許可を出したが自分の像は撤去させた。アレクは自分は神ではなく多少力のある人間だと一生懸命に伝えたのだ。何とか納得をしてもらい。ほっとしていた。
だがこの迷宮国家の人々の方が想像力が豊かであった。アレクが否定すればするほど、神と呼ばれることが嫌だと解釈していた。それならば神と言わなければいいのでは、となったのだ。アレクは神とあがめていくが本人の前ではアレクス王で行く事になったのだ。迷宮国家の人たちはそういえばアルテミス神も皆の前に出るときは王であって神ではなかったと自分達に都合の良い解釈になっていった。
そして迷宮国家の人たちは創造神アルテミスと大地の神アースを創った。この大地の神アースはアレクスの別名とされ迷宮国家の人たちの秘匿事項となった。
そうとは知らぬアレクは迷宮を改造していた。この迷宮は最古の迷宮だけあって500層にもなっていた。だが使っているのは、迷宮として冒険者などを呼び込むために100層があり迷宮国家アルテミスが10層、そして最下層を守るために50層使っているだけであった。残りの階層は実際には使用していないのである。
ただ魔力を貯める倉庫としてあるだけであった。貯めた魔力でマントルを抑え込んでいるのだ。膨大な量の魔力が必要なこの蓋、アレクは魔力での蓋ではなく物質で塞ぐことにした。アルテミスがなぜ魔力で塞いだのかがすぐに理解できた。穴が巨大すぎる。これでは物質が弱くなるとマントルが噴き出てしまうからだ。
だが今のアレクにはアルテミス迷宮を入れて4つの迷宮の力がある。魔力も膨大な量がある。
まず新しい迷宮核をアルテミスから作成する。その迷宮をアレクが支配するそれを魔力蓋の上に置く。そうすると迷宮核は魔力蓋が迷宮の壁になっていった。これでアルテミス迷宮の負担が無くなった。新しい迷宮がマントルの蓋として自己修復が出来る事で魔力で抑え込むよりは確実である。この蓋の迷宮はマントル内にある魔力をエネルギー源としているので今までの様にアルテミスの魔力を使用していない。万一の為に4つの迷宮を繋げてはいるが、その上にアルテミスの迷宮を二重の蓋としているので大丈夫であろう。
このアルテミスの迷宮だけは他の迷宮と違う。この迷宮は好きなところに出入口を作ることが出来るのである。他の迷宮は迷宮を広げるかケーブルによって伸ばす必要があったがアルテミスはその必要が無かった。
その能力があったから各地に迷宮を誕生させることが出来たようだ。アレクは迷宮の無いノースオリオン王国に出入口を作成した。今使用していない階層50層を1層から50層として新しい迷宮としてノースオリオン王国王都郊外に作り、アレクはその出入り口からレオンの所に行く。
レオンはアレクが突然現れたことに驚いていたが、アレクなので納得していた。アレクはレオンに迷宮を創ったことを伝え、レオンを迷宮に案内をしていた。
アレクはレオンにこの迷宮はアルテミスの迷宮の一部だが独立していると説明をする。レオンが迷宮で移動できるのかと質問をしてきたからだ。アレクは出来るが他の者は出来ないのだ。
アレクはレオンに他の方法がないか考えると約束していた。レオンは迷宮が出来た事に大喜びをしている。色々な素材が手に入れることが出来る迷宮は国の宝なのである。
「なぁアレク、迷宮でマジックバックとか魔道具が出るようにしてくれないか。」
「そうですね、では宝箱でも隠しておきましょうか。それとも下層ボス戦の戦利品にしますか。」
「そうだな少し考えてみるよ。冒険者ギルドと打ち合わせをしてから頼むよ。」
「分かりました。」
レオンと分かれたアレクはノースオリオン王国の迷宮から元のアルテミスの迷宮に戻ってきた。
アレクはこの機能は使えると思い、色々と作業を始めていた。
作業に没頭していたが、途中で呼び出しがかかり中断して地上に戻ってきた。