226話
「俺はここから中に行くよ、アレクは宰相の執務室から行ってくれよ。」
「了解、カイン兄も気を付けてね。」
「任せとけ。」
カインは部下20人と地下通路へ入っていった。アレクは宰相の部屋へ戻り20人を連れて入る事にした。残りの者たちは通路の警備と城内の警部と防衛を行なう。城壁には帝都にいた兵などが城内へ入ろうと押し寄せている。人手が足りないことも有り20人という人数になっていた。
アレク達は階段を降りると壁があった。完全にふさがった壁である。押しても引いてもビクともしない。アレクが壁の前に出る。アレクは壁に手をやりブツブツと何かを言っている。すると壁はスッっと無くなった。アレク達は壁の中に入る。そこは迷宮の洞窟のようなところであった。アレクは二人をこの場所の防衛に残し奥へ進むことにした。
「師匠、これ迷宮ですね。」
「ああ、迷宮だな。」
「魔物が来ました。倒しますね。おりゃーー。」スパッ。スー。サッ。
アクラーは楽しそうに魔物を倒している。アレク達はどんどんと奥に進んでいく、かなり広い迷宮だ。魔物の数も強くなり、数もふえていく。
下に降りる階段を見つけて下におりていくと又壁になっている。アレクはその壁を消し去り入ると、そこは草原の向こうに町があった。早速アレク達は町に向かった。
地上の帝都のような巨大な都市ではないが小さな都市、いや大きな町と言ったところだろう。人々が普通に生活をしている。アレク達は呆気に取られてしまった。完全に異分子である。呆けているアレク達にこの町の警備兵であろう者達が駆けてくる。その警備兵はアレクに質問をしてくる。どこから入った、帝国人かなど色々と質問をしてくるのだ。アレクは不思議に思いその警備兵に質問で返す。
アレクはグラムット帝国とオリオン王国が戦争していることを聞いてみたが知らないようだ。グラムット帝国は知っている。友好国であり支援をしてもらっているようだ。ここはグラムット帝国の中に存在している迷宮国家であると説明をされる。迷宮内に住んでいる者達は外の世界を知らない。この迷宮国家は何層にも人々が住んでいる。アレク達は警備兵に連れられてこの町の領主に会うことになった。
「ようこそ迷宮国家アルテミスへおいで下さいました。私はこの層の領主へルモンド・サティーです。」
「初めまして私はアレクス・オリオンと申します。私たち以外にもう一組がこの迷宮内に入っていますので宜しくお願い致します。」
「そうですか警備の者達に伝えましょう。」
「ありがとうございます。」
アレクは領主のへルモンドとの話の中で色々と分かったことがあった。グラムット帝国と迷宮国家アルテミスは全く関係がない別の国である事。グラムット帝国に一つの区画を貸している事。そして今夏の戦争の事を知らなかったことである。
アレクは別の国であっても親密な関係だと思っていた。何しろグラムット帝国の中にあるのだ。
だがこの迷宮国家の人々は外に出たことがないようだ。何故かこの迷宮国家の人々は地上に行く気がない。グラムット帝国自体も秘密にしているぐらいだ、出さないのだろう。
アレクはこの迷宮は何層で構成されているのかを聞いてみると何層かは分からないとの事であった。分かっことはこの上層には魔物がいる。そしてこの層から下に10層が国としての領地となっている事である。魔物もこの層には入ってこない。この10層には魔物が存在していない。人が住んでいるのは5層分であとは資源の階層であるようだ。鉱石、薬草、農地等の色々なものが採れている。外に出なくとも十分に生活できる環境が整っている。そしてアルテミスより下の層も存在している。下の層には魔物が出るため人はいかないようだ。その魔物は人々が束になっても敵わない程の強さであると説明をされた。魔物の中にはドラゴンもいるようだ。統率がとれている魔物の集団である。アレクは単純に疑問に思ったことを聞いてみた。上の層に行けないのか。そうすると領主は悩み始めた。なぜ上に行く発想が無かったのだろう。上の魔物の方が下の魔物より明らかに弱いはずだ。だがアルテミスの人々は上の層に行く発想が無かった。何者かに暗示でもかけられているようであった。領主の結論は、上も下も危険だから此処に居るであった。アレクは何も言わなかった。移動は自由だ、留まるのも出ていくのも自由である。
「色々とお聞き出来て助かりました。」
「いえいえ久しぶりに楽しい時間を過ごせました。」
「それでへルモンド殿、グラムット帝国に貸している区画に行けますか。」
「ええいけます。この町の東門を出て街道を進むとグラムット帝国の区画があります。一本道ですから迷うことはないでしょう。」
「ありがとうございます。」
「アレクス殿、グラムット帝国との話が終わってからで結構ですのから、迷宮国家アルテミスの王にお会いください。」
「えっ、王ですか、突然来た私なんかがお会いしても宜しいのでしょうか。」
「はい王の意志ですので、お会いください。」
「王の意志ですか分かりました。グラムット帝国との話が終わりましたら、こちらにまた寄りますのでお願いします。」
アレク達は東門を向けて街道を進む、アレクの感覚で1キロほど進んだところに大きな門が見えてきた。
「あれがグラムット帝国に貸してる区画だろうな。」
「城ですね。」
「ああ、城だな。」
「ですが人の気配がありませんね。」
「少し警戒したほうがいいかな。」
「なぜかこの迷宮にきてから変な事ばかりですね。」
「そうだな外では戦争をしている最中なんだよな。」
「そうなんですよ、だけどこの場所にいると戦いを忘れてしまうんですよ。不思議です。」
「気を取り直していこうか、グラムット帝国との戦争を終わらせないとな。」
「はい。」
アレクはグラムット帝国の区画内にある城に近づいていく。城門には武装した兵もいない。誰もいないようだった。城の中から一人のメイドがやってきた。メイドはアレク達を迎えに来たようだ。中年女性のメイドはアレク達に問いかけてくる。
「オリオン王国の方たちでしょうか。」
「そうだ。私はアレクス・オリオンだ。」
「宰相閣下がお待ちです、ご案内いたします。」
メイドに案内をされて連れてこられたのは謁見の間のような広い空間であった。アレク達は10分ほど待っていると一人の男が現われた。
「よくここまでこれたものだ、流石だな。私はグラムット帝国宰相である。マトリック・グレイトスである。」




