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216話

ウエストリー王都は歓迎の歓声に沸いていた。


ユリたちは王城へ赴く。王城は門兵もいない状態となっていたが、大広間に着いたときに騎士に守られた一団がいた。ユリはその者達になぜ逃げないのかと問うた。

「そこの者達、なぜ逃げなかったのですか。逃げる時間は与えていたはずですが。」

「私は、このウエストリー王国の王妃です。戦争に負けたのですから責任を取る者が必要でしょう。私と王太子の二人の命で許してください。後の者達はまだ政治自体に関わっておりません。」

そこには王族5人、王妃と子供4人であろう、20歳前の青年と15歳から8歳ぐらいの子供3人がいた。

騎士たちは無言であるがいつでも盾になれるように構えている。


「ウエストリー王妃にお聞きしたい。国王はどこにいるのですか。」

「・・・・・・・・」

「もしかして戦闘で戦死をしましたか。」

ユリは誤解していた。ウエストリー王は勇敢に敵と対峙して戦死をしたと思ったのだ。



そして王妃と王太子から真実を聞かされた。ユリは何とも言えない表情をしていたのが印象的であった。


「王妃と王太子に問う。あなた達の命と引き換えに戦争責任を取るというのは誠ですか。」

「はい、私の命で救えるのなら喜んで死にましょう。」

「私も王太子であります。出来ましたら、私一人の命でお願いいたします。弟妹達はまだ幼く母親が必要なのです。どうかご慈悲をお願いいたします。」

王太子は深々と頭を下げている。小さな子供達は母親にしがみ付いている。少し大きな子は下を向き涙をこらえているようだ。


「今このウエストリー王国で生きている国の重鎮たちを集めなさい。そこで沙汰をいたします。私は降伏し、恭順する者の命は奪いません。そこは約束をしましょう。」


ウエストリー王国の重要な役職についていた者達が集められたが、10人しかいなかった。戦死をしたか逃げたかであろうが残った者達は責任を取るつもりで国に残っていたようだ。

残っていたのは内務大臣補佐2名、外務副大臣、軍幹部3人、騎士団長、副騎士団長、商工次官、農林次官の10人であった。

王太子は、内政次官をしていた。王妃は役職はなく子育てをしていたようだ。

後の者達は戦死はしておらず、国から逃げていったようだ。


ウエストリー王国の次官以上の者がこの大広間に集まった。


「ウエストリー王国の者達に問う。この戦争を引き起こした、使者トーマス・カリンはどこにいるのです。」

「・・・・・・・外国へ逃げたようです。」

「そうですか、では仕方ありません。」


ユリはこの場にいる者達にTオリオン王国への恭順を問い皆従うことになる。

その他の貴族達の沙汰も行う。貴族当主が残っている者は爵位を一段下げて領地は安堵する。戦死している貴族当主は一族に相続を認めるが、領地は半分、爵位も一段下がる。だが逃げた貴族は断絶とした。

一族で残っている者もいるが、国を守る貴族が逃げたのだ。民も信用は出来ないだろう。ただ資産の相続は認めた。貴族の中で当主だけが逃げ、妻と子供を置き去りにしたものが多くいた。ユリはその者たちにはTオリオン王国で引き取り新たに法衣貴族として能力に合わせて召し抱えると約束をしていた。


王太子にはTオリオン王国より侯爵位を与え、領地も与えた。領地はTオリオン王国に近い場所であるが侯爵として通常の広さよりも大きな領地であった。王太子はTオリオン王国に忠誠を誓い、ウエストリー王国はTオリオン王国となった。


逃げ出した元ウエストリー王と貴族達の事は、各国に通達が出された。その者たちを入国させたり、匿う等の事が発覚した場合はTオリオン王国への敵対行為とみなし、宣戦布告すると通達を出したのであった。

その逃げた者達を捕まえた者にはTオリオン王国が貴族として召し抱えるとも通達を出した。

これに目の色を変えたのが軍にいた兵たちであった。元上官の行動をよく知っており捜索も出来る者達であった。


兵たちは元上官たちを拘束してTオリオン王国に届けた。


ユリは優秀な者は騎士爵としたが、後の者は騎士としての称号を渡した。それでも平民にしてみれば爵位はないが貴族になったのである。騎士は称号であるが、一代限りの貴族籍に入る貴族である。この世界では準貴族と言われている。平民で功績のあった者や、長年役人として勤めた者に与えている。もちろん本物の騎士は、騎士団に入ると騎士になる。本物の騎士と違う点は騎士証の色である。貴族証とも言われるこのバッジは騎士団の者は銀の騎士証であるが功績等で騎士になった者は赤、役人上りは白である。

タンドラ大陸はこのような習慣があった。ユリもその習慣を利用したのである。


逃げて捕まった貴族、軍幹部たちは元ウエストリー国内を歩かされた。国を守らずに民を見捨てたものとして国中を歩かされたのである。



だがウエストリー王と数人の貴族達の行方は分からなかった。



「ユリ見事な采配だったね。」

「師匠、それほどではありません。以前に師匠がやっていたことを真似しただけですから。」

「えっ、そうなんだ。」

「そうですよ、戦闘から貴族達の処分までモノ真似ですよ。」

「でもまた女性当主が増えたね。」

「そうです、今回のウエストリーの貴族の半数が女性当主となりました。相続争いで今まで相続権の無かった女性にTオリオン王国が女性相続を認めたせいですが。かなり優秀な人材がいました。」

「忠誠心の高い者達にはスキル玉を渡して能力を伸ばそうか。ユリが上手く使ってやりなよ。」

「はい、Tオリオン王国の発展の為に全力でやります。」

「あっ、そうだユリはSEオリオンで伯爵だったよね。Tオリオン王国の公爵位を渡すから最初としてこれからも頼むよ。」

「わ、私が公爵ですか。いいんでしょうかマックより上になって。」

「そこかい。大丈夫だよ、マックとリックにも考えているから。何しろ私の初めての直臣たちだからね。」

「そうでした、師匠もまだ小さな子供でしたね。」

「そうだ5歳だったかな。王都へ初めて行ってリックが道で倒れていたな。リックは休憩中とか強がっていたな。」

「リックには感謝しています。師匠に出会い、私たちの運命を切り開いてくれたのですから。」



「それよりコルンもマイルド王国を滅ぼしたようだね。」

「そうです、圧勝ではありませんでした。」

「コルンは迷ったんだろうね。あいつは優しいからな。」

「師匠はこれからの展開はどう思われますか。」

「そうだね、コルン王国はこれ以上大きくは成れないかもな。コルンが敵に非情になれなければ敵国に舐められていくよ。謝れば許されると思えば、敵国は謀略を仕掛けてくるだろう。先祖のコルンの英雄も同じだったのかもな。ユリはコルンの甘い所をフォローしてやれ。コルンに潰れられるとこちらも困るからな。同じ王国連合だしな。」

「はい師匠分かりました。」



「あとはゼスト王国とトミス王国が大人しくしていればいいのだがな。」

「当分は大丈夫です。特にゼスト王国はコルン王国に囲まれましたので、何も出来ないでしょう。」

「そうだな、そうであってほしいな。」



アレクの予想、願いは半分当たった。ゼストは大人しくなったが。トミス王国は何か企んでいるようだ。



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