214話
Tオリオン王国
「なぁユリ。コルンどうかな。」
「師匠、心配なら見てくればいいではないですか。」
「まぁそうなんだけどな。見に行くと手助けをしそうだからなぁ。」
「間違いなくしますね。」
「そうだろう、だからいかない。」
「・・・・・」
「ユリ様、隣国のウエストリー王国の使者がお見えです、如何いたしましょうか。」
「謁見の間に通してくれるかしら。」
「はっ、承知いたしました。」
「師匠、会ってみますか、どうせお暇でしょう。」
「・・・・・・」
「宰相閣下、お会いできて光栄です。私はウエストリー王国、トーマス・カリンと申します以後良しなに。」
「ウエストリー王国の使者殿。今回はどのようなことでTオリオン王国においでですの。」
「はい、実はコルン王国の事でございます。」
「コルン王国ですか、ではコルン王国へ行くべきではないですか。」
「いいえ、Tオリオン王国にコルン王国の事で聞いていただきたい事がございます。」
「はて、わが国で何を吹き込みたいのですか。」
「いいえとんでもございません。ただコルン王国へお伝え願えればいいのですよ。」
「使者殿、何か勘違いをしていませんか。」
「勘違いですか。」
「そうです、Tオリオン王国へきてコルン王国へ伝言を頼むのですか。」
「いいえ、伝言ではございません。ご忠告です。」
「忠告。」
「そうです、忠告です。コルン王国がこのままタンドラ大陸全土を敵に回せば取り返しのつかないことになります。それをご忠告して頂きたいのです。」
「コルン王国は最初からタンドラ大陸全土を相手にするつもりですよ、今更そんな事を言っても仕方ないでしょう。」
「えっ。コルン王国はタンドラ大陸全土を相手にするつもりですか。」
「使者殿そんなことも知らずによく使者が務まりますね。」
「・・・・・」
「使者殿、ウエストリー王国でも防衛の準備でもしては如何です。そのうちに侵略されますよ。」
「な、何を女無勢が言っている。コルンだろうと、こんな出来立ての女が宰相などやっている国など相手にもならん。国王を呼べ、女では話にならん。早くしろ。」
ウエストリー王国の使者に同行していた者達は青くなっていた。同行者たちは使者を押さえつけて、平謝りをしていた。ここまでの馬鹿とは思っていなかったようだ。
「ウエストリー王国も少しは物の見える方が使者になられた方がよいですね。」
「も、申し訳ございません。」
「こら、お前たち離せ。私は陛下より勅命を受けた使者だぞ。国に帰ったら処分してくれる。」
「も、申し訳ございません。」
ユリは謝るウエストリー王国の者を手で制した。
「使者殿、Tオリオン王国に喧嘩を売っているのですか。女の私が安く買ってあげましょうか。」
ユリは上から目線で、床に押さえつけられている使者に言い放っていた。使者は頭に血が上っているのか、同行者に構わずに喚いている。
「女のお前などに負けるか、売ってやるぞ喧嘩を売った。こんな国すぐに滅ぼしてやる。お前を奴隷にしてやる覚悟しろ。」
「も、も、申し訳ございません。この男は気が狂っております。申し訳ございません。」
タンドラ大陸でも女の地位は低い。国の宰相などなれるものでは無いのだ。ウエストリー王国も女宰相との情報は入っていた。だが長年の習慣がある。女は男の言うことを聞いてろ。その風潮がタンドラ大陸いやこの世界の常識なのだ。そこにTオリオン王国の宰相が女性であった。使者も分かってはいた、だが普段からの態度が出てしまった。貴族の彼にはあまり逆らうものがいないために暴言が出てしまったのだ。国同士の対話ではあまりにもお粗末な人選でしかない。
「ウエストリー王国へお帰り下さい。そして国王へお伝え願います。貴国の宣戦布告をTオリオン王国は受諾しました。」
「お、お待ちください。我が国は宣戦布告などしておりません。」
「ではその男は使者では無いのですか。」
「・・・・・・・」
「あなた方が国へ帰るまでは我が国も攻撃は加えません。早く帰って王に伝えなさい。Tオリオン王国を怒らせて無事な国はありません事よ。ふふふっ。」
ウエストリー王国の使者たちは急いで国へ帰っていった。
「ユリ、戦争になっちゃったね。」
アレクはもの凄く嬉しそうにユリに問いかける。
「・・・申し訳ございませんでした。」
「いいのいいの、Tオリオン王国の宰相が馬鹿にされて黙っているほどやわな国じゃないからね。」
「ユリが総指揮を今回執りな。」
「よろしいのですか、師匠は戦いたいでしょう。」
「今回はユリの指揮のもとに動くよ。好きにやっていいからね。」
翌日ウエストリー王国から改めて使者が訪れたがTオリオン王国は追い返していた。
ユリはウエストリー王国に対して、戦争準備に入っていた。今回のメインはユリ艦隊である。ユリ艦隊の面々は憤慨していた。Tオリオン王国宰相を女無勢と馬鹿にしたことが艦隊内に広まったのだ。艦隊からTオリオン王国全体に噂が広まり、国中がウエストリー王国へ怒っていた。Tオリオン王国は女性当主が多い国である。自分たちも参戦させろと城に押しかける事態となった。アレクはその当主たちと話をした。
「お前たちには戦闘経験が無いだろう。今回は諦めよ。」
「陛下、戦闘経験はございませんが。どの様な物かは理解しております。今回は良い機会かと思います。ユリ宰相なら勝ちます。」
「ほうぉ、なぜそう思う。」
「まず陛下がユリ宰相に戦争の許可を出しました。勝つ算段が出来ているからの許可だと思います。そしてユリ艦隊は強力です。あの空飛ぶ船ではタンドラ大陸の国では勝てません。」
「いい目をしている。お前たちには戦闘の許可を与える。ユリの補佐をしてみろ。これをやるから飲んで見よ。」
「こ、これはスキル玉ですか。しかも6個も。」
「お前たちにはユリの補佐をして貰う、スキル玉で能力を解放してみろ。」
アレクは6人の女当主に能力解放のスキル玉を渡して飲ます。女性当主たちは期待に満ちた顔をしている、噂では聞いていたがスキル玉を見るのは初めてのようだ。
能力解放を済ませた6人は自身の力に驚いていた、アレクは能力に合わせてスキル玉を一人に数個渡している。
今回の戦争では女性兵が多く志願して来ている。噂が広まり女性の志願兵が多くなったようだ。アレクは男女関係なく志願してきた者達にスキル玉を一つずつ渡している。志願兵は感激していた。何の取り柄もなかった者がスキルを手に入れたのだ。
ユリは志願兵を陸上部隊に編入した。その隊長には空兵隊中隊長をしていたメイサ中隊長が陸戦隊隊長としての指揮を任せられた。メイサはユリを崇拝している。敵軍を殲滅すると張り切っている。
アレクは少しだけ心配になっていた。