212話
ローエム帝国の英雄の誕生であった。
マリウスはカレラ王国からローエム帝国に帰ってきた。ドラゴンに乗りローエム帝国帝都を旋回しながら降りてきた。帝国民は歓喜に沸いていた。マリウスは知らない事であったが、ローエム帝国はマリウスの活躍を宣伝したのである。時間的に情報が入る事は不可能であるが、アレクが状況をローエム帝国に流していたのだ。アレクはドラゴンの眼から状況を見ていた。ローエム帝国の宰相カトリーヌは、マリウスの活躍を大変喜んでいた。次期皇帝が自ら戦場に立ち敵を殲滅する。これほどの偉業を宣伝しない訳がない。盤石な帝国を築くためには利用できる者は皇帝であろうと使うのである。
マリウス株はストップ高である。子供たちも大喜びであった。帝国宣伝の為にドラゴン5頭が帝都を低空低速で周り、帝都民の喝采を浴びた。戦場から入ってくる情報が同じであり5か国をドラゴンが殲滅させたとなっていた。一つ違うことがあった。ドラゴンが3頭から5頭になっていた事、これは帝都民が飛び回るドラゴンを見ていたせいである。
ローエム帝国帝都民とのお祭りを楽しんだアレク達は、どうせならノースオリオン王国を見せてやりたいと思い、ノースオリオン王国に向かうことにした。帝国飛行場に帝国貴族達が勢ぞろいしていた。アレク達を見送るためである。純粋に見送りに来ている貴族はいない。皇帝とオリオン王国にいい印象を与えるためにきているものがほとんどである。
それでも盛大に見送られてマジェスタ号は飛んでいった。その後、マジェスタ号の注文が殺到したことは言うまでもない。ランクを落として販売をしたアレクは笑いが止まらなかったようだ。
ノースオリオン王国
「アレク、よく来たな。ゆっくりしていけよな。」
「レオン兄、お世話になります。ほらお前たちも、挨拶をしなさい。」
「レオンおじさん。こんにちは。」
「おぉ、おじさんだよな。」
レオンはなぜかがっくりしている。
レオンの子供は3人いる、ジーン・オリオン8歳、シルク・オリオン6歳、アリーナ・オリオン5歳の男女女である。
ジーンは大人しいいい子である、シルクとアリーナもいい子なのだがさすがは女の子である。おませである。マリアーヌとマルティナを妹として連れ歩いている。自慢したいのだろう。友達の屋敷を連れまわしている。困ったのはレインである。いつもはマルティナと一緒にいる。兄たちとはあまり一緒に遊ばないのだ。2歳ということも有り外へは出ない為に一緒に行けないのだ。
レインはウルフの背に乗り城の中を散歩している。城の中は大騒ぎとなった。魔物が城に侵入してきたと、軍が討伐に来てしまったのだ。アレクはノースオリオン王国軍にひたすら謝っていた。
レインは悪くはない。大人たちが目を離してたのがいけないのだ。レインは何も気にしていない、オスカーとよく似ている。オスカーは知能犯だ、大人がどうすれば許してくれるのかがわかって行動をしている。だがレインは天然だ。本能でわかっている。ニコニコ笑うとみんなが笑ってくれる。姉たちはレインを守ってくれる。アレクにも覚えがあった、末っ子最強伝説だ。末っ子は強い。みんなが甘くなるのだ。
他の兄たちもレインには弱い。いつもお土産を持ってくる。外に出るときれいな石、お菓子などをいつもレインに持ってくる。
特にオスカーはお兄ちゃんと呼ばれるために持って帰ってくる。お兄ちゃんありがとう。この言葉を聞くためにオスカーは駄菓子屋でお菓子を買って帰るのだ。
そんな9人の子供たちでにぎわっているノースオリオン王国も、ハルノール王国がノースオリオン王国に宣戦布告をしていた。情報伝達が遅いために他の5か国が負けたことを知らずに宣戦布告をしてしまった。気づいたときには遅かった。ノースオリオン王国軍と戦闘してしまっていた。
アレクとレオンは戦闘の行われている地域まで来ていた。ノースオリオン王国軍圧勝である。
アレクは何もすることが無くただ見ていた。今回は見ているだけで戦争が終わりそうであった。
ハルノール王国はすぐにノースオリオン王国に対して停戦を申し込んできた。ノースオリオン王国は最初は突っぱねてハルノール王国に進軍していった。戦えば負ける事が分かっているハルノール王国は降伏を申し入れてきたのだ。ノースオリオン王国は降伏を受け入れ、降伏条件の協議に移っていった。
その協議は難航した。領地の要らないノースオリオン王国、お金が無いので領地を割譲で済ませたいハルノール王国は変な交渉であった。人のあまり住んでいない地域を割譲案に出してきている。人の住んでいない土地など要らないノースオリオン王国、だが相手は金が払えない。何も取らない事は出来ない。
ハルノール王国は金がないので逆に強気になっている、金は無いから払えない。だが何もないわけではない、人の住んでいない土地を渡せるのだ。ノースオリオン王国は分割でも金の方がありがたいので分割案を出すが、ハルノール王国は金がないの一言で終わる。
話は平行線のまま行ったがノースオリオン王国が折れた。無駄な交渉をしていても仕方がないと諦めたのだ。ハルノール王国は国土の6分の1をノースオリオン王国に割譲と決まった。ハルノール王国の西側の山峰から6分の1である。山はどこの国にも属していない。ノースオリオン王国から続く山々である。
ノースオリオン王国とハルノール王国の降伏条件が決まるころにはローエム帝国対5か国の戦争も終決していた。ローエム帝国はブリジア王国を滅ぼしていた。カレラ王国も滅亡寸前であったが何とか生き延びたようだ。
ブリジア王国はイングリット王国が進行してきた時、ほぼ無人状態であったが、何とか人を集め抵抗をした。だがローエム帝国の部隊が到着した時に瓦解したのだ。王族は捕まり捕虜となった。カトリーヌはブリジア王国を一度滅ぼしローエム帝国の温情で貴族として召し抱える事を宣伝した。
カレラ王国も同じような扱いをしていた。他の国々はまだ戦力が残していることも有り、条件付きの降伏となった。その条件は厳しいものであった。シリレア王国はルービス王国に3分の1の割譲の上ローエム帝国への賠償金の支払い。カレラ王国は滅んだがルービス王国に5分の1の土地がローエム帝国より送られた。
イングリット王国はタイタン王国とオーガルト王国からそれぞれ国土の4分の1が割譲された。ブリジア王国はローエム帝国に組み入れられた。ブリジア王国王家は元カレラ王国へ領地をあたえられて侯爵として新たに貴族としてのスタートをした。カレラ王国の王族も元ブリジア王国に領地を与えられて侯爵として生きていく事のなったのだ。
こうして一連の北部戦争が終わり。アレク達の家族旅行も終わろうとしていた。
「レオン兄またくるよ。」
「おう。待っているよ、シルバーウルフ2頭をまっているよーー。」
「アレクおじさま、お願いします。」
「分かったよ、シルバーウルフ2頭送るから大事にしてくれな。」
「「「はい。可愛がります。」」」
そう、アレクはレオンの子供たちにせがまれてシルバーウルフ2頭を上げる約束をしてしまったのだ。モフモフの手触りがお姉さま方に気に入られ、マリアーヌとマルティナ経由でアレクに頼み込みシルバーウルフ2頭をゲットしたのである。
アレクは終始、苦笑いをしていた。子供に甘いアレクをよく観察していた、シルクとアリーナの勝利である。
アレク達はみんなに見送られてマジェスタ号で迷宮都市に帰っていった。
アレク一人が疲れた家族旅行であった。




