207話
レイモンド・コルンそれはコルン王国の王の名である。
この少年、一時は町を維持するだけの小さな国の王であった。英雄の末裔とされているコルン家は、タンドラ大陸の諸外国からの嫌がらせ、謀略、策略を乗り越えて大国としての地位を手に入れた。だがこれからだ。王都建設をしていく。
僕はやるぞ師匠に認めてもらうんだ。コルン王国を救ってくれた者は二人いる、アレクス師匠とマーリンだ。マーリンは古くからコルン王家に仕えてくれている騎士の家だ。マーリンが師匠と話をしなければ今は無かった。ほんの少しの偶然が運命を変えた。マーリンがあの港町をあの日訪れていなければ今は無かった。マーリンに出来るだけ酬いる事が出来るだろうか。領地と爵位だけでは釣り合わないだろう。一族の全員を召し抱えても追いつかないぐらいの事をしてくれた。
師匠には滅びるだけの国を救ってもらい。領地も奪還してもらった。王都まで建設を手伝ってくれている。あの人こそ英雄だと僕は思う。でも師匠は英雄と言われるのを嫌がる。何故だろうと思いユリさんに聞いてみた、そうしたら師匠は影の支配者になるつもりなのですと答えられた。全然影になっていないと思うが師匠の考えは斜め上をいっているから考えない事にした。
そうだ王都開発だ。今では王都と呼べるほどになってきた。人が集まり商人が店を出している。交易港としてタンドラ大陸の入り口として都市に変わろうとしている。
以前の港町の10倍まで広がった、以前の住人にも新しく区画して移ってもらった。住人たちは大喜びをしていると聞いた。なんでも大金を貰ったようだ。僕はタッチしていないので聞いた話だ。
王都が大きくきれいになったのはこの住人たちがごねずにすぐ移動してくれたおかげだ。いい人ばかりで王としても嬉しい。元コルン王国民の人達も大勢戻って来てくれている。諸外国に散らばっていた人たちは貧しい生活を強いられていたが何とか盛り返し出来そうだ。これも師匠のおかげだ。
先日トミス王国とゼスト王国の使者が来た。属国になるので助けてほしいと言ってきた。何て身勝手な国だ。僕が困っても助けるどころか滅ぼそうとしていたくせに自分が困れば助けるのが当たり前のように言ってくる。信じられない。僕も鬼ではない、SEオリオン銀行とリア銀を紹介した。これでゼスト王国とトミス王国は持ち直すだろう。その行動を見てから属国にするかを決める。言葉だけでは信用は出来ない。行動を見てからでないと信用と信頼は出来ない。
僕はこれから戦いの日々になっていく。信用できる国と同盟を結び、このタンドラ大陸を一つにする。
僕も少しは自信がついてきた。
この前の戦いで初めて人を殺した。その時は無我夢中で必死であったが、戦闘が終わった時に震えがきた。人を殺したことに後悔はない。でも人の人生を終わらせてしまったことには考える物がある。
人を幸せにするために戦争をして人々を殺す。矛盾していて頭が変になりそうだった。だけど師匠が言ってくれた、お前の大事な人を守るために戦争をしていると。僕は妹を守るために、王国民を守るために戦争をする。僕がやらなければいずれ殺される。僕で止めないと一族が滅んでしまう。英雄という一族を残さなければいけない。僕は割り切った、僕は悪でいい、コルン王国は善にしていればいいと思う事にした。師匠も同じようなことを言っていた。僕は師匠と仲間がいる。信頼できる家臣たちもいる。
次に戦う相手は決まっている。マイルド王国、この国は嫌な国だ。親書を出した時には仲良く出来ると思った。だが違っていた。友好をと言っているが侵略の準備をしていると報告があった。それも連合を組んでこのコルンに攻める事になっている。今マイルド王国は諸外国から傭兵を金で雇い入れている。
僕はこのコルンを守る、どんな手を使っても守り、勝利する。勝たなければいけない。
僕も戦争の準備をしなければいけない、今度の戦争は師匠がいない。Tオリオン王国は戦力は貸してくれるが主体はコルン王国となる。初めてコルン王国での戦争となる。準備は完璧にしたい。
よしやるぞ、タンドラ大陸の新しい伝説をつくるために僕はやってやる。やるぞー。
アレクはSEオリオン王国に戻っていた。
ジル王国が王国連合に加わる事になった為に、ブライ王国への対応を協議するためだ。
ブライ王国はジル王国、ルーアニア王国、ベレーヌ王国、SEオリオン王国とも運河を挟んで接している。この国々に囲まれた状態になっているブライ王国は何かと問題を起こしているようだ。唯一親グラムット帝国であるカイゼル王国と少しだけ国境が接しているが、カイゼル王国はブライ王国を相手にしていない。
ブラン王国が最近活発に動きだしたこともあり、協議する事になったのだ。
アレクとしてはブライ王国を潰してしまう方が楽なのだがそうもいかない。戦争屋などと言われている最近では、なかなか動きにくいのである。
ジル王国はブライ王国を滅ぼして国土を広げたいのが本音だ。隣接する国も同じなのだが最初に言い出しにくい。アレクが一言ブライ王国と戦争をすると言ってくれたら他の国は追随する用意がある。それを期待して呼ばれているのだ。アレクもその事が分かっているのだが、中々言いにくい、いや言えないでいる。
オリオン王国の本音としてもブライ王国はオリオン王国連合に囲まれている為、無くなってほしいのだ。だが誰も最初の一言が言い出せないでいた。
アレクは誰も言い出さない事にじれていた。建前は大事だが欲望が勝っているのだ。各国の欲望がアレクに期待の目を向けてくる。
「ジル王国よ、ブライ王国と戦争を行って勝てるのか。」
「勿論です。我がジル王国、ルーアニア王国、ベレーヌ王国の3か国連合として攻め入ります。」
「なんだ話が出来ているではないか。うちは参戦しないぞ。」
もうそれからは早かった。各国がどのルートでどのように領地分けをするのかを決めていった。SEオリオン王国は不参加を宣言していた。今更参加して不興を買いたくなかったからだ。
各国はほっとしていた。最初に戦争の事を言ってもらいたいが参戦はして貰いたくないのが本音であった。3か国はアレクが理解して受け答えをしてくれたことに感謝をしていた。
アレクは後は任すと先に帰ってしまったが誰も気にしていなかった。
こうしてジル王国、ルーアニア王国、ベレーヌ王国、3か国によるブライ王国との戦争が決まった。グラムット帝国は無関心を貫き何も言ってはこなかった。