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19話 サムとロム

出発


今、オリオン家一行は王都に向かい馬車6台の大所帯で出発した。

同行者はオリオン家8人・デリック従士長。リック、マック、ユリ、他20名だ。

南部の盟主シュターデン侯爵領を経由して王都に向かう。

シュターデン侯爵領は、広大な耕作地帯だ。

南部全域から南部の富がすべて集まってきている。

オリオン領もすごい勢いで発展しているが、まだまだシュターデン侯爵領には届かない。

オリオン領が発展すると王都・西部、東部からの通り道なので、オリオン領が発展すればするほどシュターデン侯爵領が潤っていく。


シュターデン濡れ手に粟である。


数日後


シュターデン侯爵領に到着した。一行は宿に着いて一息ついていた。

「私とエレメラは、シュターデン侯爵に挨拶をしてくるから、お前たちは宿で休んでいるようにな。」

「「「「「「はい(は~い)」」」」」」


「マリア、町を散策に行きましょう。」

「いきましょ、イリア。」

二人は、早速出て行った。

「アレク、俺たちもいかないか?」

「暇ですし、いいですよ」

「兄貴たちは、どうする一緒にいくか?」

二人は顔を見合わせ

「行ってきなよ、私たちは休んでいるから」

「了解、じゃぁ、少し出てくる。」

カインとアレクは町に出ていく。



「ガラス窓が多いな」

「オリオンの商品ですね」

「ガラス窓っていいよなー、外から光が入ってくるから部屋も明るいし。」

「そうですね、以前は木窓でしたから閉めていると真っ暗ですしね」

「開けると、埃だらけになるし」

二人は、数年前を思い起こし笑いあう。


シュターデン領都は、シュターデン城を中心に都市が形成されている。

中央少し奥に城がありその周りに貴族街がある。その外側から商店街、住宅街、娯楽街、倉庫街などに分かれている。

アレクたちが泊まる宿もメイン通りからなる商店街にある。

メイン通りの商店街は、小売店が多く人で溢れている。

店も食料品店を初め、靴屋、古着屋、高級服店、武器屋、雑貨屋、本屋、宿屋、食堂、等々の店が連っている。

「魔化製品の店があるぞ」

「家の魔化製品じゃないですね」

「入って少しみてみよう」

アレクとカインは店の中に入り、色々と見て回る。

この魔化製品、あまり出来が良くないですね。まずオリオン製品と比べると魔力を通す回路が太くなったり、細くなったりしていて性能が悪いのだ。

アレクから見ると数年で壊れるなという感覚だ。

カインから見ると違いがわからない。デザイン重視だ。

「おっ、これアイロンか」

「オリオン魔化製品にはなかったよな」

「えぇ、商品にはしてないけど僕が作ったのは家で使ってるよ」

「そうなんだ」

「商品の種類は、当分の間は増やせないね。製造が間に合わないから。」

「家は忙しくてみんな目が死んでるもんな~~。」

「でも、お客様が来ると変身するようにキリッと変わるのは、面白いよ。」

「それ、・・多分金の為だな」

「うん、みんな使う時間がなくてお金がたまっているみたい」

「人が増えるといいなぁ」

「みんな休みが取れてないしね」

そんな話をしながら店を後にして歩いていると一人の少年が土下座している。


「お願します。弟がけがをしたんです。診てください。お金は必ず払いますからお願いします。

お願いします。お願します。お願いします・・・・・」


何度も何度も何度も頭を土につけお願いしている。

相手も困っている。

要は一人の人だけを無料で診れない。一人を無料で診ると他の人も同じように言ってくるようになるからだ。この人も悪い人ではなく、大勢の前で頼まれてしまっては無料で診れないのだ。

可哀そうだがどうしようもない。それにこの男、酷い怪我までは治せないようだ。

だからこの様にしか言えないのだ。


怪我は酷く骨が飛び出している。痛々しい。


カインが飛び出していく。

「俺は、怪我を治してくれる人を知ってるぞ。治してやる。」

土下座している少年は、突然の声にびっくりしたが一瞬で我に返り、「本当ですかお願いします。お願いします。」と何度も頭をカインに下げていく。

カインは、目で先ほどまで話していた男を見る。男はうなずく。

カインは、目線を少年に移し話しかける。


「じゃぁこの子を連れて行くぞ」

少年は弟を抱きかかえ、カインに近づいていく。カインは、この先の宿で診れるからと説明して連れていく。

「アレクすぐに戻るぞ。」

アレクは先に宿に向かった。

カインが少年と弟を連れて部屋についた。弟をベットに寝かしアレクが治療に入る。

まず、怪我の場所を水で洗い強い酒で消毒をする。飛び出している骨を元の位置に戻していく。これがかなり痛い。その後に治療魔法をかけていく。  


「ギャーーーーアァァァァーーー。」


ちょっと、いや凄く痛い。気を失うほどだ。気を失っていた。





「治ったよ」



アレクは一言だけ伝えた。



少年は唖然としている。すぐ治ると思っていなかったようだ。

カインが 「よかったな」 と声をかける。


少年は、カインに泣きながらお礼を言っている。


「ありがとうございます、ありがとうございます。」


「いいよ、いいよ」「それより何で怪我したんだ」


「あっ、まだ事情も名前も言ってませんでした。すいません。」


少年は、仕事を求めてオリオン領に向かっていたのだが、弟が馬車に轢かれてけがを負ってしまったと説明していく。


「・・・・・・俺は、サムといいます。弟はロムです。本当にありがとうございます。」

「よし、俺が雇ってやる。今手紙を書くから手紙を領主館にいる者に見せるように。」

「いいよね兄さん。」

「カインの好きにしていいよ。」

サムは呆けている。

「俺たちオリオン家の人間なんだ。」


「えぇぇぇぇぇーーーーーーー」


アレクは手回しがいい。

「部屋を取ってあるからその部屋で休みなよ。」「部屋代は払ってあるから大丈夫だよ。」


「後で手紙を届けるから。」

「ありがとうございます。本当にいいんですか。」「ありがとうございます。ありがとうございます。」


サムは、何度も何度もお礼を言って気を失っている弟を抱え部屋に向かっていった。



これでサムとロムの運命が変わっていく。











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