189話
オリオン王国王都ブレスト
ルドルフは、オリオン王国宰相として忙しい日々を送っている。オリオン王国国王のハロルドの不在が多いためだ。
ハロルドが仕事をしていない訳ではない。ハロルドはオリオン王国連合、盟主としての仕事がありオリオン王国の事はルドルフが一手に引き受けている。オリオン王国も最初は小国であった。だが今は大森林の開発が進み新しい都市、町、村が出来ている。村など名前もないうちに住人が1000人を超えてしまう。今では村は番号制となっている。町に昇格もしくは村長が名前を付けたときに登録となっている。村は2000人を超えると町に、2万人を超えると都市となる。基本は住人の人口となるが領主の地位も関係してくる。村から町へ、町から都市へと発展させた者を陞爵させなければならない。騎士爵を準男爵へ、男爵を子爵へとこれが大変な作業だ。機人がいなければこの作業だけでオリオン王国は機能麻痺状態であろう。
貴族としての資質を調べ、評判を調査するのである。最後の決裁をルドルフが行っている。
「今日はこれで終わりか。さすがに疲れたな。」
「宰相閣下、まだこちらの決裁があります。」
「どれだ」その書類は、マリアから上がってきた都市拡大計画である。王都ブレストには北部、南部からの人々の流入が途絶えない。今は都市への移住は認めていないのだ。これ以上ブレストに人が集まらないように制限している。だがオリオン王国の中心地としては拡大する国土に合わせ人々が集まってくる。そこで都市機能を分ける案が出てきたのである。王都ブレストの隣に居住と商店の住居用の都市を造り住人の受け入れをする事にしたのだ。もう一つ都市を造るのだ。ルドルフはめまいがしてきた。何しろ今の王都ブレストと同じ広さの物を造る計画書なのだ。無言でサインをするルドルフの姿があった。
オリオン王都ブレストは拡大している、今では7キロ4方に建物が建ち並び、大都市としての機能を果たしている。だが今では人であふれている。公園を造り、憩いの場としていた場所にも建物が今では建っている。きれいに区画をされているが、優雅ではない。都市に余裕がないのだ。それならばとマリアが都市の拡大計画を出したのだ。この大陸で一番の大都市にするつもりなのだろう。緑と公園、池迄あるこの計画、広い都市になりすぎるため移動は鉄道となる。ブレストの都市内だけを往復する鉄道を計画の中に入れている。
これが完成すれば100万人都市として大陸一の大都市となるだろう。
この拡大工事の為にまた人々が王都ブレストに集まる事をマリアとイリアしか知らない。
ノースオリオン王国
ノースオリオン王国、北部にある唯一のオリオン王国連合の国である。この国の王レオンはくつろいでいる。南部と違い、大国ローエム帝国があるために、ノースオリオン王国はそれほど忙しくはない。
「メアリー、ノースオリオン王国はやっと落ち着いたな。」
「そうですわね、ローエム帝国が安定しているからですけどね。」
「まぁ、そうはいっても南部に比べれば天国だよ。7公爵会議で兄貴を見たときには驚いたよ。」
「ルドルフお兄様は仕事を断りませんから大変ですわね。」
「そうなんだよな、こと仕事だと要領が悪くなるんだよな。真面目なんだよ。」
「ですがあなた、ノースオリオン王国も隣国がしつこくなってきています。」
「そうだな、うちより北の国々がこのノースオリオン王国を狙っているからな。」
「戦争になりますか。」
「いいやまだそこまでは行っていないな。ローエム帝国いるからな。」
ノースオリオン王国は南側にローエム帝国と隣接しているが北側に2か国と隣接している。右横はウェルソン王国とローエム帝国、左側は山とルービス王国と隣接している。
その2か国が発展をしているノースオリオン王国に狙っているのだ。だがノースオリオン王国の強さを理解している為に戦争にはなっていない。
その代わりに、嫌がらせが多くなっていた、関税を掛けたり、入国を拒否したりと、自国を苦しめる政策までやっている。レオンも今は静観しているがいずれは対応を迫られるだろう。
このあたりの国で静寂なのはウェルソン王国だそこが狙われた場合は一歩遅れるだろう。別の国であるウェルソン王国には干渉が出来ない。ローエム帝国ならウェルソン王国に干渉は出来るだろうが大国になりすぎて動きが遅くなるとレオンは予想している。
まだ少しは時間がありそうだが、敵がいる事は対策をしなければならない。レオンはワイバーン隊と空軍艦隊を3艦隊をそろえている。もちろん元騎士団である陸戦部隊が一番充実している。陸戦部隊は2万の兵を動員できる体制をとっている。それも日々訓練をしている兵なのだ。その辺の弱兵なら倍以上の兵相手でも勝てると自負している。
それにノースオリオン王国は応援を呼ぶことが出来るのだ。強敵でも防衛に数日耐えれば援軍が来てくれることが分かっている兵たちは余裕が有り強い。
北部でも動乱が起きようとしていた。大陸内での格差が出来た事が原因になる。ローエム帝国を中心に生活が豊かになり、ローエム帝国から離れるほどに貧しい生活となってきている。北部の国々はその格差を何とかしようと画策をしているのだ。
獣王国
獣王国は順調だ。獣王国宰相のグレイが来てからは獣人、エルフ、ドワーフ、人間とまとまりが出てきた。
一時は対立もあったがグレイの手腕はさすがである。問題を次々と解決していき、種族と問わず公平に接するために民からの信頼があるのだ。グレイがいるおかげでカインは楽をしている。カインは自分では仕事を大量にしているつもりだが普通だ。家臣たちも何も言わない、家臣たちも出来ないからだ。
そんな獣王国にも悩みはある。周りが敵国に囲まれている。
獣王国はグラムット帝国内からの独立した小国群とその他に5か国と隣接している。小国群を抜きにしても3か国は完全な親グラムット帝国である。いつ戦争になってもおかしくはないが今はグラムット帝国がオリオン王国に対して友好関係を築こうと動いている為に親グラムット帝国の国々も手を出さないのだろう。
安心は出来ないが、今は争いもなく獣王国は発展をしている。近隣の国も反グラムット帝国の国には多少の恩恵もいくようになっている。多種多様な獣王国も近隣に認められてきている。
カインが人間ということも隣国が認める大きな原因なのかもしれない。
獣王国は戦闘民族である。いつでも戦える。仕事は訓練と模擬戦。事務仕事はしない。
偏った獣人達であるがカインは何も言わない。自分が同じだからだ。
だから獣王国の文官たちは皆優秀だ。グレイを中心に少数で処理をしている、もちろんその中にカミュウが入っている。
獣王国の戦闘準備は出来ている。いつでも戦える体制である。