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188話

私は74歳のジジイだ。もう棺桶に首まで突っ込んでいる状態だろう。

所が先日、若返ってしまった。見た目は30代後半と言ったところだろうか、禿げた頭も今ではふさふさだ。これは嬉しかった。泣いた。思い出すとまた泣けてくる。毛が毛が毛があるのだ。昔は良くやった髪をかき上げる仕草、もう何十年も出来なかった。嬉しい、嬉しすぎる。感動だ。おっといけない、若返る条件があった。仕事を請け負う。まさかジジイに出来る仕事などあるわけがないと思っていた。だが城には大勢のジジイとババアがいた。何か知らない飴玉を飲まされ体中が熱くなり、突然髪がふさふさに、あ、いや体が動くようになった。自分の手を見た時は驚いた、手のしわもシミも無くなっている。信じられなかった。

それに仕事の条件もいい。町の代官だ。私は元子爵だ、今は子供が継いでいる。楽隠居ではない、妻も亡くなり一人で離れに住んで居る。たまに孫が遊びに来てくれる事が唯一の楽しみだ。今では私は邪魔者だ、体は動かないし頭も少しボケてきた、もう長くはなかっただろう。少しボケた私に孫は優しい、孫も貴族には残れない、後を継げるのは嫡男だけだ。

孫は3男だ、家を出ていくのだろう。そんなときに城への呼び出しだ、私は若返って帰ってきた。

孫は驚いていた。それはそうだろう。孫が生まれた時から、ハゲていた私だ。誰か分からなかったようだ。私は孫にSEオリオン王国へ来ないか誘う事にした。代官を10年勤めれば功績により男爵位を貰える。代官職の時でも準男爵としての扱いを受けられる。継承も認められている。孫は嬉しそうに一緒にやると言っている。これ程嬉しい事はもうないだろう。

私は孫に残してやりたい。爵位と領地をこの優しい孫に上げたい。まだ13歳の成人もしていない孫が将来の事で悩んでいる、私は聞くことしか出来ない。孫は優秀だ、それ故に兄たちから疎まれいじめられている。何とかしてやりたい。

ローエム帝国宰相閣下とオリオン王国王妃様が私たち老人にもう一度人生をくれたのだ。やらねばならん。

私と孫は、SEオリオン王国に到着をして驚いた。大都市だ。だが赴任先は廃れた町だと聞いた。まあそんなもんであろう。発展をしていけば男爵どころか伯爵も夢ではないと伝えられた。私は夢でも見ているのか。説明を聞いていると納得した。人材不足だ。そこで私は孫を推薦した。SEオリオン王国の役人は驚きもせずに受け入れてくれた。まだ成人前の孫を受け入れた、不思議に思い尋ねると役人は孫のステータスカードを私に見せてくる。私は孫の能力を見て驚愕した。すべての数字が130を超えている。孫も驚いている。役人は私と孫を隣同士の領地に配置してくれた。ありがたい事だ、これで孫にも会える、それに手助けもしてやれる。孫には領地経営を教えてやらなければならない。

役人は今後の事を説明してくれた。まだ領地が確定していない為移動もありうる、領地の再編成は時間がかかるのですぐにではないと説明をされた。私と孫はやれることをやるだけだ。何も問題は無い、私は赴任先に飛行船で赴き代官をする町に到着した。

思っていたより活気がある。その理由は直ぐに分かった。SEオリオン王国が支援をしている。公共事業で仕事を与えている、ここまで支援をしているのかと驚いた。SEオリオン王国は金持ちだ、資金力があるから出来る事だ。私は代官としてその手助けをこれからしていく。やろう、民の為、孫の為にだ。



私は、没落貴族。いいえ没落した元貴族なのです。以前にエレメル様に一度お会いしたことがありました。そのエレメル様から手紙が届きました。帝都の片隅で暮らしている私の居場所を知っていることが驚きです。私の家は元男爵家、小さいけれど領地もありました。両親と兄弟仲良く暮らしていましたが、数十年前のローエム王国動乱で爵位を剥奪され家族はバラバラになりました。子供は独立してこの帝都で働いています。夫も死にもう何もありません。もうお迎えの時を待っているだけとなりました。

そんな時、城への召喚状が届きました。何もやる事のない私は、動かない体を引きずりながら城までやってきました。そこには多くの老人たちがいます。昔にお会いしたことのある方もいます。皆さん足が震えていたり、手が震えています。もう長くはない方ばかりでしょう。その中の一人に私も入っています。

あっ、エレメル様とカトリーヌ宰相様がいらっしゃいました。何事でしょうか、こんな老人に用が有るとは思えません。ええーー。エレメル様お若い、若返っていますか。

驚きです、エレメル様は確か、60歳ぐらいであったはずです。どう見ても30後半です。

カトリーヌ宰相様の説明を聞いて驚きました、若返る事が出来る。衝撃の事実です、私は即決しました。

もう一度、人生をやり直せる。幸い私は領地運営を知っています、だから呼ばれたのでしょう。

私は、渡されたスキル玉を勇気をもって飲み込みました。一大決心でした、飴玉でも喉に詰まらせれば死んでしまいます。もうそのくらいに弱っているのです。近くの老人たちもスキル玉を飲むのを躊躇っている方が大勢います。皆さん飲み込む力がもうないのですね。ですが飲んだ方たちの歓声が後押ししてくれました。

体中が熱くなり、細胞が若返ってきます。肌に艶が出てきます、皺がなくなってきます、肌に弾力が戻ってきました。信じられません。こんなことがある何て本当に現実でしょうか。


私は、代官としてSEオリオン王国まで来ました。大都会です、帝都も大都会ですがまったく違います。建物は新しく洗練されていて町がとてもキレイです。ここに住みたいと思いましたが私はすぐに赴任地に行く事になりました。仕事です。代官として10年頑張らなければなりません。

到着した町は港のある小さな町です。私はこの港町と周辺の村々を管理するようにと言われています。以前の男爵領の数倍の大きさです。それを騎士爵が代官を務めるのです。信じられません。ローエム帝国ではありえないことです。SEオリオン王国からの代官職への絶対条件は差別をするなと公平にする事のみです。

後は代官の裁量で行います。戦争に負けた貴族達も民も仕事の上下関係はあるでしょうがすべて公平に物事を処理しなければなりません。大変な大仕事です。ですが私はやります、やりぬきます。若くなったこの体がやれると言っています。さあ、この町をこの国一番に暮らしやすい町にしましょう。


その後、この町はSEオリオン王国一の住みやすい町になった。


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