182話
SEオリオン軍はレゲルト王国王都直前の位置まで来ていた。
「作戦を指示する。ライト軍は、城内の制圧。マイケル軍は王都制圧が主任務だ。アレク隊は城門の出入りを止めろ。空兵隊は王都の出入り口を固めろいいな。小型艦は魔力機関弾で王都防衛壁にいる兵を殺せ。 王都民には危害を加えるなよこれは厳命だ。」
「「「はい。」」」
「ワイバーン隊、王都の門を破壊するぞ。用意しろ。破壊後は上空で敵兵を見つけて殺せ。」
「了解しました。」
「ワイバーン隊いけ。」
ワイバーン隊は、王都にある正面の門に向かい飛び立った。正面門にいたレゲルト兵達はワイバーンを見て顔が引きつっているのが遠目でも分かるほどだ。ワイバーンは1頭ずつが門に破壊攻撃をして離脱していく。1頭、又1頭と攻撃を加えていくと門は26頭目の攻撃で吹き飛んだ。27頭目のワイバーンは心なしか不満顔に見えるのは気のせいだろう。搭乗員は完全な不満顔をしている。
ワイバーン隊は王都上空を旋回しながら敵兵を探す任務に変わっていく。
門の破壊を確認すると。アレク隊、空兵隊、SEオリオン軍が王都へむけて走り出す。
「いくぞーーーー。」
「おおおおおー。」
走り出した軍に合わせて小型艦も動き出す。王都を守る防壁にいる兵を一人ずつ殺していく作業に入る。小型艦から放たれる魔力機関弾は戦闘ではない。敵の兵は何も出来ないからだ。ただ見ているだけ、隠れているだけ。逃げているだけなのだ。
一番最初に門に到達した部隊は空兵隊である。空兵隊は門を守る兵を次々と殺していく。空兵隊の多くは魔法特化の隊員である剣を使う者もいるが少数だ。空中から飛び降りる事の多い空兵隊は身体強化で接近戦をするものが多い。手にガントレットを装着して殴り倒すやり方が空兵隊の戦い方になっている。
戦闘スタイルは自由であるが空兵隊に入ると、色々な種類のガントレットで戦闘訓練をさせられる。
鍵爪が付いている物、剣が飛び出す物と種類は豊富だ。
そんな空兵隊は敵兵を倒し終えてしまった。敵兵50人を戦闘時間3分ほどで倒したのだ。
門を抜けたアレク達は、マイケルの軍部隊は王都に散らばっていく。残るライト軍部隊とアレク隊は城に向かって走っていく。高速で移動するアレク達を敵兵たちは阻止できない。一瞬横を通り抜けるともう兵は死んでいる。街中を走るアレク達の前に道路を塞ぐようにバリケードを作り敵兵が塞いでいる。だがアレク隊は身体能力を活かしバリケードを飛び越えていってしまった。続くライト軍部隊も飛び越えていく。
一気に城門まで来たアレク達は城門を破壊して城内に侵入する。城門はアレク隊で塞ぐが二つあるためもう一つの城門に向かいアレク隊の半数が駆けていく。ライト軍部隊はそのまま城内に駆け込んでいった。「うおおおおーー。」大声とともに戦闘音が聞こえてくる。
一人残されたアレクは機人2体とゆっくり歩きながら城の中に入っていく。
城内では至る所から戦闘音が聞こえてくる。
「キン、ギャー、バサッ。あああー、いやーぁぁぁ、キン、キン、ギャー。」
アレクが城の中を歩いていると前からガチャガチャと音を立てながら走ってくる一団がいる。
アレクめがけて駆け寄ってくると鎧に包まれた騎士たちはいっせいに攻撃を仕掛けてきた。だがアレクの前には機人2体がいる。機人は騎士に対し機人が持つ剣で鎧ごと斬ってしまう。胸から上と胸から下が二つに分かれた騎士の顔は目を見開き驚いた顔をしていた。体が二つに分かれても数秒は生きているようだ。驚いた顔の後に絶望したような声を出して死んで往く。何を言っているのかは分からないが叫び声なのは確かだ。
そんな最後を見ていた騎士たちも同じ運命を辿っていく。8人の騎士たちは1分も掛からずに死んで往った。
アレクスは城の中央に向かい歩いていく。
戦闘音も次第に無くなっていく。敵が少なくなっているようだ。
アレクは無人の城の中を歩き広間に出てきた。誰もいない広間は広く、この国の繁栄が良く分かる。アレクはその繁栄を壊す存在なのだ。アレクの正義とレゲルト王国の正義は違う物だ。どちらが正しいかは分からない。未来の人が判断をしていくからだ。
アレクは広間を眺めていると、数人の人達が広間に入ってきた。逃げまどっているうちにこの場所に来たようだ。アレクはその人たちに声を掛ける。
「その者達よ、降伏すれば命は助かるぞ。」
「え、降伏は認められるんですか。」
「ああ、降伏の意思を示せば認めるぞ。」
「こ、こ、降伏します。」
「そこにいる、6人全員が降伏するのか。」
6人は顔を見回し頷いている。
「はい、全員が降伏します。」
「ではこの場所を動くなよ。そしてこの青い布を持っていれば攻撃はされない。」
アレクは6人に青い布を渡す。6人はその布を手に持ち床に座り込んでしまった。安堵したせいで緊張が解けたようだ。
そうしていると次々と人がやってくる。アレクは同じ事を伝える。もう数十人の人々が部屋の中心に固まって座り込んでいる。
1時間もたった頃であろう。ライトの部隊が広間にやってくる。アレクの姿を見つけると報告に来た。
「ご報告します。城内の敵はほぼ壊滅させました。」
「王族はまだ発見できておりません。」
「そうかご苦労。引き続き王族を探せ。」
「はっ。」兵はアレクに一礼をすると走って去っていった。
アレクは降伏した者たちの中に王族はいるかと尋ねる。だがこの中にはいないようだ。王族たちは城の奥の王族専用の居住地区に住んでいる為めったにここまで来ることがないようだ。
数十分経つとライトと数人の隊員たちが広間にやってくる。ライトたちは身なりの良い服装をした者を連れている、この者たちが王族であろう。
アレク前に4人の者が跪かされていた。
「この中に王はいるか。」
「余がレゲルト王国の王だ。」
「そうかお前が王か。なぜメルス王国とルオス王国へ侵略したのだ。」
「そんなことは分かり切っているだろう領土を取るためだ。他にあるか。」
「王よ。そんなことが成功するとでも思ったのか。」
「当たり前だ、我が軍は精強だメルスとルオス軍など赤子の手をひねるように簡単に滅ぼせる。」
「お前、言っている事と今の立場があっていないぞ。」
「・・・・・・」
「まあ良い。戯言はここまでだ。王よ。お前の命一つで他の王族の命を助けよう。」
「・・・・・・」
「どうした、家族の命が助かるのだぞ。普通なら喜んで死んで往くぞ。」
「・・・・・・」
「父上、死んでください。そうすれば私たちは助かります。」
「お、お前は父に死ねと言うのか、この国の王だぞ。」
「父上が死んでも、まだ私がおります。この国の王太子である私が。」
この近くにいるレゲルト王国の者達とアレク達は、呆れながらこの会話を聞いていた。アレクは思う。こいつらダメだ。
アレクは二人を黙らせ他の4人に話しかける。
「そこの者達はどうだ。」
「あ、あの私が死刑で構いません。ですからこの子たちだけは助けてください。」
母親だろう。その女性はまだ幼い子供二人を抱えて震えている。
残りの一人である男性は堂々としていた。
「あなたはこの女性と子供二人の為に死ねるか。」
「ああ、死のう。娘と孫の命が助かるのなら安いものだ。」
「あなたは誰ですか。」
「あぁ、すまぬ。まだ名乗っていなかった。わしはレゲルト王国の先代の王だ。」
「そうでしたか。私はSEオリオン王国の王、アレクスと申します。あなたが王のままならこんな状態にはならなかったでしょう。」
「・・・・・」
「あなたと王妃と子供二人の処遇は後日話をしましょう。悪いようにはしません、ご安心ください。王と王太子はメルス王国とルオス王国への侵略戦争の責任を取ってもらう。連れていけ。」
「嫌だぁーーーー。助けてくれーーーー。ああああ、いやーー。」
「余は王だぞ。余が余が正義だ。余がーーー。」
アレクは城内を掌握した。