180話
キースの話は興味深いものであった。
別の大陸があり国もある。文明としては魔法が発達している分こちらが若干高いようだが、大して変わらない。大陸の広さはこちらの方が広いようだ。
「ほう、なるほどな。戦争はしていないか。良いことだな。」
「はいタンドラ大陸では戦争はここ100年以上ありません。」
「よくわかったキースよ楽しかったぞ。」
「お、お待ちください。交易をお願いします。」
「交易と言っても買う物が無ければ成立せんだろう。今の品では買えんぞ。」
「そ、それは分かります。ゼスト王国がSEオリオン王国の品をか、買います。」
「買うかそれならテルセ、手配してやれ。」
「はい。」
「キース殿、支払いは金ですか銀ですか、SEオリオン王国ではどちらでも取引が出来ますのでご安心ください。」
キースは焦っていた、金が無いのだ。多少は金もあるが足りない。だが交易品に興味がある。見てみたい、キースは黙ってテルセに着いて行く。
そこには、交易用に展示された品々が並べられていた。魔通機、魔化製品、等々巨大な倉庫に綺麗に並べてある。見たことも、聞いたことのない品々が目の前にある、テルセが品々の説明と使い方を教えている。
キースは「ごくり」と唾をのんだ。欲しい、全て欲しい。持ち帰れば一生遊んで暮らせるほどの儲けになるだろう。
キースはテルセに金がないことを伝える。交易品と交換のつもりでいた事。金は持ち合わせが少ない事等を説明をする。テルセも困ってしまった。金が無ければ売れないからだ。
テルセはアレクの所に戻っていく。
「アレクス様、問題です。キース殿たちは金を持っていません。」
はっきり言うテルセに、キースは俯きながら情けない顔をしている。交易に来たのに金がなく買うことが出来ない。
「はぁ何を言ってるんだ。金がないなら買えんだろう。」
テルセがアレクに交易品の事を説明している。
「なあキースよ。蛮族相手にでも商売をするつもりだったのか。」
「・・・・・・」
「何か売れる物はないのか。」
「交易品で持って来ている物はあれだけです。」
「・・・・キースよ。何がほしいのだ。」
「じ、次回の為に色々な品を2品ずつ欲しいです。」
「お前、欲張りじゃないか。幾らになると思っているんだ。」
「・・・・・何とか次に金を持ってきます。」
「お前は馬鹿か、初めての取引で金を持っていない者を誰が信用する。」
「・・・・・」
「お前の宝はなんだ。」
「宝ですか。船です。」
「船は要らんな。おぉ、そうだ航海していたなら海図があろう今回はそれを代金として売ってやろう。」
「か、海図ですか。」
「そうだ海図だ。お前は誤解している、我らは本来は海図などは要らんのだ。うちの船は飛行船だからな。」
「そうでした、普通の相手と間違えましたご容赦ください。」
「いいさ、投資だと思っておこう。」
「あ、ありがとうございます。」
アレクはキースから海図を手に入れる。欲しくとも手に入らない物だ。普通は手放さない命より大事な物なのだ。海の地図それは、未完成な世界地図だ。
キースはSEオリオン王国の品々を大量に、船に積み込む作業をしている。嬉しさが溢れている。
国へ帰れば、大儲けとなるであろう事を思うと自然と顔がほころぶ。
それにしてもSEオリオン王国は凄い国だ。こんな品々を作れるなど信じられない。だが実際に目の前にある。そんな事を思いながら積込み作業を監督していると大空にワイバーンの群れが近づいてくる。キースは慌てふためく。作業を中断して船の中に逃げ込むが、周りは何事も無いように平然としている。自分達のみが慌てている事に気づき近くの者に聞いてみる。いつもの事だと言われる。
完全に意味不明になっていると、テルセが来たので聞いてみる。
「テルセ殿、あのワイバーンの群れは大丈夫なのでしょうか。」
「ああ、あれはうちのワイバーン隊ですから心配はいりません。」
「え、ワイバーンを飼育しているんですか。」
「ワイバーンもドラゴンもいますよ。」
「ええええええ。」
「北の方角を見てください。」
キースが北の空を見上げるとアレク艦隊がこちらに向かってきている。
キースは大口をあけている。我にかえり、「な、何なんですかあれは。」
「アレク様の艦隊ですよ。アレク様を捕まえに来たのでしょう。すぐに逃げますからあの方はね。」
それは面白い光景だった。ワイバーン隊がガレオン号の離陸を妨げている、攻撃はしていないが乗組員を威嚇している。その隙に各艦隊の船がガレオン号を包囲して飛び立てないようにしている。ガレオン号の真上にはユリの旗艦がいるのである。
上空の旗艦はら拡声器でユリが喋りだした。
「師匠、仕事です。すぐに戻ってください。」
「ユリこれはひどいのではないか。私がいつ仕事サボった。」
「師匠、自覚は無いのですかいつもサボっていますよ。」
「・・・・王だし少しはサボるだろう。」
「言い訳は結構です。すぐにSEオリオン王都に戻ってください。」
「・・分かった戻る。」
ガレオン号とユリの艦隊はSEオリオンの方向に消えていった。
「テルセ殿、あれは何なんですか。」
「んーー。うちの恥になるからな。まぁ、もう見てしまったしな。アレクス様はすぐサボります、仕事が嫌で逃げだすんですよ。それを今追いかけてきたのがユリ伯爵の艦隊ですね。」
「いいんですか、王様を追いかけて仕事しろなどと言っては拙いのではないですか。」
「ああ、SEオリオン王国は大丈夫ですよ。それにあれは楽しんでやっていますから。」
「アレク様が本気でしたら逃げています。」
「それよりキース殿、今度来るときは金を持ってこないと売れませんから。」
「帰り着いたらまたすぐにここに来ます。大船団で来ますので宜しくお願いします。」
SEオリオン王国王都オースト
「アレク様お待ちしてました。」
「メルス王国とルオス王国の戦況がよくありません。」
「どういうことだ。」
「このままですと両国が潰れかねません。メルス王国とルオス王国の南にあるレゲルト王国がメルス王国とルオス王国に侵攻しました。」
「三つ巴で戦争しているのか。」
「三つ巴ですが国力が違います。メルス王国とルオス王国両国合わせてもレゲルト王国には敵いません。」
「弱り切っている所に侵略をしてきたってことか。えげつないな。」
「その侵略の影響で、SEオリオン王国に難民が殺到しています。以前から難民は来ていましたが、急激にこの侵略で増えています。」
「うちが出るわけにもいくまい。」
「そうなんです、だから困っています。」
「対策会議をするぞ。皆を集めろ。」