176話
SEオリオン王国王都オースト
「ヘレン。」
「はい。」
「ヘレンにSE銀行の頭取を命ずる。私の秘書官と兼任とするから頼むぞ。」
「はいお受けいたします。民の為に、精いっぱい頑張ります。」
「SE銀行は重要な事業だ、民に金を流して使わせる。金の流れをつくるのが仕事だ大変だが頑張ってくれ。」
「私は運河港で、棟梁と打ち合わせに行ってくるから後は頼むぞ。」
アレクは運河の港に向かう。これは海に向かうための定期船を建造させるために船大工に相談するためだ。
「棟梁、やはり川と海では同じ船ではダメか。」
「王様、川の船は船底を平らにしているんです、だけど海用は船底が深いんですよ。大きな違いです。
」
「そうだよな。浅瀬ならいけるか。」
「浅瀬なら問題は出ないでしょう。大丈夫です。」
「そうか、一度海まで行ってくれないか、弟子でも誰かを海の港で船大工の工房をやらせてくれないか。」
「分かりました、王様の頼みじゃ断れません。」
アレクは船大工の棟梁との話が終わり港をブラブラしている。そうすると面白そうな声が聞こえてくる。
「俺は成り上がるためにここに来たのだ。」
「いいからステータスカードを見せろ。登録はローエム帝国自治領か。よし通っていいぞ。」
「は、話を聞けよ。」
「忙しいんだよ、早く行ってくれ。後ろが閊えているんだ。」
アレクは面白そうなので声を掛けてみることにした。
「そこのあなた。成り上がるために来たのですか。」
「おお、そうなんだよ、ここに来れば成り上がれると噂に成っているんだ。」
「へー。噂に成っているんですか。」
「そうなんだが成り上がり方が解かんないんだ。」
男は肩を落としている。アレクは面白くなりさらに質問を続ける。
「あなたは何故、成り上がりたのですか。」
「よくぞ聞いてくれた。うちは2代前まで貴族だったんだ。ローエム王国で没落してな、爺さんの代で平民になってしまったんだ。そこで俺が又貴族に返り咲くことにしたんだ。」
「へー、そうなんですか。どうやって貴族に返り咲くのか、方法が分からないってことですか。」
「そうなんだよ、今まで鍛えるために迷宮で冒険者をやってきたんだ。運よくスキル玉も多数手に入れた。実力はあるつもりだ。」
「ステータスカードを見せてくれるかな。内容によっては王国の人を紹介するよ。」
「ほ、本当かこれ見てくれ。」
アレクはその男、レイド・スタンダードのステータスカードを見てみる。思ったほど悪くない。実力はある。スキル玉の影響もあるが戦闘系ばかりが高い。これで知力が上がれば人材的には申し分ない人材だ。アレクは1つのスキル玉を取りだし男に渡す。
「このスキル玉を飲んでみて。」
男は「おっ、スキル玉だ。」といいすぐに飲み込む。「な、な、なんだこのスキル玉は変だぞ。熱い。」
男はハーハー言いながら少しずつ落ち着いていく。
「な、なんですかあのスキル玉は普通のスキル玉ではないですよ。」
男は話し方が変わったことに気づき自分で驚いている。
「お、俺はどうしてしまったんだ。」
「レイド、お前の能力を底上げしたんだ。後はお前の努力次第で力が決まるぞ、努力を忘れるな。」
「あ、あなた様はどなたですか。」
「私はこの国の王だよ。」
「こ、これは大変失礼いたしました。」
「いいんだよ、成り上がりたい奴は嫌いじゃない。お前にチャンスをやろう。
「チャンスですか。」
「そうだチャンスだ。レイドお前に仲間はいるか。」
「それはいます、冒険者は一人ではできませんから。」
「なら仲間を連れてこい。一緒に貴族にしてやる。貴族も一人では仕事が出来んからな。」
「10日後、城に仲間と一緒に来るのだ。よいな。」
アレクはレイドを残し去っていった。残されたレイドはあっけに取られている。先程の棟梁がレイドに話しかける。
「あんた運がいいな、王様に声を掛けられるなんて普通ないぞ。あんたには運がある、大事にするんだな。」
レイドは、はっとする。「俺は運がいい。」そうかも知れない、迷宮に潜ってスキル玉を何個も見つけた。冒険者たちが必死に探しているのに何となくで見つける事がある。
「そうだな運がいいなら、運に乗らないといけないな。」
レイドは10日という日数を考える、迷宮都市に往復、飛行船を使えば時間的には足りる。だが王様がそんな単純な事でチャンスと言うだろうか。貴族の仕事とはなんだ。領地を管理する事だと思っていた。まぁそれも仕事の一つだろうが今回は違う。何だ、「仲間を連れてこい。」ここだな。レイドは歩きながら独り言をつぶやいている。飛行船に乗りこみ迷宮都市に戻る事にしたのだ。
レイドは迷宮都市に舞い戻った。急いで冒険者ギルドに行く。その途中で冒険者ギルド長セシルとばったり出会う。「レイドさん。南部に行ったのでは無いのですか。」
レイドは、セシルにSEオリオンでの話をしたのだ。セシルなら相談に乗ってくれると思っての事だ。
「そうですか、アレクス様とお会いになられてチャンスをくださると言われたのですね。」
「そうなんだ、ギルド長は王様の事は良く知っているんだろう。どう思う。」
「私にも正確に読み取る事は出来ません。だけどレイドさんが得意な事を想定した。仲間を集めた方が良いと思うわね。アレクス様もステータスカードを見たのでしょう。レイドさんが戦闘向きの人だと分かっているでしょう。」
「そうだな、ありがとう。ギルド長参考になったよ。」
レイドは、旅立つ前に別れた仲間の所に顔を出す。
「レイドお前、出ていったばかりじゃないかもう戻ってきたのか。早すぎだろう。」
近くにいた冒険者たちは大笑いで迎えていた。
ハハハハハハ。ハハハハハーー。
レイドは南部でのことを冒険者たちに話して聞かす。
「戦える仲間を集めたい。」
冒険者の一人が、レイドに声を掛ける。まだ若い青年だ。
「レイドさん、お久しぶりです。」
「おおテルセか、久しぶりだな。何か思う事があるのか。」レイドは勘がいいようだ。
「はい、アレクス様は、部隊連れてこいと言っている様に考えますね。」
「テルセは王様の事を知っているのか。」「はい、俺はここの孤児院で育ちましたから。いま冒険者をしていられるのもアレクス様のおかげですよ、普通なら飢え死にしていました。」
「どうしてそう思うんだ。」
「俺も正確には分かりません、だけどレイドさんに文官を集めさせる訳はありません。戦える者達を集めれば多少意向と違っていても雇ってもらえますよ。これは確信があります。アレクス様は戦闘能力の高い人はみんな雇っていますから。家の孤児院の大半はアレクス様の所にいますよ。俺みたいに冒険者もいますが、戦闘系と文官系は貴重ですからね。」
「テルセ。一緒に来てくれ。頼む。」
「えええ、俺冒険者が好きなんですよー。」
「お前はまだ若いだろう、2年、いや3年だけでも一緒にやってくれ頼む、お願いだ。」
「はーー。何でこうなるのかなー。」テルセはアレクスから誘われていたのである。だがテルセはこの町が好きなのだ。義理と人情の迷宮都市。暖かいこの町が好きなのだ。
「1年です。アレクス様にもそう言いますからね。」
「まず南部に行っても良い人の中から戦闘部隊を作りましょう。少数でも戦闘力があれば問題はないでしょう。」
「あ、俺行きたい。」「俺も、俺も・・・・」
冒険者たちの中で話を聞いていた者たちが次々と手を上げる。次の日には町中で噂になっていた。