17話 ハロルドとエレメル
オリオン領の領主館、そこは、人で溢れかえっている。
移住者の受付・審査、日雇い労働者の手配、各工事の手配、商業許可・裁判、等々で人が途切れることがない。
そんな領主館の奥に、オリオン領領主、ハロルド男爵とエレメル男爵夫人の二人が、領主執務室で仕事をしている。
この領主執務室は広い。以前の領主の家では、ハロルドの仕事部屋は、4畳半の部屋に机と4人掛けのテーブルを置いて、仕事をしていた。これで十分だった。何しろお金が無く、開発行為が出来なく、商人も来ないので仕事がなかった。
だが今は違う、今は4倍もの大きさの部屋なのだ。
凄いぞハロルド、よく頑張った、感動した。
「ハロルド、この計画は保留にしましょう。こちらの嘆願書は、マリアに回して・・・・・」
「仕事の終わりが・・・・見えないな。以前はのんびりしていて、よかったなぁ。」
「のんびりしてたのでは無く、仕事が無かったんですよ。」
「そうとも、言うな。」
「あっ、その裁判は、レオンに回してください」
「これは、エレメルで、修正しといてくれ。」
「・・・」 「・・・・・・」
「・・・・・・・「 「・・・」 等々
色々と、忙しいハロルドとエレメルだが、この二人解決できない悩みを抱えていた。
成人している、子供たちの結婚だ。
結婚相手には困ってないのだが、オリオン家には秘密が多く、相手の選定が難しい上に王家が結婚に待ったをかけている。
王家は、オリオン家を取り込みたいのだ。
王家も、色々と作戦を考えているようだが、今はすべて待ってくれと頼みこまれている状態なのだ。
ハロルドとエレメルは、早く魔法を表に出したくて仕方がないのだ。魔法が発表されれば、子供たちの争奪戦が予想されるが結婚をさせることが出来るようになる。確実ではないのだがそう信じているのだ。
ハロルドとエレメルは、本人の好きな人と結婚させてやりたいと思っている。
「魔法の件は、何人ぐらい知っているの」
「王家が3人と宰相閣下の4人だな。」
「漏れてないの」
「漏れてない、公開時まで4人だけだ」
「んっ、お偉いさん4人で公開の準備できるの?」
「準備で、重要なところは家が手伝う。」
「あ・な・た。それは、一番最初に伝える、こ・と・よ。」
「うっ、すまん。」
「まぉ、家は7人いるから、何とかなるでしょ」「久しぶりの王都だわ、ふっふっ」
「そうだな、6人いるし、大丈夫だろう」
お二人さん、算数できるのか。
王家との話し合いの中で、ハロルドは、ある程度の予想している。
王家は、国益の為に自分の陞爵、子供たちに新たな爵位を与えて外国に取られないようにと画策している。
王家は、オリオン家を魔導士として扱い、魔法使いを導く者としている。
何しろ、オリオン家はハロルドをはじめ家族全員が魔法を使えるのだ。この世界ではありえないことなのだ。
功績が大きすぎて、王家も困っているようだ。
ローエム王国だけではなく、この世界への功績なのだから。
開発者のアレクは、お気楽だ。さっきお菓子をたべていた。何も考えていないようだ。
考えているのだが、生活の向上を考えているのである。他は目にも入っていない。
魔法が公になれば、オリオン領は今以上に忙しくなる。
魔法を習いに、人が押し寄せてくるのは予想できる。
その対応の為に、急ピッチで拡張工事を行っているのだ。
街道整備も、進められている。今までは、馬車一台の幅しかなかった道が、今は馬車三台が通れるように整備を進めている。
魔法公開後は、王都からオリオン領間の街道整備を行う事になっている。
街道を通る。各領主への了解は得ていないが、拒むものはいないと思われている。
拒める領主などいない。万一拒めば、王家・貴族から、集中口撃を受けるのだから。
「問題は、私の親ね。」
「それは、王家とも話している。公開後に優遇することになっている。」
「まぁ、そうなの?」
「オリオン家、唯一の親戚だからな。王家も、味方をつくりたいのだろう。」
「そうよね、このままだと、家が圧倒的に強くなってしまうわね。」
「その辺は、うまく乗り切るしかない。この状況は、変えられんからな。」
この二人の悩みは尽きない。