168話
アレクはルーアニア王国王都に向かっていた。
「王に会いたい。」
「誰だお前は、会える訳がなかろう。帰れ、帰れ、帰らぬと捕まえるぞ。」
城の衛兵はアレクの顔を知らない、アレクも名乗っていないのだ。当たり前の反応だろう。
アレクは、衛兵を気絶させた。さすがに殺すことはしない。何事も無かったように城の中に入っていく。それを見ていた他の衛兵がアレクめがけて襲い掛かってくるが、アレクはすべて倒していく。城中が騒ぎになりアレクの周りを囲んでいく。そんなことは気にしない。襲って来る者を倒しながら進んでいく、城の大広間に出たところでアレクを知る者がいた。
「あ、あなたは、SEオリオン王ではありませんか。」
「私の事を知っているのか。なら丁度良い。王に会いたい。」
「す、少しだけ待っていただきたい。」
「ではこの場所に居るので早く頼む。」
アレクは、近くにある椅子に座り静に待っていた。だが周りには衛兵が廻りをぐるりと固め逃さないようにしていた。アレクは気にすることもなく自然としている。
しばらくすると、男が戻ってきた。
「アレクス殿、こちらにおいで下さい。陛下がお会いになります。」
「そうか。」
アレクはその男に着いて行く。
貴賓室らしい部屋に案内されてその場で待っていると、ルーアニア国王たちが部屋に入ってくる。
「アレクス殿。城での騒ぎは問題ですぞ。」
「王よ。ルーアニア王よ。SEオリオン王国は貴国に対し宣戦布告を行なう。」
突然のSEオリオン王国からの宣戦布告それも国王自らである。ルーアニア王は言葉が出ない。
「な、なぜルーアニア王国に宣戦布告するのだ。」
「なぜ、これは異なことを。ルーアニア王国がオリオン王国への内政干渉をしたであろう。理由は十分だろう。あまり舐めているからこうなるのだ。皆殺しにするからな。」
「ま、待ってくれ。」
「もう遅い。」
「待ってくれ、アレクス殿。頼む。待ってくれ。」
ルーアニア王と同席している者達も声を出せない。出したくない。アレクの強さを知っているからだ。
「取り下げる。オリオン王国に対しての要求をすべて取り下げる。」
「王よ。ルーアニア王国がオリオン王国に対し内政干渉したことは事実だ。取り下げようと事実は変わらんよ。」
「た、頼む。宣戦布告だけは止めてくれ。」
「心配するな。殺すのは王族と貴族のみだ。民は殺さないぞ。」
「い、いや、どうか宣戦布告は待ってくれ。」
「今回、オリオン王国に対して内政干渉を提言したのは誰だ、王が提言者か。」
「・・・・・・」
「答えたくなければ構わんよ。」
「待ってくれ。内政大臣だ。」
「その者を連れてこい。今日中にこの場に来れる貴族もすべて呼べ。夕刻まで待つ。」
「わ、分かった。」
「そうだ一つ言っておこう。私を殺すなら来てみろ。良い余興になるからな。」
「・・・・・・・」
ルーアニア王国は貴族を中心に大騒ぎとなっている。王と大臣たちが集まり話し合いをしている。
「大臣どういうことだ。話が違うぞ。」
「・・・・・」
「宣戦布告されたのだぞ。それもSEオリオン王国にだ。ルーアニア王国は滅びるぞ。」
「も、申し訳ありません。読みが甘かったようです。」
「読みが甘かったで済むか。」
「陛下、貴族達に登城を促しましたが誰も来ません。仮病をつかい登城を拒否しております。」
「・・・・・ど、どうする。」
「・・・・」
「戦いましょう。彼らとて同じ人間です。勝てるかもしれません。」
「お前は知らないのだな。アレクス殿一人でこの国の人々を殺せる力があるのだ。」
「まさか、そんなことできるはずがありません。」
「ルーアニア王国が3か国から侵略され、これを救ってくれたのがアレク殿だ。お前に3か国を倒せる力があるのか。」
「・・・・・・」
「アレクス殿は今のSEオリオン王国であるオースト王国を滅ぼしているのだ。」
「・・・・・」
「何とか宣戦布告だけは取り下げてもらわねばな。」
「誰ぞ、何か案はないのか。」
「ミルトン王国に頼っては如何でしょう。」
「馬鹿か、今迄オリオン王国に対して散々文句を言って、ミルトン王国からやめるように提言されていただろう。それを無視していたのは我らだぞ。」
「こ、降伏しましょう。そうすれば戦わなくてよくなります。」
「降伏か。滅びるよりはましだな。」
「そうです。宣戦布告は宣言していますから、アレクス殿も取り下げはしないでしょう。ですから宣戦布告を受諾してすぐに降伏するのです。そうなれば戦って負けたわけではありません。条件を付けられるでしょう。他所の割譲など滅びるよりはいいでしょう。」
「そうだな。それで行こう。大広間での準備を頼むぞ。失敗は死だ。完璧にやるぞ。」
「「「「はい。」」」」
夕刻
「王よ。貴族どもが少ないようだがどうした。」
「仮病が悪化しているのだ。」
「・・・・・仮病か、まぁ仕方あるまい。」
「アレクス殿、SEオリオン王国からの宣戦布告を我がルーアニア王国は受諾する。」
「ほう、受けるか。いい度胸だ。」
「アレクス殿、ルーアニア王国はSEオリオン王国に降伏する。」
「・・・・・上手いことを考えたな。」
「生き残るために考えたのだ。戦いもしていないのだ。条件は付けさせてもらう。」
「そうだな。仕方ない。降伏した者とは戦えんしな。」
「では今は停戦としておこう。こちらも忙しいのでな。ではまたな。」
アレクは、去って行ってしまった。残された者は唖然としている、いや安堵している。
「の、のりきった。」
「陛下ま、まだ終戦交渉が残っております。なるべく良い条件を引き出しましょう。」
「無理であろう。アレクス殿は、かなり機嫌が悪くなっていよう。ベレーヌ王国の戦争を邪魔したのだ。」
「・・・・・・」
アレクはガレオン号に乗り込み直轄領に向かっていた。
「アクラー、これから戦だぞ。」
「師匠、何か嬉しそうですね。」
「そ、そうか普通だな。」
直轄領に着いたアレクは、ユリに艦隊の出動指示を出した。
「まずは国境のレンズ軍を叩くぞ。久しぶりの魔法使い隊の出番だな。」
「師匠、その隊の名前は止めませんか。気が抜けてしまいます。」
「いいネーミングだと思うんだけどなー。」
「師匠、センスないですよ。」
「・・・センスないのか、知らなかった。」
「いや、いい名前ですよ、ねえ、アクラー。」
「そうですよ、師匠、ユリ姉弟子の言う通りですよ。」
少し機嫌の直ったアレクは戦闘準備に入る。
「国境付近で戦闘をしているだろうから、回り込んで後ろから攻撃する。直轄領を抜けてレンズ領に入り敵後方に回り込むぞ。各自気合を入れて行けよ。」
「「「「はい。」」」