167話
3か国の交渉は順調に進んでいく。領地はSEオリオン王国が宣言をしている為、SEオリオン王国となった。ただし鉱脈の権利を三等分にしたのだ。未開発拓地にある鉱山すべての権利を三等分で分けた。
「ユリ、この未開発地はSEオリオンの直轄地とする。ユリの艦隊で防衛も頼む。艦数を倍以上にするから、分艦隊を組織してくれ。」
「はい了解しました。」
「パウル。」
「はい。アレク様」
「パウルには、この地の執政官になってもらうぞ。ユリと相談しながらこの地を治めてくれ。」
「はい全力でやります。」
「師匠、質問してもいいですか。」
「どうした、アクラー。」
「レンズ王国は未開発拓地を狙ってきませんか。」
「狙ってくるだろうな。金のなる木が目の前にあるんだ、自国もと主張してくるだろうな。」
「だから防衛強化なのですね。」
「いや、未開発地のは来ないだろうな。SEオリオン王国の領地宣言をしているからな。来るならベレーヌ王国に侵攻するだろうな。ベレーヌ王国とは国境問題がある。国境問題を大義名分として侵略するだろうな。そしてベレーヌ王国の権利を取るつもりだろう。私ならそうするかな。」
3か国の調印式は盛大に行われた。場所はミルトン王国王都で各国を招待して大々的に宣伝をしたのだ。周辺諸国のすべての国がミルトン王国王都に集まった。各国の大使たちもこの機会を逃す者かと積極的に外交活動を行っていた。
「アレク。」
「カイン兄も来てくれたんだ。ありがと。」
「アレクお前、又戦争するのか、そん時は俺を呼べよ。俺も戦いたいからな。」
「・・・・カイン兄、好きで戦争する訳ないでしょう。仕方なくですよ。でも何でカイン兄が戦争になると思ったの。」
「周りが言ってるのを聞いたんだよ。みんな言ってるぞ。」
「・・・・・・」
「俺の艦隊を赤くしたんだよ。かっこいいぞ。空母のワイバーンも赤くなったしな。アレクありがとな。ワイバーンだけ違う色だとかっこ悪いもんな。」
「・・・・・・カイン兄、ワイバーンは赤くしましたが、艦隊全部赤くしたんですか。」
「真っ赤にしたんだ。」
「カイン兄、目立ちますね。」
「目立つからやってるんだ。敵が来ないと寂しいからな。」
アレクは考え込んでしまった。ガレオン号は木目だ、他の家族は色を付けている。オリオン王国はブルーを主体にしている、ノースオリオン王国は白だ。デリックは黒にしている。アレクはブロンを見る。ブロンは首をかしげている。愛嬌があり可愛い。「ブロンズ色はないな。」
「上空を飛んでいるから白っぽいグレイかな、目立たない色でないとな。」一人ブツブツと呟いているアレクに近づいてくるものがいた。
「アレクス殿。ヨハネス・フィッシャー男爵です。」
「男爵。陞爵されたのですか、おめでとうございます。」
「いいえ。アレクス殿のおかげです。こちらがお礼をする立場です。」
「フィッシャー男爵、周りで戦争の噂が流れているようですが聞きましたか。」
「はい、我がベレーヌ王国にレンズ王国が戦争を仕掛けてくるのではないかと噂されています。」
「そうですか。噂を流しているのはレンズ王国でしょうな。」
「そうです、今も国境問題を大きな声で訴えていましたから。」
「アレクス殿、ベレーヌ王国との軍事協定はやはり出来ませんか。」
「今は出来ません、SEオリオン王国は王国連合に所属しています。軍事に関しては単独での調印等は出来ません。」
3か国の調印式は無事終わった。
SEオリオン直轄領の開発が始まろうとしていた。
開発は機人と木人が主体となり一気に進んだ。ミスリル、金剛鉄、鉄、金、銀と鉱石の種類が多く、豊富に取れていた。
まだ開発を開始して間もないにも関わらず大勢の人が働きに来ている。特にベレーヌ王国の民が多い。困窮している様子だ。アレク達はベレーヌ王国の民を優先的に雇い入れ仕事を与えているようだ。
開発が軌道に乗り採掘量が増えてきた頃、レンズ王国とベレーヌ王国の国境付近に軍勢が集結していると噂になっていた。両国も一歩も譲らず交渉は最終段階に入っている。戦争が始まる事にベレーヌ王国民たちは不安顔だ。自分たちが不利だと分かっているのだろう。SEオリオン直轄領に移住の相談に来る人が増えてきている。執政官のパウルも無暗な移住は許可を出していない。ベレーヌ王国との協定もあり、一時滞在ですませているのだ。
多くのベレーヌ人がSEオリオン直轄領に一時滞在となり、アレク達は町の建設が負担になっていた。
「あと、3つは町を造らないと間に合いません。この直轄領は南に細長いから大変です。」
「そうなんだよな、ベレーヌ王国より南に長いからな。ベレーヌ王国民の女、子供が押し寄せているしな。」
「戦争になるのが解っていますから、追い返すことが出来ません。」
「そうだな、受け入れるだけ、受け入れるぞ。」
「ボアン、ヘレン、物資の手配は頼むぞ。」
「はい、大丈夫です。大型貨物船をカイン様が貸してくれました。」
「・・・・あ、あの赤いやつか。」
「そうです。でも条件がありまして、戦争が始まったら連絡する事になっています。ちなみに獣人の労働者付きです。」
「・・・・・・」
そしてベレーヌ王国とレンズ王国との戦端が開かれた。ベレーヌ王国が守りレンズ王国が攻める構図が出来ていた。
ベレーヌ王国は侵攻するほどの戦力もなく、防衛に専念している。レンズ王国もベレーヌ王国の防衛を突破できない状態が初めは続き膠着状態となっていた。
だがベレーヌ王国の数倍の戦力を保持しているレンズ王国がジリジリとベレーヌを押していく。
ベレーヌ王国もSEオリオン王国の参戦を希望しており、オリオン王国にまで交渉に行っている。
ハロルドもベレーヌ王国を救援には理由が必要となり、王国連合への参加を条件としていた。ベレーヌ王国も今の状態を覆す方法はオリオン王国に頼るしかなく、承諾の旨を伝える。だがそれに意を唱えるものが出たのである。ルーアニア王国である。ミルトン王国は別として、ベレーヌ王国がオリオン王国連合に参加となればルーアニア王国は自国だけ孤立してしまうのだ。ルーアニア王国はオリオン王国連合の恩恵を受けている。だがオリオン王国の風下に立つことは許せないようだ。
ルーアニア王国の横やりでベレーヌ王国の状況が次第に悪くなっていく。
ハロルドも国としての建前がある。強行にすることが出来ないのだ、一度でもそんなことをしてしまえば国としての信用がなくなる。
アレクは、面倒だなと思い始めていた。




