166話
ミルトン王国王都
「トレイス義父上。ただいま戻りました。」
「アレク早かったな。どうであった。」
「不味いです、鉱山がありました。それもミスリル鉱山です。」
「ミスリルだと本当か。戦争になるぞ。」
「戦争になりますね。」
アレクはトレイスと話をしていくが、相手に下手に出ても高圧的に出ても結果は同じだろうとなった。ならば正面から行くことになったのだ。
「ベレーヌ王国大使殿。ミルトン王国は未開拓地を調査した。その結果あの未開拓地開発は許可できんな。」
「な、なんですとと、我らはもう開発に着手しておりますぞ。」
「なら止めることだな。あの未開拓地に侵入した者は排除する事になる。」
「せ、戦争になりますぞ。いいのですかな。」
「構いませんよ。」
突然後ろからの声にビックとした大使は後ろを見てさらにびっくりしていた。
「あ、あなたはま、まさかア、アレク殿ですか。」
「ほう、私を知っているのか。」
「あなたを知らないベレーヌ王国民はいません。」
「なら言わせてもらおうか。未開拓地は私が貰う。手を引かねば国を亡ぼす。」
「なっ、そ、そんなことが通るとお思いですか。」
「誰の土地でもない未開拓地だ、私のものにして何が悪い。」
「・・・あ、あれは我がベレーヌ王国の領地です。」
「ほう、今までそんな宣言と通達は無かったぞ。」
「くぅ、宣言はしませんがそうなのです。」
「我がSEオリオン王国は近隣諸国に対して領有地として昨日通達を出した。ミルトン王国と共同開発を行うとな。」
「貴国にも昨日、通達が言っているはずだ聞いていないのか。」
「き、今日は失礼いたします。」
「さて相手はどう出ますかな。」
「どうでしょう、いきなり戦争にはしないでしょう。」
そうベレーヌ王国もいきなり戦争にはしなかった。
ミルトン王国に交渉団が押し掛けてきたのだ。SEオリオン王国が領地を宣言したのにミルトン王国に交渉団が来る。アレクは何故だと聞いてみて。ベレーヌ王国交渉団は言いにくそうに、SEオリオン王国では交渉する前に殺されそうだと答えたようだ。アレクは無言であった。
交渉は平行線のままである。ベレーヌ王国は我が領地と主張している。SEオリオン王国は宣言通りと平行線のまま話が付かない。このまま戦争へ突入と思われたときにアレクは一つの提案をした。
「交渉団の方々に問いたい。あの未開拓地を何故ほしいのだ。理由によっては譲歩しよう。」
交渉団たちは顔を見合わせる。代表者の一人が、「農地を作るためです。今我らには土地が足りませぬ。」
「農地を開発を行うのだな。」
「はい山を崩し、平地にし、農地にいたします。」
「なら問題はないな。SEオリオンはあの場所に鉱脈を発見している。山を崩し、ある程度は平らになるぞ。その後、ベレーヌ王国に農地として譲渡又は租借地として200年ぐらいで貸しても良い。」
「え、あ、いや、お待ちください。じ、実はベレーヌも鉱脈を見つけています。」
「代表者殿、口先だけでは交渉など出来ぬぞ、話が2転3転しては話にならぬであろう。」
交渉団は、自分たちの失態に気づいた。物の見える人間が一人でも交渉団の中にいれば何故SEオリオン王国が出てくるのかを考えただろう。調査をしていれば飛行船が何度も未開拓地の上空を飛び回っていたことも知れたはずである。
交渉団の中一人、席もない後ろに立っている者が突然と謝る。
「申し訳けございません。正直に申します。鉱脈の為に、あの未開地が我らに必要なのです。なにとぞご考慮をお願いいたします。」
「ほう、一人は話の出来る者がいるようだな。卿の今の立場はどのような位置にいる。」
「はい。私は、交渉団の補佐役を仰せつかっております。」
「今後はこの者を代表にした交渉を行う。よいな。」
「お、お待ちください。この者はまだ若く、経験が乏しく上位貴族でもございません。交渉は我らとお願いします。」
「はーー。だから話にならぬのだよ。後ろに立っている数人は分かったであろう。何故交渉がうまくいかないのか。何故、譲歩を引き出せないのかがな。一度帰り出直してこい。」
数日後
新たな交渉団が現れた。
「改めて交渉に参りました。交渉団団長、ヨハネス・フィッシャー騎士爵です。」
「フィッシャー騎士爵か宜しく。」
「まずはベレーヌ王国の考えをご説明いたします。未開拓地に鉱脈があり開発出来るように交渉したいと思っております。」
「一つ疑問がある。なぜ黙って開発をしないのだ。態々問題になる交渉などしなくともあれだけの広さだ、ばれる事はあるまい。」
「やはり、分かりますか。」
「理由を聞こうか。」
ベレーヌ王国の鉱脈発見は偶然で会った。ベレーヌ王国は歓喜に沸いた。だが同時に問題も浮上してきたのだ。鉱脈のある未開拓地はミルトン王国、ベレーヌ王国、レンズ王国と3か国と接している。
もしベレーヌ王国が未開拓地を黙って開発をしてミスリルなどが市場に出回った時にばれてしまう。売却をしなければ金にならないからだ。ベレーヌ王国は周りに友好国がない状態なのだ。ベレーヌ王国の隣接している国は、ミルトン王国、ルーアニア王国、ブライ王国、レンズ王国である。
ルーアニア王国は戦争を仕掛けて負けた。ブライ王国は一緒に戦争を仕掛けたが、親グラムット帝国の国なのだ信用が出来ない。レンズ王国とは昔から仲が悪い。況してはベレーヌ王国は弱っている状態なのだ。攻められたら負ける可能性がある。
唯一味方になれる国がミルトン王国なのだ。未開拓地とも隣接している。問題を共有できるそして武力を持っている。
「んーー。なぜ前回の交渉団は自分で開発をすると言い張っていたのだ。」
「誠に言いにくいのですが、あの者達は、領地と金しか見えていません。隣国との関係など問題がないと考えております。」
「なるほどな、馬鹿は何処にでもいるな。」
「・・・・・」
「で、どうしたいのだ。」
「はい。出来ましたら共同開発をお願いしたいです。」
「よかろう、三か国での共同開発でよいぞ。」
「ほ、本当によろしいのでしょうか。」
「ん。疑っているのか。」
「え、あ、いやそのー、何故でしょうか、SEオリオン王国ならお判りと思いますが、ベレーヌ王国は国力が弱っています。戦争など出来る状態ではありません。未開拓地をSEオリオン王国が単独で開発したとしても文句は言えますが、武力での対抗など出来ません。それをお判りなのに何故、共同開発を承諾されるのかが分かりません。」
「ああ、そうか簡単な事だな。利益を独占するつもりが無いからだ。」
「そ、そうなのですか、利益が独占できれば国が富みます。」
「フィッシャーはSEオリオン王国を見た事があるか。」
「いいえございません。」
「そうか。一度見に来たらよいぞ。答えが分かるだろう。」
未開拓地の共同開発がスタートする。3か国の調印式を大々的に行い、近隣諸国に主張する話にまでなっていた。