165話
道路の真ん中で待っていたアレクは端に寄っていた。あたりまえだ。邪魔なのだ。
一時間程経った頃、少年が戻ってきた。アレクは少年に字は書けるか尋ねるが書けないようだ。声は出るのか聞くと声は出るようだ。だが喋れない。よく観察をしてみると喉が傷ついているようだ。声帯でも傷ついているのかもしれない。アレクは少年を城に連れていき治療をすることにしたのだ。少年をベッドに寝かしアレクは少年に手をかざし損傷部分を調べていく。事故か故意か分からないが傷がついている、アレクは傷が治るイメージを少年に流していく。少年は喉だけではなかった、全身傷だらけである。
治療が終わり、アレクは少年を見ると涙を流していた。
「どうした、治ったぞ。」
「あ、あり、がとう、うござ、い、あます。」
アレクは、少年を落ち着かせ、ゆっくりと事情を聴いていく。
少年は、物心がつく頃にはもう喋れなかったようだ。だから原因は分からない。
この場所にも両親と一諸にやってきたが、いなくなってしまった。喋れず、書くことも出来ずに探すことが出来なかったようだ。だが親に捨てられたとは言わなかった。分かっていても言いたくないのだろう。
アレクは少年に、「私の所で働けば字も書けるようになる。やるか。」
「お、お、おねが、いします。」
「名前は何という。」
「あ、ありませ、ん。」少年は悲しそうにつぶやく。
「なら丁度いい。私が少年の名付け親になろう。お前の師匠だからな。アクラー。君の名はアクラーだ。」
「ア、クラ、-。あ、あり、がとうご、ござい、ます。」
アレクは自分がこの湖の島の領主だと伝え驚かれたが、少年はすぐに受け入れていた。自分を救ってくれた人が偉い人ぐらいの認識だったようだ。と後に語っていた。
アクラーはステータスカードを持っていたが名前の欄には、こえなしと書かれていた。アレクはこのステータスカードを破棄した。そして新しく登録をしたのだ。アクラーと書かれたステータスカードを渡すと嬉しそうに眺めている。アレクも嬉しくなる。そうなると気前もよくなりアクラーにスキル玉を渡して飲ませたのだ。
それからのアクラーはアレクから読み書きを教えてもらい。自分で勉強をするようになった。スキル玉で能力が上がっていた事もあり知識を吸収していった。
武術も才能があったようだ、剣を持たせた時から扱えた。
アクラーはアレクといつも一緒に居るようになっていた。迷宮都市の湖の村でも屋敷に部屋を与えられていた。
「アクラー兄ちゃん、迷宮に連れて行ってくれよー。父上はゴブリンが倒せるならいいって言ってたもん。」
「ファーレスそれ嘘だろう。」
「な、なんでわかるんだ。ちょうのうりょくしゃか。」
「誰でもわかるよ。師匠はそんな事言わないからね。」
「そ、そうなんだ。」
「それじゃ、剣の訓練を始めるよ。」
「はーい。」
ファーレスは素振りから始めた。真面目に一振り一振り真剣にやっている。
アレクは物陰から覗き見をしていた。一人で頷き「うんうん」言っていた。
そんなある日
「ご主人様、ミルトン王国から通信が入っています。」
「そうか、通信室にいくよ。」
ミルトン王国からの通信は国王トレイスからであった。隣国ベレーヌ王国と山脈の間の土地未開発地でもめだしたようだ。ベレーヌ王国は先の戦争でミルトン王国に国土の3分の1を割譲している。未開発地を開拓をしてそこを領地として確定させたいようだ。ミルトン王国としては実はどうでもいい話なのだ。だが素直に認めると国が舐められるのだ。そこでアレクに仲裁してもらおうと考えたのである。
アレクも義父からの申し出には受ける事しかできない。
ミルの相談してみんなでミルトン王国に向かう事のなった。
ファーレスとオスカーは大喜びである。レインとマルティナは何の事か分からないが二人が喜んでいるので一緒に喜んでいる。
アレク一行はガレオン号(改)に乗り込みミルトン王国を目指して飛び立った。
ミルトン王国王都
「おじいさま、おばあさまおむかえありがとう。」
「おじい様、おばあ様お久しぶりーー。」
「おおおお、ファーレスもオスカーもいい子だな。さぁこっちにいらっしゃい。」
おじいさんはファーレスを抱っこして嬉しそうだ。おばあさんはオスカーを抱きしめて撫でている。
他の者は、二人が落ち着くまで、ぼーーーーっと、立っていた。ミルが声をかけても聞いていないようだ。
ようやく二人は正気の戻り、城の中に入り一息ついていた。
「いやー、アレク先ほどはすまんかったな。」
「いいですよ、孫は可愛いでしょうから。」
「そうなんだよ、孫は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
また何かのスイッチが入ってしまい。15分ほどで正気を取り戻していた。
「それで、義父上はどうなさりたいですか。」
「ベレーヌ王国も必死なんだろう。領地を失った貴族がうるさいようで建前だけでも開発をしたいんであろう。」
「ベレーヌ王国がそう言ってきたのですか。」
「使者がそう伝えてきておるな。」
「一度その未開拓地を見てきます。返答はその後でどうでしょう。」
「そうしてくれ、私もその地を見たことがないのでな。」
アレクはミルと子供たちを残して翌日には未開拓地に向かった。
見送りは誰もいなかった。「悲しくなんかない男はいつも一人だ」と呟いていた。
未開拓地上空
「ただの、低い山ですね。それもはげ山が多いです。」
「そうだなここを開拓すのは大変だぞ。」
「そうですよ、こんな小山崩すのだけでも何十年かかりますよ。」
「そうだよな、何で開拓するんだ。何かあるのか。」
アレクはガレオン号の上からサーチをかけていった。鉱石等の鉱脈があれば開発の価値はあるだろう。だが何もなければ無駄以外ない。
「これミスリル鉱山か。んんん。他にもあるな。」
「師匠、分かりましたか。」
「ああ分かったぞ。鉱山があるな。ベレーヌ王国は鉱山があるのが分かったから開発をするんだろう。」
「師匠以外には、ばれませんよ。」
「そうかもな。さてどうするかな。一度全地域を調査してから戻ろうか。」
「はい、ではガレオン号を国境まで一度戻します。」
ガレオン号は一度国境付近まで戻り、ゆっくりとジグザグ走行をしながら調査を行った。その結果。
「ミスリル鉱山、金剛鉄もあるのか。凄いなこの山は鉱脈が至る所にあるぞ。」
「これはミルトン王国とベレーヌ王国と戦争になりますか。」
「なるだろうな。これだけの資源を黙って渡す訳にはいかんだろうな。」
「ミルトン王国に急いで戻るぞ。」