153話
メニダス王国
「カイン兄、少し実験するから付き合ってよ。」
「また、何するんだ。碌なことしないからな。」
「そんなことないよ。今回の実験は奴隷の意識、記憶の植え付けだね。」
「記憶の植え付け。なんだそれは。」
「まぁ、見ててよ。」
アレクとカインは奴隷の一人と話をしていく。
「あなたの名前と年齢を言ってください。」
「私の名前は123番です。齢は分かりません。」
「あなたの主人は誰ですか。」
「私のご主人様は、昨日死にました。」
「今は主人がいませんね。」
「はい。新しいご主人様が来るまで待ちます。」
「来ないときはどうしますか。」
「・・・分かりません。」
「あなたは自由になりました。好きな事。自分の行きたい場所に行けますよ。」
「・・・自由が分かりません。申し訳ございません。」
「そのままで待っていてください。」
「はい。」
「カイン兄、この人は生まれた時から奴隷だったんだ。だから知らないことが多いんだ。それをこのスキル玉で情報を入れてあげるんだ、自由の意味、仕事の選択、お金の知識、法の知識、そして奴隷解放の意味。
北部では誰でも知っていることだよ。子供でも知っている事をこの人たちは知らないんだ。今から勉強しても多分ダメだろうと思うんだ。強制的に変えないとこの人たちは救えない。やってみるから見ていて。」
「123番さん、今からこの玉を飲んでください。」
「はい。飲みます。」ごっくん。
123番は頭の中がぐるぐると回っているような意識が朦朧としてきている。だが次の瞬間頭の中がすっきりとしている。
「わ、私はどうしたんですか。」
「あなたの名前は何ですか。」
「私には名前はありません。番号で呼ばれていました。」
「あなたは奴隷から解放されました。」
「ほ、本当ですか。信じられない。私は生まれたときから奴隷でした。解放されるなんて信じられません。」
「いいえ解放されましたよ。あなたは自由です。」
「本当に自由ですか、奴隷以外の仕事がありません。どうしたらいいか分かりません。」
「時間はあります。自分で考えて決めましょう。」
「はい。考えます。」
「カイン兄、どう思った。」
「これはやらないといけないな。」
「普通はこんな事やっては拙いでしょうが、今回はやるべきです。」
「この国の奴隷が何人いるか分かりませんけど、みんなあんな感じでは国が潰れますよ。」
「アレク、何でこのスキル玉、貴族に使わなかった。」
「貴族は知識がありました、だからですよ。考える事が出来るんです。だから自分で変えられるんです。自分で考える事の出来る人には使いません。いえ使えません。」
「そうかそうだな。」
「今回は知識の植え付けです。考える事が出来るという情報を与える事をしています。一人一人にやらなければ行けないのが大変ですね。」
「そうだな、何人いるんだろうな。」
「・・・・・・・・」
アレクは、オリオン王国に連絡を取り応援を呼んだ。
今回は、どうしても人手が足りないそれも特別な事情の理解できる人間が必要になのだ。
オリオン王国から行政の役人たちがやってきた。その役人たちにスキル玉を渡して、各地に出向いて奴隷解放をしてもらうのだ。人数が多すぎるため集める事もできない。
この作業と支援等を役人たちに任せた。アレクとカインは報告の為、オリオン王国に向かうことになった。
オリオン王国王都ブレスト
アレクとカインは、会議室に入っていく。
「カイン、今回は大変だったな。」
「ルドルフ兄、そうだぜ本当に大変だよ参った。」
「どうせ、二人で戦争の相談でもしていたんでしょう。」
「・・・・・」
「まさか本当に戦争の相談していたのか。」
「いやー、相談に乗っていただけですよ、戦争なんてやりませんよ。ねぇ、カイン兄。」
「えっ。戦争するつもりだったぞ。」
「・・・・・・」
ジト目で見られるアレク。穴があったら入りたいようだ。
そしてハロルド夫妻が入ってくる。もちろんデリックも一緒だ。
「もう集まっているな。始めようか。」
「また、カインとアレクが問題を持ってきた。」
「えええ、カイン兄ですよ。」
「アレク。黙れ。」
「・・・・」
「どちらでも同じだ。王国連合なのだからな。アレク、要点だけでよい説明をしなさい。」
「分かりました。今回、メニダス王国と獣王国が戦争をしました。もちろんカイン兄の獣王国の圧勝です。ですが民に問題があります。国民の約7割から8割の人々が奴隷として暮らしています。正確な人数はまだ分かりません。この奴隷たちは生まれたときからの奴隷が多く、自由、仕事、法律等のことを理解していません。」
「それは拙くないか。」
「その通りです。この問題は解決は出来ます。先日も実験しましたが、成功しています。スキル玉による記憶の植え付けです。簡単に説明しますと、知識を強制的に理解をさせる事ですね。今この作業をオリオン王国の行政の方たちに行ってもらっています。後は元奴隷たちが自分で考え行動をしてもらうだけです。その手助けをオリオン王国連合で行なってもらうつもりです。」
「そうだな、獣王国だけでは無理だろうな。」
「そうですね。カインでは無理でしょう。」
「ルドルフ兄、それはないだろう。」
「事実だろう。問題が大きすぎる。獣王国だけではな。」
「本当なの奴隷たちが理解していないって。」
「マリア姉、奴隷たちは何も教えられていなかったのですよ。知らなくて当然です。」
「そうよね。知らないんだものね。許せないわ。」
「許しませんでしたよ。王族、貴族達は全員公開処刑にしました。」
「・・・・・」
「まぁ良い。先に進めるぞ、アレク。オリオン王国に何をやってほしいのだ。」
「それはですね。教育が一番です。後はいつも通りですね。開発、支援等です。」
「教育か。大変だな。学校でも建てるのか。」
「それも大事ですが、仕事をさせて賃金を渡す。そしてお金を使う。ここからですね。」
「えっ、本当にそこからなのか。」
「そうですよ。その事すら知らないんですよ。メニダス王国は広いです。人口も多いようです。」
「そりゃ獣王国だけでは無理だよな。人手がないだろうしな。」
「そうなんですよレオン兄、だから王国連合から人手を集めて進めていきたいんです。」
「これは大仕事だな。」
「いえ、父上。・・さま。もう一つだけ、大仕事があります、いや大した事無いかな・・たぶん。」
「何だアレク、これ以上の事があるのか。」
「大したことではありません。各王国連合から、獣王国の貴族になる者を1か国20人から30人獣王国に送ってください。領地持ちの貴族ですよ。凄いですよ。羨ましいですね。いいですよー。」
「・・・・・・・・そんなに必要なのか。」
「そうなんですよ。メニダス王国の貴族を全員公開処刑にしてしまい。統治者が今は0人です。」
「・・・・・・・・・」
「レオン、メニダス王国は比較的大きい国だったよな。」
「兄貴、俺の記憶でも同じだな。」
オリオン王国公爵会議はまだ終わらない。