150話
「セシル、助かったよありがとう。」
「いえいえ、アレクス様の為ですからお安い御用です。」
「こんなとこまで来ていいのか、迷宮都市は大丈夫なのか。」
「大丈夫ですよ、あそこは安定していますから、他のどの領地より一番安全で安心できるところです。」
アレク上機嫌になる。「セシルは嬉しいことを言ってくれるね、何か希望があれば叶えるよ。」
「えっ、本当ですか。」ものすごい食いつきだった。アレクは一瞬身を引いたほどだ。
「う、うん出来る事と出来ないことはあるけど。」
「出来ます、絶対に出来ます。」
「な、何かな。」
「迷宮都市のあの村に家が欲しいんです。」
「ああ、湖の村だね。」
「そうです、あそこほど子供を育てるいい環境はありません。私も絶対に、絶対あそこに住みたいんです。」
「わ、わかったよ。そういえば結婚したんだよね。なら湖の村も少し広げて10件ぐらい増やそうか。セシルに1件結婚祝いで贈るよ。」
「本当ですか、約束ですよ、絶対ですよ。」
「大丈夫だよ。今度私が迷宮都市に帰った時に作るから。もし忘れていたら言ってよね。」
「分かりました。ガレオン号が来ましたら、すぐにお迎えに参ります。」
セシルの小鼻が大きく膨らんでいる。興奮すると小鼻が膨らむようだ。
アレクは悩んでいる。この大森林の迷宮を任せる代官がいないのだ。新しいこの迷宮のある町。
冒険者に理解があり、強くなければ冒険者に舐められるだろう。人望もある程度は無いと困る。
いない。どうしよう。困った。
「迷宮都市から引き抜くか、んーーん。困ったぞ。」
アレクは考える、冒険者、迷宮、貴族、このキーワードにはまる人。一人いた。
「ルジンだ。」
アレクはルジンを大森林の迷宮に呼び出す。
「ルジン。久しいな。」
「アレクス様、お久しぶりでございます。今回はどのようなご用件でしょうか。兄の手伝いでしょうか。」
「ミジルは、カイン兄の所で頑張っているだろう。今回はこの迷宮の事だな。」
「この大森林の迷宮ですか。」
「ルジンは今、迷宮都市で治安維持の仕事だったな。」
「はい、治安維持の取りまとめとしています。」
「そうか、ルジン・マルソー騎士爵。卿を今から、男爵位を与える。この大森林の迷宮の代官を命ずる。
「はぁ、失礼しました。男爵ですか、代官ですか。」
「そうだ。奥方と子供を連れてこの地に引っ越しだ。屋敷と土地を与える。」
「あ、あのよろしいのでしょうか。私は元平民です。それをこんな大きな街の代官は拙くないでしょうか。」
「いや、ルジンが適任だな。迷宮には冒険者が集まる。荒くれものが多い、ルジンなら元冒険者であるから冒険者の扱いも大丈夫だろう、それに迷宮都市で治安維持部隊の隊長だ。組織運営も問題なしだな。後は奥方と子供だな。環境の良い区画を作るからそこに住むとよいぞ。」
「あ、あの湖の村の屋敷ですか。」
「まぁあのレベルだな。」
「引っ越します。」
「お前即答だな。」
「いやー。湖の村は有名ですから。誰もが住みたいと思う村です。」
「そうなのか。知らなかった。」
「ステラも屋敷の話をすれば即引っ越してきます。」
「なら、今から場所を決めて造ってやろう。」
アレクは歩きながら如何するか考えていく。今の区画は環境が悪くなるだろう、何しろ冒険者の町だからだ。違う場所に造るしかない。いまの場所の近くで環境の良い場所、辺りを見回すと小高い丘になっている場所がある。「あそこがよさそうだな。」
「あの丘ですか。」
「ああ、この町にも近いし綺麗な村が造れそうだ。」
アレクは迷宮核を使い小高い丘まで道を作っていく。小高い丘まで行くとアレクは丘の上に大きな屋敷を造っていく。ルジンは茫然としている。アレクはいつも思う。何故みんな口を開けるのだろう。
唖然としている人に聞いても口開けてましたか。そんな事ないですと答えられるのだ。
無意識で開けているのであろう。口から虫が入りそうだと思いながらアレクは作業を行っていた。
「どうだ凄いだろう。」
「本当にそんなに簡単に出来るのですか。凄い。」
「後は道具等は運ばせる。中を見てこい。内装は大工にやらせるからな。」
「凄いお屋敷です。住んでいいんでしょうか。」
「もうルジンの家だよ。」
「この新しい村で一番いい場所だな。村の境に柵で囲うが心配するな、魔物は来ないからな。この島では町、村と人のいる場所には魔物は出ない様にしているから安心していいぞ。」
「す、凄い。本当にそんなことが出来るんですね。」
アレクは丘の村を150ほどの区画割りをした。そしてすべての区画に屋敷を造っていったのだ。
湖の村のように統一感のない屋敷を並べていった。港や冒険者の町から見ると、丘の上に大きい屋敷が建ち段々と丘を下るように他の屋敷も建ち並ぶ。美しい村の風景がそこにはあった。
アレク自画自賛をしている。大満足だ。
アレクはルジンを一人残しさっさと冒険者の町に戻ってきた。気分のいいアレクは町の開発も手を付けていった。まず港を大きくした。港町を造りそこでは交易をさせるようにしていく。港から冒険者の町に道を作り、丘の村にも港町から繋がる道を作った。これで多少人口が増えても問題ないようになったのだ。
一仕事終えたアレクはルジンに後を任せ。久しぶりにカイン兄の獣王国に向かったのだ。
「アレク、お前突然来るよなー。」
「偶々、暇になりましてね。カイン兄の顔でも拝もうかと来たんですよ。」
「拝んでいけよ、ご利益は無いだろうがな。ハハハハ。」
「まぁ、冗談はさて置き。獣王国はどうですか人間とは上手くやれていますか。」
「中々と大変だな。上手くいく奴もいれば駄目な奴もいる。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「領主は全く問題ないんだけどな。」
「そりゃそうでしょう。領主は問題ない者を選んでますからね。」
「何か、一致団結出来るような事があれば仲間意識が出ると思うんですけどね。」
「アレクそれだ、それ。」
「何かありますか。」
「勿論あるぞ、戦争だ。」
「カ、カイン兄、それは拙いでしょう。また怒られますよ。」
「やったもん勝ちだろう。」
「・・・・・・」
アレクとカインはグラムット帝国と接していない国、そして獣王国と接している国を探す。二つの候補が上がった。トイジン国とダイアリア王国の二か国だ。どちらかに問題は無いかを調べていく。
どちらの国も今は食料もあまり困ってはいない。大した問題も無い。大義名分が無いのだ。
アレクはグラムット帝国と接している国も調べていく。取りあえず周辺の国を調査する事にしたのだ。何かを見つけないとカインは適当に攻めていくだろう。あまりにも計画性が無いのは拙い。アレクは必死で探している。
アレクはカインに会いに来たことを後悔していた。なぜか自分が来たせいで戦争を始めようとしている。拙いと思っているのだ。
「どうしよう。拙いな。」