138話
「ふーーっ。後何件だ。」
「あと6件です。」
アレクはオリオン王国から急いで戻ってきていた。SEオリオン王国にオリオン銀行の支店を建てる為である。
SEオリオン王国の各都市に一つの支店、運河港にも各一つの支店を建てる。
「終わった。間に合ったな。」
アレクは紙幣発行前にオリオン銀行支店を建て終えた。やり切った。
「後日、紙幣が輸送されてくるぞ、店長と相談して行員を現地で雇えよ。頼むぞ。」
「お任せください。」マリーナ女爵は綺麗な礼をしていた。
獣王国
「カインの親分。」
「どうしたワンダ。」
「サム殿から通信が入っています。」
「そうか、何かあったのかな。」
そう、何かあったのだ。サム伯爵とロム伯爵の領地は他国と接している、そこに難民が押し寄せてきているのだ。サムとロムの領地は元マニスト国である小さい国で、民は飢え死にしそうであった。そこをカインが占領したのだ。後を引き継ぎ領地を預かっているのがサムとロムである。獣王国でグラムット帝国と接しておらず、領地が防壁で囲われていない場所なのだ。難民として領地に来ているのは獣人だけではない、人間、エルフ、ドワーフ、獣人と小国群で飢えている者たちが押し寄せているのである。
難民を追い出している国がサムとロムの領地と接している為か策略かは不明だがほっとく訳にはいかなかった。カインの性格である、困ってるなら助けるのだ。
カインは難民キャンプを作り、そこで救援活動をさせていた。
「サム隣の国に抗議の使者を送れるか。」
「カイン様、送る事は出来ます。難民を引き取れと伝えるのですか。」
「いや違うぞ。抗議に行って理由を探るんだ。」
「おおお、親分が物事を考えてるぞーー。」
ポカ、ポコポコ。一言多い虎族のオルガはカインに殴られ撃沈していた。
「分かりました、至急使者を出します。」
「後、難民の代表者を呼んでくれ。」
「お前が、難民の代表者か。」
「はい、この度はありがとうございます。私は商人をしておりました。ネルソンと申します。」
ネルソンの話は、悲惨であった。隣国のイスパル国で商いをしていたが、国の政策で商いが出来なくなり農業に従事させられていた。そこまではまだ良かった。ネルソンはまだ資産が残っていたから、その資産を活用して農業を手広く行っていこうと試行錯誤しながら軌道に乗せていったのだ。だがまたもや国の政策で農地と資産を取り上げられたのだ。抗議をしたが相手にもされず、挙句の果てには追い出されてしまったのだ。
そのような人達と元からの貧民たちが、飢えた状態でこの獣王国に来たのである。
「カイン様、どうか我々をお助けください。お願いたします。」
「ネルソンよ、困っているのなら助けるが、無料ではないぞ働けよ。」
「はいどんな仕事もでもいたします。宜しくお願いします。」
カインは難民の為に、町の建設をしたのだ。もちろん難民たちの住む町だ。難民たちは、自分たちが住めると知り張り切って仕事をした。仕事をした見返りは食料とわずかな賃金であったが、自分の家を造っているのだから文句も出なかった。むしろ喜ばれていた。
そんな作業を始めて、数日後に隣国に送った使者が戻ってきた。
「サム、どうだった。」
「カイン様、隣国のイスパル国は国民を奴隷のように扱っています。農耕に従事させてほとんどを税として接収しています。国民のすべてが貧困状態です、裕福なのはイスパルの王と側近のみです。」
「よくイスパル国は、国が潰れないな、凄いな。」
「穀物を隣国に高値で売っているんです。その金を使い国を持たせているようです。」
「国民はたまったもんじゃないな。」
「そうです、商工業は無くただ農業に従事しているだけです。」
「許せんな。俺がブッ飛ばしてやる。野郎どもいくぞーー。」
「おおおおーー。」
サムは唖然としてしまった。カインと獣人は外に駆けて行ってしまったのだ。
我に返ったサムは、後を追うのを止めた。行き先は分かっている、カインと獣人達が負ける訳が無いこともわかる。なら自分はその後の行動をするのだ。サムはロムに連絡を取り、人材を送るように手配をしていく、難民の中で優秀な人にも声を掛け、カインと獣人300人の喧嘩の後始末をする用意をしていくのであった。
カインと獣人は走っていた。
獣王国とイスパル国の国境など、お構いなしに突破をしていく。そしてイスパルの王のいる街に着いたのだ。
カインは獣人達に告げる。
「いいか、イスパルの王たちをブッ飛ばす。全員城に突入するぞー。いくぞーー。」
「おおおおおおおおー。」
カインが突撃しているその城は城とは呼べないようなものである。大きい屋敷に高い防壁を周りに囲んだものである。その城門には城の兵士が待ち構えていた。城の門も閉ざされている、カイン達は、兵士を殴り倒して無力化させたのだ。100人程度の兵士に300人の獣人が負ける訳がない。100人しか相手のいなかった獣人は一人が殴った人間が飛ばされたところに別の獣人がまた殴る事となり、ほぼ即死状態であったようだ。
獣人パワー、恐るべし。
カインも城に突入後、出会う奴らを殴り倒していったのだ。カインと獣人は武器を持たず、素手で突入していたのだ。相手は剣や槍を構え対抗していたが、獣人達に一発でのされていった。
カインは酒を飲んでいい気分になっている偉そうな人たちを見つけたのだ。
「お前がイスパルの王か。」
「なんだお前は獣人など下賤なものを連れて、下がれ。」
「おまえ、この騒ぎも分からないのか。」
イスパル王たちは酒に酔っていた、周りが戦闘しているのに気づかずに飲んでいたのである。
カインは呆れてしまった。脳筋獣人達もこの王たちは馬鹿だと思っていた。
カインはこの酔っ払いたちを拘束して投獄したのだ。
カインが城の人々を拘束して、投獄作業をしていると、サム達が到着してきたのだ。
「カイン様、いきなりの戦争はまずいですよ。」
「え。戦争?戦争なんてしてないぞ。」
「カイン様、隣の国に攻め込んだんですよ。これを戦争以外の言葉で表す事は出来ません。」
「うっ、サム何とかしろ。戦争はまずい、救済にしろ。何とかしてくれ。」
「ハーーーー。そうだと思いました。救援要請を取ってあります。イスパル国からの難民たちからの救援要請です。ネルソンが、代表になり取りまとめをしました。」
「おお。流石優秀なサムだな。」カインは嬉しそうにサムを褒める。サムも嬉しそうだ。
「カイン様、今後の事を決めないといけません。幸い元商人のネルソンと数人の元商人がいますのでその者たちと協議をしていきましょう。このイスパル国を治めていかなければなりません。」
「あ、やはり獣王国にしないと駄目かな。」
「当たり前です、これで引き上げたら、又この国の民は奴隷のように扱われますよ。カイン様が救わないと他国の餌食にされます。」
「そうだな、サムとネルソンに任せる。困ったらマリアかイリアに相談しろ。」
カインは獣人達とまた走っていってしまった。