137話
「紙幣の製造はいつできる。」
「そうですね。紙幣の種類にもよりますね。金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨、鉄貨がいまは使用しています。鉄貨、銅貨、大銅貨の紙幣は必要ないでしょう。
金貨、大銀貨、銀貨の3種類か、もしくは市場に多く出すなら4種類ですね。
オリオン金貨の価値は200,000G、大銀貨は50,000G、銀貨は10,000G、大銅貨は1,000G、銅貨は100G、鉄貨は10Gです。
各国での金貨の価値は違いますが、基準をオリオン王国硬貨と同じにします。20万G紙幣、5万G紙幣、1万G紙幣、そして大銅貨、1000G紙幣を製造します。20万紙幣と5万紙幣は、一般王民は殆んど使わないでしょうが、1万G紙幣と1000G紙幣は流通していくでしょう。
オリオン銀行は紙幣を金貨、銀貨といつでも交換出来るという信用の上で行えることですから。金、銀をオリオン銀行で保管をしていること。あと家臣たちの給料を紙幣で払い市場に流通させましょう。
流通が多くなって信用の出来たところで、支払い方法を変えていきましょう。」
「よし。その紙幣で行こう。アレク、イリア頼むぞ。」
「はい分かりました。やるわよ仕方ないしね。」
「では僕は、紙幣の製造を担当しますね。」
「紙幣だと流通も良くなるよな。」
「そうなんですよ、さすがルドルフ兄ですね。重い金貨を運ばずに済みますからね。今までの為替は大商人、商人たちだけでしたが、これからは行商人、一般の人も使えますからね。」
迷宮都市
アレクは迷宮内に造幣所を造ったのだ。造幣所は機人が管理をしている。
アレクは張り切っていた。造幣所はもうある、だが紙幣のデザインが決まらない。悩んでいる。1000G紙幣は決まっている。表はレオンの顔にするのだ。王国民が一番使う紙幣だからだ。レオン人気で広めようとしていた。20万G紙幣も決まっているハロルドの予定だ。決まらないのが5万G紙幣と1万G紙幣なのだ
5万G紙幣はルドルフ兄かな、1万G紙幣を誰にするかだな。んーーん。
決まらない。
アレクはミルに相談をした。ミルは即答をした、エレメルだという。女性が紙幣の表面を飾る。こんなことはありえない事なのだ。オリオン王国の女性の象徴はエレメルだという、働ける環境を作り、魔法の教官などの育成、女の職場を広げていったのはエレメルだと説明をされていた。
アレクは、母上は拙くないかと思っている。顔を載せるのだ、何を言われるか聞きたくないのだ。面倒だからだ。そんな気持ちを解っているミルはエレメルに連絡をしてしまった。
エレメルは迷宮都市まで来ていた。紙幣の顔の確認なのだ。もう少し若く、角度が違う、こんな顔ではない、もう駄目全然決まらない。
100回以上の修正をした、アレクは疲れ切っていた。
どう見ても母のエレメルではない人物が、1万G紙幣になっているのだ。
アレクは、父に紙幣の見本を見せたときは、父も微妙な顔をしていたが何も言わなかった。いや言えなかったのだ。
紙幣の裏面は簡単であった。20万G裏面は青いすい星号、5万G紙幣はドラゴン、1万G紙幣はオリオン城、1000G紙幣はオリオン公爵領から見た山脈の風景にしたのだ。
紙幣の製造は、機人が管理しているのでアレクは暇だ。
アレクは、ファーレスと遊んでいる。毎日が充実している、楽しい、嬉しい、幸せだ。
ファーレスはパフパフいっている。意味はわからないが嬉しそうにしている、ミルも楽しそうにしている。
これぞ、アレクが求めていたものかも知れない。 多分違う。
そんな楽しい日々は長くは続かなかった。
SEオリオン王国からの仕事復帰の連絡が1時間ごとに入ってくるようになっていた。仕方なくアレクはSEオリオン王国に戻ることになったのだ。
SEオリオン王国王都オースト
「何だよせっかくの楽しい日々を過ごしていたのに。」
「陛下、陛下はこのSEオリオン王国の王であります。民の暮らしを守るのが王の仕事です。」
「わ、悪かったよ。仕事するよ。」
「商業長官のマリーナ・グローゼット長官が交易の事で面会を求めています。」
「じゃぁ、会おうか。」
この商業長官マリーナ・グローゼットはマリアが引き立てた人物なのだ。このマリーナ女爵切れ者なのだ。
オリオン銀行券の紙幣の噂を聞きやってきたのだ。
アレクは苦笑いをしている。もう噂になっていることに驚いている、紙幣はまだ流通していないのだ。
「陛下、紙幣の事ですが、いつ発行されるのでしょうか。」
「マリーナ、まだ発行の時期は正式には決まっていない。調整中だ。」
「分かりました、時期が正式に決まりましたらお教えください。それとオリオン銀行を各港に支店を建ててください。早急にお願いします。紙幣が流通した場合には、オリオン銀行に人々が殺到します。このSEオリオン王国にはオリオン銀行がこの王都オーストにしかありません。大混乱になります。」
アレクは完全に、失念していた。「そうだな、拙いな。早急にオリオン銀行の支店を増やすぞ。マリーナ何店必要なのだ。」
「はい、最低でも10店舗は必要です。大きい都市と港には必ず支店をおいて下さい。」
「大きい都市か、そうなると20は必要だな。」
「なら支店が出来次第に紙幣の発行が出来るようにしようか。他の地域もあるから今からオリオン王国に行って来る。後は頼むぞ。」
アレクの動きは速かった。誰にも止められなかった。
アレクは逃げ切った。まさに疾風アレクである。
オリオン王国王都ブレスト
「父上、オリオン銀行の支店が足りません。大変です。」
「アレクか、オリオン銀行の支店は足りてるぞ。」
「え、そんなはずはありません、SEオリオンにはオリオン銀行が1店舗しかありません。」
「アレク、それはお前が支店の申請をしていなかったからだな。」
「ガーーーン。」アレク自分で声に出している。 「まさかSEオリオン王国だけ1店舗なのですか。」
「そうだぞ、他は建築ラッシュだぞ。お前の所には今は無理だな。」
「ガーーン。」また声に出している。
「くそー一歩遅かったか。」
「アレク、一歩どころでは無いぞ。100歩は遅いぞ。」
「・・・・・わ、分かりました。店舗は自分で何とかします、人員だけでも手配をお願いします。」
「まぁアレクの所は機人で業務は出来るだろうからな。店長を手配する。後は自分で何とかしろよ。」
「分かりました。では店長を20人お願いします。」
「20人アレク、そんなに店舗を造るのか。」
「はい、紙幣の流通は噂に成っています。多分もの凄い事になりますよ。」
ハロルドの顔色が、ハロルドブルーに変わっていく。
「噂だと。本当か。」
「はいSEオリオン王国では紙幣の噂で持ちきりです。」 嘘である。
「そ、そうなのか、店舗は足りなくなるか。」
「父上、このオリオン王国は別として、王国連合には何店舗ぐらい建てるんですか。」
「ノースオリオン王国は5店舗だが、後は2店舗だな。」
「父上、それでは足りませんよ。パニックになりますよ。特にレオン兄に所は凄い事になります。」
「マリアとイリアを呼べ。」
アレクの話により、オリオン銀行の店舗数を増やす事となった。この判断は大正解であった。オリオン銀行券の発行に合わせ人々が特にノースオリオン王国の王国民が殺到したのだ。レオンの紙幣に殺到したのだ。1000Gと王国民でも交換できる金額であった事も理由の一つだ。アレクの読みが当たったのだ。
各国の店舗数は3倍にしていたが、それでも各都市を賄えられなかった。最大の混雑はノースオリオンであったが、オリオン王国でも本元であるために店舗数が多くあった。人員も多くいたため対応が出来たのだ。数ではオリオン王国がダントツであった。
その少し前。
アレクは、SEオリオン王国のオリオン銀行の支店建設に飛び回っていた。