135話
カールソン男爵との話はレオンとメアリーが会談する事となった。
オリオン航空の代表がレオンだからだ、アレクが出るよりレオンが出て恩を売ろうと考えたのだ。
レオン夫妻がカールソン男爵との会談でレオンは、鉄道は無理だが他の貴族を抑えることが出来た場合には、カールソン男爵の領地内に空港を建設する事を告げる。空港建設後の空港経営はカールソン男爵に任せることを約束すると同時に、空港にはオリオン航空は一切関知をしないが、貨物便の発着を1日1便の確約する。運用が予定に満たない場合は発着を減らす用意もあると付け加えていた。
カールソンは、返答に困っていた。空港、運用、経営、利益、分からなかったのだ。理解が出来なかった。長い会談だったのでレオンが一時席を外していた。メアリーは父に簡単にかみ砕いて説明をしていく。そして運用書を書かれた本をカールソンに渡すのであった。カールソンは概要だけは理解が出来たようだ。後は運用書で確認をしていくようだ。
これはカールソンが劣っているからではない。カールソンはこの世界では優秀な方だ。貴族であるために教養を身に着けている。それでもレオンの話には着いていけないのだ。
レオンが、ながーいトイレから戻ると。
話が進んでいく。カールソン男爵は貴族たちを説得すると約束をした。必ず説得すると意気込んでいたのだ。
レオンもメアリーも苦笑いをしていたが、空港の件でならメアリーが相談に乗る事を伝えると一層安心した顔になっていた。
この後、鉄道の陳情は激減した。無くなりはしなかったが問題ない程度まで減ったのだ。
その変わりにメアリーに空港誘致の陳情が増えたのは内緒だ。
アレクはノースオリオン王国を満喫していた。
「この王都アムレット中々に発展してるね。」
「北部で、ローエム帝国以外ではここだけでしょう。」
「パウルも分かってるね。いいね。いいねー。」
「へい、え、あ、いやアレクス様からかわないで下さい。」
「SEオリオン王国以外はアレクでいいからね。面倒だからさ。」
「はい、アレク様。」
アレクはパウル、ボアン、ヘレンを連れてアムレットを見て回った。この地は急激な発展により王都民の生活が一変していた。以前の旧ドレイブ王国時代はドレイブ第2の都市といわれ優越感があった。ローエム王国との戦争で負け、国を割譲された時には民たちは震えあがっていた。これからの自分たちはどうなるのか。過酷な労働者として扱われるのかと、戦々恐々としていたのだ。
所がいざ蓋を開けてみれば、今までの生活が貧困生活だと理解したのであった。今は魔道具があり、便利な道具が沢山と溢れている。仕事もあり、女性の仕事も選べるほどあるのだ。旧ドレイブ時代より収入も3倍から4倍になっている。それも女性が働けるように成ったからである。
平民達はオリオン王国を神の様に崇めているようだ。レオンは神の使いとして崇拝されている。
レオンの雰囲気がそうさせているようだ。アレクはその事を聞いて、嬉しくなりニヤニヤしていたが何やら又、良からぬ事を考えているようだ。
旧ドレイブ王国に帰らずにオリオン王国に残った貴族たちも生活が豊かになっていた。爵位も下がり領地も減らされていたが、収入は倍になっていた。オリオン王国の指導により、資金をオリオン銀行から借入、農地開発をした結果、農地が増え、高く売れる穀物、鉱山開発、酒造りなどを行った。
貴族たちは、領地が半減した時より収入が上がっていたのだ。レオンはノースオリオンを完全に掌握していた。
オリオン王国に残った貴族の中にはドレイブ王国に親類縁者が多くいる。今ドレイブ王国ではノースオリオン王国の話題が出ない日がない。ドレイブ王国は追い込まれていた。
このままでは国が衰退していく。貴族が離れていくのだ。ノースオリオン王国にすり寄る貴族が日増しに多くなっていくのだ。
ドレイブ王国も開発を行ってはいる。だが金が掛かるのである。金は沸いてこない、ドレイブ王国は資金をやり繰りしながら少しずつ開発をしている。だが各貴族領は貴族が開発をやるのだ。ドレイブ王国貴族達にはそんな資金は無い。そんな中でも貴族の中で農地開発等を出来る者がいる、ノースオリオン王国に親類縁者がいる貴族達だ。
その貴族たちはノースオリオンの貴族からオリオン銀行を紹介される。面談、審査と貴族には耐えられない事も言われるが、的確な説明と提案で徐々に理解していく。理解できた者が資金を借りていくのだ。それは徐々に広がりを見せていった。
ドレイブ王国国王の力が弱まっていた。ドレイブの貴族の圧力に対抗できなくなっていたのだ。
ドレイブ王は、色々と模索をしていた。何かないか、何とかしないといけない。此の侭ならばドレイブ王国は瓦解する。その事は十分に理解できている、瓦解に向かっているのが分かるのだ。
王は国が瓦解、滅びる事を避けられるのなら、いや生き延びるためにローエム帝国かノースオリオン王国に援助いや、ローエム帝国の属国なのだ。援助は今もないのだ望みはない。
ドレイブ王国が戦争に負けて王になった。非難はすべて王に集中していた、王は疲れ切っていた。
今、反乱でも起きれば一族は全て処刑されるだろう。何とか一族を守る手立てをいなければいけない。
王は結論の出ないままにローエム帝国とノースオリオン王国に親書を出した。内容はドレイブ王国の事情と一族の保護を願ったものであった。
アレクは、アムレットの町を見た後に王城へ戻っていた。
「レオン兄、王都は豊かになりましたね。」
「そうか、アレクは旧ドレイブのこの都市を一度見ているんだな。」
「そうなんですよ、あの時は急でしたが、その時の印象と全く違いますね。」
「嬉しい事を言うじゃないか。」
レオンは嬉しそうに笑っている、自分で開発を行い。ここまでの都市に育てたのだ。
「王都の民がみんな笑っていましたよ。流石レオン兄ですね。レオン兄の像が建ってましたよ。」
「・・・・・それは忘れてくれ。」
メアリーが「アレクス様、それは言ってはいけない言葉です。」
アレクは思う。レオンの容姿と雰囲気が民を虜にしているのだ。銅像の一つや二つは建つだろう。
だがレオンたちの考えは少し違う。民と一緒にありたいのだ、王として民を導くのだ、神として崇めるのはやめてほしい。
だが民の中でオリオン崇拝が始まっていた。特に貧民から脱却をした者たちがオリオン崇拝をしているのだ。貧民から貴族になった者たちの噂が広がっているからだ。数百人の貧民が貴族なっているのだ、噂に成らない訳がない。
北部希望の地。南部夢の楽園。誇張された話が民の中で真実として伝わっている。
一度流れた噂は、誇張されることはあっても、矮小化する事は無いのだ。
噂は広がるしかないのである。