134話
SEオリオン王国王都オースト
アレクは多忙であった。もう限界である。サボりたい、サボるしかない。サボろう。どうサボるかを一生懸命に考えるアレク。無駄な事であった。
SEオリオン王国全体の仕事、水の都と湖の島の仕事、自治領領の仕事、今までユリがやっていた仕事が溜まっているのだ。機人では出来ない仕事なのだ。リック達も今はいない。
そして逃げれないのだ。宰相もアレクを逃がさない様に、機人と木人がドアとアレクの後ろで監視をしている。
アレクは考える、自分一人で仕事をするからこうなるのだ。自分専用の人を雇おう。
機人にステータスカードの登録者の中で文官系無職の上位5人を雇うことにした。
文官系の無職が城に呼び出されていた。
「私はどうなるんでしょうか。」
「俺は何もやっていない。」
「私帰りたい。」
「・・・・・」
「これからどうなるんだ。」
「やあ、待たせたね。あれ。6人いるよ、なんでだ。」
機人からの通信が入ってくる。同率5位がいたのだ。能力は同じの為6人が呼ばれたのだ。
アレクは増える分には問題なしとしている。
「シルビア、パウル、アルツ、エンリケ、ヘレン、ボアン。SEオリオン王国で働かないか。」
「へぇ。」
「あ、あのう質問はしてもいいのでしょうか。」
「ああいいよ、何でも聞いて。」
「私は女ですが働けるのでしょうか。」
「ああ、全く問題なし。女だろうが男だろうが、我がSEオリオン王国では関係がない。」
「はい、働きます。働かせてください。」
旧オースト王国でも女性の就職先は無かったようだ。女は働けない、働く場所が殆どないのが現状である。6人の中に女性は2人いた。この二人は即答であった。残りの4人も報酬が提示されると即答していた。
アレクはこの6人に国王秘書官の役職を与えた。6人にSEオリオン王国だけではなく、水の都と湖の島、自治領。ようはアレクの直轄地すべての仕事をさせようとしていた。
アレクは6人に強制教育を施した。
それはアレクが迷宮核と繋がっているからだ。アレクを通して迷宮核からの情報を6人に詰め込むのだ。
これで6人は一人前以上の有能な秘書官として完成する。
アレクはまず6人にスキル玉を飲ませた。そして相手の頭に手を置き一人一人に情報や知識を詰め込んでいく。6人は突然頭の中に大量の知識と情報が入ってきたのだ。
だがその情報や知識を確認できる、物事を理解できることが分かった。6人は不思議な顔を一瞬したがスキル玉の事を理解すると無表情になった。
「諸君、気分はどうだい。」
「何か不思議な感じです。今までに無い考えが浮かびます。」
「そうでしょう、並行思考のスキル玉と多重考のスキル玉を飲んだせいだね。元々君たちは能力が高く優秀なんだよ。それを一段上げたのさ。」
「分かりました。これからよろしくお願いいたします。」
「諸君には、今から貴族になってもらうからね。王の秘書官が平民だと、何かとやりづらいだろうからね。」
6人は、準男爵、準女爵に陞爵された。
平民が、王城に呼び出されたと衛兵が迎えに来て連れてかれた。近所の人たちは犯罪者を見るような目で見ていた。だが数時間後には、貴族として護衛を引連れて各家に帰った来たのだ。家族もびっくり、近所のおばちゃんもびっくりしていた。
各家で6人は王の秘書官になった事を家族に話したようだ。ご近所を巻き込んでのお祝いが開かれた。王の手配で振る舞い酒が各1樽贈られたのだった。
翌日から6人は有能さを遺憾なく発揮していた。もの凄い能力であった。10人の話を同時に聞き分けて処理をして指示を出しているのだ。指示を出された方が理解できずに固まっている。
アレクは、6人の内2人を残して4人を連れてガレオン号に乗り迷宮都市に帰っていったのだ。
ノースト宰相は叫んでいたが、残されたエンリケとアルツに止められていた。多分、事情説明をしているのだろう。
アレクは迷宮都市に到着をしていた。
「ミル、ただいま。」
「アレクおかえりなさい。
「ファーレスも元気だったかぁー。」
アレクはファーレスをのぞき込む。ファーレスはスヤスヤと眠っているようだ。
アレクはミルに自分の秘書官を紹介し、シルビアをミル王妃付きとして仕えさせた。シルビアは迷宮都市運営を手伝う事となった。シルビアには自分の部下を選別して選ぶように指示も出していた。
慌ただしい迷宮都市の滞在も数日のみであった。アレクは北部での鉄道工事状況の視察に向かうのだ。目的地はノースオリオン王国である。
「レオン兄ぃーー。 元気ですかーーー。」
「お前は誰のマネをしているんだ。」 そりゃぁ猪木だ。
「レオン兄、冗談はさて置き本題に入りましょう。」
自分がふざけている事も忘れての一言だった。
アレクはレオンと鉄道工事の状況を確認していく。
「そうですか取りあえず工事は予定どうりですね。」
「工事は何とかなりそうだな。問題はその後だな。」
「やはり来てますか。」
「陳情がもの凄い数だ。」
「やはりここはノースオリオン王国、国王のレオン陛下の出番ですか。」
「誰のせいでこんな事になってると思ってるんだ。」
「えっ、父上ですけど。」
「うっ、そうだよな、元は鉄道の話を父上が安請け合いしたからだな。」
レオンは知らない。ハロルドが鉄道工事を請け負ったが、根本の発案者が目の前にいることを。
「ほっときましょう。今は何も出来ませんよ。」
「そうなんだがな。メアリーの親父も来ていてな。担ぎ出されたようだな。」
「それは困りましたね。」
「メアリーが可愛そうでな。」
「では、僕が、いえ私が会いましょう。この地図でカールソン男爵の領地はどこですか。」
アレクはレオンに地図で位置関係を確認していく。
「そうですね、微妙な位置ですね。」
「そうなんだよ、この位置だと線路を伸ばすと他に行けない。」
「分かりました。鉄道は引けませんが、他を与えましょう。」
「他なにかあったか。鉄道に変わる物なんてないぞ。」
「有りますよ。レオン兄はオリオン航空の代表者ですよ。」
「空港か。そうかこの位置なら定期便と貨物便で他の空港を繋ぐのに丁度いい距離だな。」
「空港を餌にカールソン男爵に周りの貴族を黙らせましょう。」
カールソン男爵、メアリーの父である。カールソンは本来大した事のない男である。だがメアリーがレオンと結婚して状況が一変したのだ。今やメアリーはノースオリオン王国の王妃である。カールソンはメアリー関係でローエム帝国が配慮した結果、領地替えとなり通常の男爵領の2倍の広さを持ったのだ。その代わり場所が国の外れである。農耕地には良い場所である。
カールソンは近隣の貴族たちに煽てられてここまで来たのだ。遠く離れたノースオリオン王国まで、カールソンも進展のない事に困っていた。メアリーの父として期待されて来たのだ。だが相手にもされない、国が違うと追い返されたのだ。
貴族達も困った。予定が狂ったのだ。カールソン男爵を使えば話を聞いてくれると思っていたのだ。
こんな困っている貴族たちに一通の手紙が届いたのだ。