131話
オリオン王国王都ブレスト
「父上、報告があります。」
「聞きたくない。帰れー、聞きたくない。」
「あれ、もう誰かが言いましたか。」
「何で、オーストを滅ぼした。」
「父上。ミルトン王国を救うためです。」
「ミルトン王国を救う。その事は理解できる、だがオースト王国を滅ぼす事は無かったのではないか。」
「いいえ。いずれは滅んでいたでしょう。少し早まっただけです。」
「ハーーーーー。もういい。でぇ、用件は何だ。」
「父上ぇぇー。それはモッチのロン。オースト王国をオリオン王国の国土にすることです。」
「何が、モッチのロンだぁー。もちろんだろうが。」
「いいかアレク。オースト王国はい、ら、な、い。」
「えええええ。そ、そんなことは言わないでください。父上様。」
「アレク、情報によると、お前はオートス王国で勝手に爵位を与えたそうだな。」
「・・・・・」
「爵位を与える事の出来るのは誰だ。」
「・・・国王ですね」
「そうだ国王が爵位を与えることが出来る。もうお前は国王なのだな。いやーー、目出度い。」
「そ、それは無いでしょう。父上あれは仕方ない事です。貴族を纏めるのに必要だったのです。」
「仕方なくとも、アレクが行ったことだ自分で責任を取れよ。いやー。目出度いな。」
「・・・・・・」
ハロルドは、戦争をするたびに領土を取ってくるアレクに困っていた。まだ領地が隣地であれば考えようもある。だが飛び地も飛び地なのだ。あるだけで負担になるのだ。
オリオン王国は飛び地が多い。アレクのせいでもある。
アレクも考えていた。素直にはオリオン王国に併合は出来ないと思っていた。
「父上、提案があります。」
「おう、なんだアレク。聞いてやらんでもないぞ。」
「ありがとうございます。オリオン王国は大きくなりました。関係国も多いです。カイン兄の獣王国もそうです。そこでオリオン王国連合にしましょう。」
「はぁー。王国連合だと。なんだそれは。」
アレクはハロルドに対して説明をする。オースト王国の事は自分でやった事だから国王となるが、オリオン王国としても関係を切るわけにはいかない、自分の領地もある。兄弟たちもいるからだ。そこでオリオン王国を盟主としたオリオン王国連合を共同体として各飛び地に国王を建国して連合にしてはどうかと提案をしていた。北部領土もレオンが王となりノースオリオン王国でどうかと話してしたのである。
アレクは考えていた。名称だけ変えて今まで通りにやれるだろうと。
「オリオン王国の関係国と分かるようにしておきましょう。その方が都合が良いことがあります。」
ハロルドも悪くないと思っていた。カインの獣王国の関係性が微妙なことがあるからだ。カインにオリオン王国の爵位が無ければ無関係の国となるからだ。
「伯爵会議を開くぞ。アレク招集しろ。」
「はい、父上様ーー。すぐに手配します。」
アレクの動きは素早かった。
翌日にはすべての7伯爵が王都ブレストに集まっていた。
「アレク、なんで俺を呼ばないんだ。俺も戦いたかった。」
「カイン兄、緊急だったんですよ。次は呼びますからね。」
ハロルドはこの会話を聞いていた。こいつら戦争を何だと思っているのだ。頭が痛くなってきたのだ。
「始めるぞ。席に着け。」
ハロルドはアレクの提案と、自身の考えを混ぜ合わせて話をしていく。
オリオン王国は飛び地が多い。カインの獣王国はカインが自分で建国をした国である。カインにオリオン王国の爵位が無ければ無関係の国となる。そこでオリオン王国連合として各国が連合を組むと話をする。カインの獣王国、レオンのノースオリオン王国、アレクの旧オースト王国、エルフ領を国に戻しエルフ国、ドワーフ国は保留、そして大森林を国土としているオリオン王国が盟主となり各国を纏めるのである。ようは今とあまり変わりがないのだ。
オリオン王国連合の参加には、オリオン王国の爵位を必要とする。
今の伯爵領はそのままの継続が決まっていった。7伯爵は公爵となる事も決まった。
そしてオリオン王国連合の最高決定機関となるのだ。オリオン王国国王夫妻と7公爵がそのメンバーとなる。
カインは喜んだ。今までと変わらずにマリア、イリアからの行政と財務を担当してくれることが嬉しいのだ。
実は他の兄弟たちもホッとしていた。一番大変なところだからだ。
オリオン王国の正式な役職が決まった。
オリオン王国 国王 ハロルド・オリオン連合盟主
オリオン王国 宰相 ルドルフ・オリオン公爵、王太子
オリオン王国 外務大臣 エレメル・オリオン王妃
オリオン王国 北部大臣 レオン・オリオン公爵
オリオン王国 内政大臣 マリア・オリオン公爵
オリオン王国 財務大臣 イリア・オリオン公爵
オリオン王国 軍務大臣 デリック・グローブ公爵
オリオン王国 陸軍将軍 カイン・オリオン公爵
オリオン王国 空軍将軍 アレクス・オリオン公爵
このオリオン王国の役職はオリオン王国連合の役職ともなる事が決まった。
この役職者の下に各国の外務、内政、財務等が付くのである。今までは成り行きで行っていた仕事も正式の物となったのだ。
「アレク、お前の国の名前はどうするんだ。」
「そうなんですよ、オースト王国では嫌なので変更します。考えているのはサウスオリオンかイーストオリオン、エスイーオリオンか迷っています。方位的にはエスイーなんですよね。」
「まぁ、国が広がれば位置も変わるし何でもいいだろう。」
「・・・・・・まぁそうかも。」
「だろうー。」
「アレク、お前のせいだな。」
「どうしましたレオン兄。」
「どうしましたじゃ無いだろう。アレクのせいでノースオリオン王国だと。やってられるか。」
「レオン兄。少しお話が。」
アレクはレオンに小声で、結局は名称が変わっただけで、みんな手伝ってくれると説明をした。が通じなかった。アレクはこの時ほど能力解放を行ったことを後悔したのだ。
アレクは少しだけ権限が上がり、少しだけ仕事が増えるだけと思っていたのだ。
大分甘い考えであった。アレクは勘違いをしていた。カインの獣王国の小国運営と自治領主の迷宮都市の運営では省の仕事が増える程度と思ってしまっていた。間違いである。国の大きさを完全に忘れていたのだ。アレクは伯爵会議が終った時に指摘をされたのだった。
「アレク、これから大変よ。あんな広い国、私も手伝うけど全部は無理よ。」
「あっ、そうか広いんだ。拙いな。マリア姉、優秀な機人を用意しますからお願いいたします。」
「出来る限りは協力するけど、限度があるわよ。機人5体でお願いね。」
「私にも、5体お願いね。」
「マリア姉、イリア姉。必ずご用意しますので。どうか宜しくお願いします。」
アレクは、迷宮都市に帰ってきた。
ミルたちに報告をするためである。