13話 魔化新商品
アレクは、オリオン領都の商店街に来ていた。
商店街は、現在規模拡大中だ。
この商店街は、住宅地を中心に中央を広場として、十文字にメイン通りを造った。簡単に伝えると田の形だな。
商店街のメイン通りには、商店が軒を連ねている。まだ中心地のみだが。
商店街の一等地、広場前にオリオン家直営の魔化量販店がある。
この量販店は、本日、新商品の発売日で事前の告知により、大勢の人が広場に集まっている。
愛想のよい女性が一人店の前に出てきてよく通る声で、「みなさま~、これから新商品の発表をしますので、聞いてくださいね~」
集まっている人が注目するのを女性が確認して、一人の女性に声をかける。今回の新商品、商品体験をしてくれれば、商品を無料で、差し上げますと交渉をする。
「皆さま、こちらの方に、商品の実体験をしてもらいます。」
女性に、髪を濡らしてもらい、ドライヤーを取り出す。女性にドライヤーをかける。櫛を入れながら、サラサラの髪に仕上げていく。女性は大喜び、他の女性も小鼻を膨らまし、鼻息が荒い、目も輝いている。買う気満々のようだ。
男性陣は、興味を失っていた。 それは仕方がない。
「お美しい女性の皆さま、いかがでしょう、髪がこんなにきれいでサラサラになります。今、ご購入の方「だ・け・に」、この手鏡をプレゼントいたします。限定300個ですよ~~~・・・」
「そこのかっこいいお兄さん、彼女にプレゼントしたらいいことがありますよ~。」
「「「「「エッ俺の事かなー。」」」」」
4,5人の男が独り言を言っていた。もちろん買って行く。
従業員
「いやぁ、売れたね」
「売れました、565個も売れましたよ。」
「あれ、限定300個じゃないの?」
「限定300個の後に、小声で以上って言っていたの、聞こえませんでした~」
「そっ、そうなんだ」
「今回のドライヤーを月内で1000個売ると、特別報酬が出るんですよね」
「そう、直売店で1000個。余裕で行くね。」
「一日で565個ですよ、今日1日ですよ」
「2000個売ったら、特別報酬2倍になるかな」
「へへへっ、なったらいいなぁー」
この月、量販店は過去最高額を売り上げた。
新発売のドライヤー販売に伴い、来店客が多くきた。他の商品も大量に売れたのだ。
特別報酬は、給料5か月分が支給された。
アレクは隠れて様子を見ながら店を後にした。
商店街を、キョロキョロしながら見回っていると、一人の女の子が、広場の隅で座り込んでいる。
アレクは、女の子に声をかける。
「どうしたの、具合がわるいの?」
女の子は、涙ぐんでいる。事情を聴くとこの子は、オリオン領での働き口を見つけ他領からオリオン領まで来たが、仕事内容が肉体労働でとても女の子が出来るような仕事ではなかった。雇ってもらえず、他にあてもなく、お金も無くなり、途方に暮れていた。
「仕事内容を、斡旋業者に確認しなかったの」
「確認したんだけど、だれにでも出来る仕事だからって」
「まぁ、だれにでも出来るが、体力のない人は無理だろう。力仕事だし」
人数が一人足りなかったみたいで、人数合わせで連れてこられたようだ。
「家に戻らないの」
「戻れないです。」
村には仕事がなく、外に出るしかなかった。オリオン領で働き、他の兄弟を呼ぶつもりでいたようだ。
「読書きは、できる?」
「できません。」涙ぐんでいる
「何とかしてあげるよ」
アレクは、女の子の手を繋ぎ、魔化量販店の寮に向かう。
寮母さんに、賄いを出してもらい女の子に食べさせた。寮母さんに、補助の仕事をさせるように頼む。
「美味しいです、こんなに美味しいもの初めて食べました」
「よかったわ、私の自慢の料理だからね。これから宜しくね。」
「はい、頑張ります。よろしくお願いいたします。」
女の子は、席を立ち、深々と頭を下げる。
「よかったね、あとこれ」
「何ですかこれ?」
「読書きの練習テキスト。これで読書きを出来るようにしよう。寮母さんが教えてくれるから、大丈夫だよ。読書きが出来ると、給料の高い職業につけるから、他の兄弟を呼べるようになるよ。」
寮母さんに、読書きそろばんまで教えるように頼む。
急激に人口が増えているため、騙されて連れてこられる人、あてもなく来る人と色々いるが、ものになりそうな子たちに声をかけ助けていた。
次は、新しい施設、公衆浴場に顔を出し、問題点を探していく。
この公衆浴場は、大人気なのだ。
領都で一番、人の集まる場所になっている。
出稼ぎ労働者の寮・量販店の寮・オリオン家の寮、その他にシャワー室はあるのだが、浴槽がない。
領都の住人の家にはシャワー室もない。人は風呂を求めて集まる。
入浴している人たちは、はーーっ、とか、ふーーーっ、とか、ほっ、とか色々な言葉が出てきている。
ひろ~い、お風呂は、癒される。