128話
アレク艦隊は、ルーアニア王国にミルトン王国から進入をしていた。
他の艦隊も高度を上げ発見されない様に大きく回り込こむ様に進行している。各艦隊も順調に行動中である。
アレク艦隊は、目立つように低空で飛行していた。そしてルーアニア王国の王都上空に到着したのだ。
「まだ敵軍は王都に到着してないね。僕は一旦下に降りて来るからね。」
アレクはルーアニア王国の王城に出向いていた。
そこには、ミルトン王国のゲートル伯爵が待っていたのだ。
「ゲートル男爵、お久しぶりですね。」
「アレクス殿、お久しぶりです。ですがアレクス殿、私は今は伯爵になりました。」
「ああ、ごめん、ごめん。ゲートル伯爵失礼をしました。」ニコ。
「ははは、相変わらずですな。アレクス殿は、戦でも緊張感がない。ははは。」
「まぁ、勝てる戦しかしませんからね。勝つのに緊張もないでしょう。」
「失礼、私は、ルーアニア王国の将軍である。デストロと申します。今勝てると申しましたか。」
「初めてお目にかかる。迷宮都市自治領主アレクスです。デストロ殿、勝てますよ。作戦は・・・・」
アレクはデストロ将軍とゲートル伯爵に今行動中の艦隊の説明をした。そして今後の作戦行動を告げる。
「敵3か国は、あと少しでこの王都を包囲してくるでしょう。だが今はアレク艦隊が上空にいますから包囲しても攻撃を躊躇してくるでしょう。まぁ包囲して様子見でしょうかね。」
「でしょうな。艦隊の噂は広まっています。無暗な攻撃はしないでしょう。」
「そうかな、艦隊と言っても5,6隻の飛行船だ、敵は1国5万で15万もの兵力でこの王都を包囲するんだぞ。」
「だから、包囲だけなんですよ。各国が自国以外の所に艦隊が移動したら、他の国が攻撃を仕掛けてくるんですよ。各国は自軍の被害を抑えたいですからね。」
「そんなに上手くいくもんか。総攻撃が来たらどうするんだ。」
「あんた、バカか防衛するに決まってるだろう。自分の国だろう。」
「バ、バカだと取り消せ、この小僧が帰れ、お前なんか要らん、帰れ。」
「そうですか、いりませんか、では帰るとしましょう。」
アレクは帰ろうと城を出ていこうとするが、ゲートル伯爵に土下座されて止められていた。
「ゲートル殿、やめてくださいよ。恥ずかしいですから。」
「いいえ、止めません。留まると言ってもらうまでは止めません。」
「分かりましたよ、ただし作戦上、障害になる人は排除しますよ。」
「ありがとうございます。ルーアニア王国、国王陛下にお会いください」
ルーアニア王国は、人材がいなかった。3か国の侵略により有能な将軍たちは祖国防衛の為に侵略軍を迎え撃った。だが、ルーアニア王国の総戦力は4万に満たなかった。1国だけでも劣勢の状態である。この状態でルーアニアの将軍たちは各地で抵抗をして侵略を遅らせていたが、敵の戦力が4倍以上だったために、ルーアニア軍は破れ、将軍たちは戦死を遂げていたのである。
ルーアニアに王国に残っているのは、コネで地位についている将軍たちである。
アレクは、ルーアニア国王と会見をしていた。
そこでルーアニア軍の全軍指揮権を約束させたのだ。アレクは国王に作戦の内容を説明をした。国王は理解し軍の総指揮を任せたのだ。
ルーアニア軍の中で下士官だが優秀な者を集めてアレクは昇格させていった。
ルーアニア軍1万の兵力が残っていた。だが戦力となるのは半数の5000である。
アレクは5000を5隊に分け戦時昇格した士官に任せていった。その5隊をホリーに任せ機人と木人も配置していった。ミルトン軍は10000の兵をゲートルが率いて来ている。アレク隊がオースト王国、ルーアニア軍がブライ軍、ミルトン軍がベレーヌ軍を正面からの攻撃を受け持つ事となった。
そんなルーアニア軍を編成しているうちに、3か国はルーアニア王都に姿を見せ始めていた。
「予定より早いね。敵も占領を後回しで急いで来たのかもね。」
これはアレクの予想が当たっていた。アレク艦隊が低空で王都に進行しているのが分かり、各国は敵の増援が来る前に王都を攻略してしまおうと思っていたのだ。
敵の3か国も飛行船が6隻しかいない事を安心したのだ。だが総攻撃を躊躇してしまったのだ。
自国に被害が及ぶのを嫌がったのだ。この時に3か国が15万での総攻撃を仕掛けていれば、ルーアニア王国は大打撃、いや崩壊をしていただろう。アレク艦隊も崩壊の危機を迎えていたかもしれない。
だが、敵軍は攻撃を出来なかった。3か国という3つの指揮権があったからなのだ。
王都を挟み、両軍のにらみ合いが続いたのだ。
2日後、ついに戦端が開かれようとしていた。三か国軍が総攻撃を仕掛けようとしていた。
「今更総攻撃を仕掛けても遅いよ。2日遅いね、到着直後だったら敵が勝っていたかもしれなかったね。」
「報告します、敵後方にユリ艦隊、マック艦隊、リック艦隊が到着くしました。」
「間に合ったね。各艦隊に攻撃命令を出せ。」
「アレク隊もでるぞ。艦隊が攻撃後に正面敵を殲滅する。戦闘は鎧機人隊が行く。待機してろよ。
レイカのワイバーン隊はルーアニア軍の援護に回れ。各艦は魔動機関弾で各軍の味方を援護しろ。」
「報告、敵後方が混乱しております。艦隊の攻撃開始しました。」
「よーし。でるぞーー。」
「おおおおおおお」
アレク隊の各小隊たちは鎧機人と木人兵の後ろに付く。鎧機人たちが取りこぼした敵兵を殺していくのだ。小型艦も敵軍に魔動機関弾を撃ちこんでいく。
「ダダダダダダッ。ダダダダダッダダダダ、ダダダダダ」
1秒で5発の魔動弾が放たれていく。敵兵は死んだことも分からずに死んで往くのだ。
鎧機人も槍を持ち一突きで二人、三人と殺していく。鎧機人50体、木人兵300、アレク隊100の合計450の隊に5万人の敵が恐怖で固まっていた。後方からも別艦隊の攻撃を受け、横には味方の軍勢がいるために身動きが取れない状態となっていた。
3時間後、敵軍で立っている者はいなくなっていた。
「戦闘中止。生存者を救助せよ。」
ルーアニア国王は城内からこの戦闘とみていた。「す、凄い。これは戦闘ではない。虐殺だ。」
ルーアニア国王がこの戦争で感想を述べたのはこの時だけであった。以後、戦争に関して何も感想を言わなかった。
3か国総勢15万の兵で戦死者11万人生存者2万人、逃亡不明者2万人であった。ルーアニア王国軍、ミルトン軍の戦死者は1200人であった。アレク隊の戦死者は10人だった。
アレクは敵味方を関係なく治療した。「助かるなら助ける」と一言だけ呟いていた。