116話
アレク、迷宮都市に戻ってきた。
湖畔の村でくつろいでいる。
「やっぱり、家はいいね。」
「やっと、お帰りになりましたね。」
「ごめんね。当分は何もしない予定だからね。」
「それでは、一緒に居られますね。」
「そうだね。一緒に居られるね。」
二人は、忘れていた。ローエム帝国で、マリウスとエルティナの結婚式が近いことを完全に忘れているのだ。
思い出すことを祈ろう。
二人は数日間、湖で釣りをしたり、都市に出かけて買い物をしたり、食事に行ったりと割と忙しく過ごしていた。
「今日は、どこに行こうかな。」
「そうですね、お家でまったりもいいですよ。」
「んー。大森林の湖の島に別荘でも建てようかな。」
そこに通信が入る。
「奥様、エルティナ様より通信が入っております。」
「そうですか、では通信室に行きます。」
数分後、ミルは慌ててアレクの所に駆けてくる。
「ア、アレク、大変です。10日後エルティナの結婚式です。」
「あーー、そうだね。急いで支度しないとね。ローエム帝国に向かわないと。」
二人は、慌てて支度をしてドラゴンを連れて、ガレオン号に飛び乗りローエム帝国に向かうのであった。
ローエム帝国
二人は、忘れていたとは思えない様な完璧な準備であった。
それはミルがエルティナの結婚式の為に事前に準備をしていたからだ。妹思いのいい姉である。
「お姉ちゃん。もっと早く来てよーー。」
「エルごめんね。」
「ううん、いいの、お姉ちゃんのお姿見れたからいいの。」
ミルは、もう。ウルウルしている。
「エルちゃん、結婚おめでとう。」
「アレクスお兄様ありがとうございます。」
アレク、感動だ。初めてのお兄ちゃんである。
アレクは、大喜びとなった。気前が良くなる。気が大きくなるのだ。
アレクはエルちゃんが、どらちゃんを連れているのを見つける。
なんか寂しいな、アレクはどらちゃんのドラゴン用の、蝶ネクタイを作った。出来栄えは最高である。
調子に乗ったアレクは、他のドラゴンにもワンポイントでリボン、ネクタイ、スカーフ。さすがに小さくなったドラゴン用である。ドラゴンも小さくなると丸っこくなり可愛いのだ。ワンポイントの飾りが似合っている。特にどらちゃんの黒い蝶ネクタイは似合っていた。大人気となった。
「みんなが着飾っているんだから、ドラゴンもオシャレしないとね。」
「ドラゴン達も何か嬉しそうですね。」
「目つきの悪いのは、ピンキーだけだね。」
「ピンクで可愛いのに、鋭い目をしてますね。」
「何か獲物でも狙っているのかな。ハハハ。」
「アレク、少し話がる。」
「あっ、父上。何かありましたか。」
「大した事ではない。」
「ミルは、エルちゃんと話でもしていてね。」
「はい、エルと一緒にいます。」
アレクとハロルドは、別室に移った。
「父上、話とは何でしょう。」
「ああ、それなんだが、ローエム帝国から打診があってな。迷宮都市から鉄道を引いてるだろう。それを北部全体に伸ばしたいんだ。帝国も人々の移動も多くなってきている。物も大量に移動するようになっていてな。鉄道に目を付けたようだな。」
「そうですか、中々の見識ですね。僕も前に考えましたが、領主の土地に鉄道を通すのは難しいと思いまして止めました。今のローエム帝国の力なら各領主も何も言えないでしょうね。」
「ま、そう言うことだな。」
「鉄道を、何処に通すかで揉めそうですね。」
「必ず、揉めるな。そこでだなアレクに一番効率の良い線路計画を作成をしてもらいたい。」
「それは、ローエム帝国内ですか、それともイングリット王国、ドレイブ王国、ルービス王国を含めた物でしょうか。」
「ローエム帝国内だ、だが国外にもいずれ繋げるだろうな。」
「そうですね、人、物、金が動いていればその場所は活性化していきます。そうするとまた広がっていきます。国外に繋げるのも考えておきましょう。」
「あっ、父上。北部オリオン領の領都と北部首都とこの帝都を先に鉄道を引いてしまいましょう。この3地点を起点に考えていきましょう。」
「そうだないずれ南部にも鉄道を引くだろからな。その時は、大陸が一つに繋がるかな。ハハハハ。」
「そうなるといいですね。」
それは間違いである。この大陸は大きい。全体の6分1ぐらいしかまだ把握をしていない。
ハロルドとアレクは、貴族たちのサロンに顔を出し挨拶をしていた。
「ハロルド殿。」
「おお、お久しぶりですな。宰相。」
ローエム帝国宰相のトロレス・リームスが声をかけてきたのだ。
「ハロルド殿、皇帝陛下からのお話はお聞きかな。例の鉄道の件だが。」
「今も話していたところです。計画はしていくのでご心配なく。」
「あ、いや、それなんだが、息子の領地に少しでいいから配慮をお願いしたい。」
「宰相、宰相もお分かりでしょう。それを宰相閣下ともあろう者がやっては示しがつきません。」
「ハロルド殿、分かっているのだ。それでもお願いしたい。この通りだ頼む。」
リームス宰相は、サロンの中で、貴族の見ている前で、深々とお辞儀をしていた。
ハロルドも、これは不味いと思い、宰相を別室へと誘った。
「リームス殿、何を考えているのだ、人前での行動ではありえませんな。」
「申し訳ない。これしか方法が無かった。申し訳ない。」
また、謝ってきたのだ。
「分かりました、事情を説明してください。」
リームスの話は、ローエム王国時から始まる。ローエム王国がルービス王国、イングリット王国の領地を割譲させた時に、リームスの子供2人に、伯爵位を渡す密約があった。そして無事割譲をして領地割を決めるときにローエム帝国となった。貴族達から嫉妬、妬みで反発をくらい、領地が僻地に追いやられてしまったのだ。ローエム帝国の貴族の力は弱まった。だがそれはローエム帝国の皇帝陛下に対して弱くなっただけである。
貴族同士なら、数がものをいう。リームスは、他の貴族から村八分状態にされているのだ。息子の領地も同じである。特に領地は、僻地でもあり輸送も大変のようだ。
ハロルドは思い出していた。あの時、宰相の協力が無ければスムーズに事は運ばなかった。協力は必要であった、そして今この状態になっている。
「一度、アレクに現状を見に行かせましょう。アレクに鉄道の件は、すべて任せていますのでアレク次第です。」
ハロルド、アレクの承諾なしの丸投げだ。
アレクはその頃。
「このプリン美味しいね。湖の村に店出さないかな。」
「ケーキ屋さんが出来れば毎日でも通います。」
「ミル、毎日は拙いでしょう。せめて屋敷に毎日取寄せにしないと、自治領主の奥さんが食べにいったら住民が迷惑するよ。」
アレク、君もずれているぞ。