114話
オリオン王国王都ブレスト
アレクは、ハロルドの執務室に向かっている。
「父上、アレクです。入りますね。」
「何だアレク、突然にどうしたんだ。」
「獣王国の事で相談がありまして。」
「相談、如何した。」
「あのですねーー。戦争になりました。」
「この馬鹿者ーーーー。」
まだ戦争には、成ってはいない。アレクが、獣王国に帰ってから戦争をするのだ。
だがアレクは、もう戦争をしていると報告をする。止められるのが分っているからだ。
「えーーっとですね。隣国の国が飢餓状態でありまして、それを救うために仕方なくです。」
「仕方なくで済むか。この馬鹿者が。」
「すいません。」
アレクは、必至にマニスト国の現状を説明をする。ハロルドも怒ってはいたが、アレクが無暗に戦争などしない事は分かっている。 多分。
「本当の所はどうなんだ。」
「はい。実はですね。戦闘はまだしていません。僕が獣王国に帰り次第、侵攻します。」
「民の飢餓を救う、これは理解は出来る。だがそれから如何する。」
「獣王国に吸収します。そして獣王国を大きくしていきます。グラムット帝国との戦争は近いうちにまた起こります。オリオン王国が主力として戦争になるでしょう。他は実際にあてになりませんが、カイン兄の獣王国は違います。オリオン王国の盾、剣になります。今のうちに獣王国に力を付けてもらい、オリオン王国と共同で、戦えるようにしておかないと後々困るでしょう。」
「獣王国が侵攻するのは分かった。だが、人間の国だろう。獣王国で納得するのか。」
「納得はしないでしょう。侵攻直後の問題は無いと思います。支援物資を出しますから、何も言わないでしょう。その後は必ず揉めます。」
「どう対応するつもりだ。」
「オリオン王国の王国民になってもらいます。」
「はーーー。」
ハロルド、一気に疲れがきたーー。ノックアウト寸前だ。
「いらん。」
「父上ぇ、つれないことを言わないでください。」
「もう、国土も民も十分に間に合っている。いらん。」
この話は、一時保留となった。
アレクが、獣王国に帰属するように、民を説得してみると言ったからだ。ハロルドは信用していなかったがもしかしたらと思ったようだ。 無理だろう。
こうして、晴れて、堂々と、獣王国はマニスト国に侵攻が出来るようになった。
アレクは、オリオン王国の王都ブレストでもマニスト国の現状を宣伝をして回った。それと同時に物資の手配から艦隊の再編を行ない侵攻の準備をしていったのだ。
アレクは準備が整ったところで、獣王国に艦隊と物資を満載にして向かう。
獣王国
「アレク、遅いぞ。」
「これでも急いだんですけどね。」
「父上の了解は取れたのか。」
「一応ですが、取れました。保留部分がありますけど。」
「まぁ、その辺は任せるよ。」
「・・・・」
カイン軍の侵攻準備は整っていた。獣人たちは、待ちきれずに爆発寸前になっていた。
アレクは、マニスト国の侵攻ルートを地上と上空の2つを予定している。地上は、カイン軍が率いて侵攻をする。それに合わせて、アレクが上空から侵入する。
「カイン兄、国境を越えたら、一部は全力で首都を目指してね。後の部隊は、民たちの支援物資を配ってもらうようにお願いね。」
「分かってるって。任せろよ。」
「支援をする時には、必ず人間を還して行ってね。」
「そのことは、徹底させてるから大丈夫だよ。」
「地上軍は、明日出発かな。明後日には首都に侵入出来るだろうから。僕も明後日に首都に侵入するよ。」
「おう、明後日に首都で会おうな。」
その夜。カインは、マニスト国の国境に向けてカイン軍が出陣していった。
アレクは、2日後に合わせるように艦隊を発進させていった。
マニスト国、首都上空。
「分かっていましたけど、何も抵抗されませんね。」
「そりゃそうだろうリック。空の上の攻撃手段なんか持ってないだろう。」
「報告、カイン軍が首都に侵入していきます。抵抗はないようです。」
「戦う兵も無くなっていたようだね。こちらも動くぞ。艦隊は首都上空で待機。ガレオン号のみ城に強行着陸するぞ。」
「はっ、了解しました。艦隊は上空待機いたします。」
ガレオン号はマニスト国の城に強行着陸を行なった。
「空兵隊は城に突入せよ。」
「おおおおおおー。」
「師匠は、突入しないのですか。」
「今回は、やめとくよ。手柄をみんなに上げさせたいからね。」
「そう言うことですか。了解しました。」
「マック、艦の警備を厳重にね。」
「はい。師匠。」
マニスト国の城は陥落をした。マニスト国の兵も食料不足、給料の遅配により兵が集まらず、抵抗らしい抵抗も出来ずに降伏となった。
カインは、民の支援物資を配るために各地を回ることになり、アレクは、マニスト国の指導者と面会をすることとなった。
「初めまして、私は、獣王国作戦参謀長のアレクスです。」
「・・・・・・・」
「しゃべれないのですか。」
「・・・・・・・」
アレクは、その男の足を、ナイフで刺した。「ぎゃぁぁぁ。」
「喋れるじゃないですか。お名前は。」
「・・・・・」
アレクは、もう一本ナイフを取り出し刺そうとする。が喋りだした。
「ま、待ってくれ喋る。喋るから。」
「それでは、お名前は、」「アントルト・マニストだ。」
「おぁ、国の名前ですか、マニストさん。」
「・・・・・」
「マニストさん、あなた死にたいですか。」
「・・・意味が分からんな。」
「そのままの意味ですよ。マニストさんは、生きたいのか、死にたいのか。と聞いてるんです。」
「生きたいに決まってるだろう。」
「えっ。そうなんですか。私は、マニストさんが死にたがりかと思いましたよ。この国には兵もいません、獣王国が宣戦布告をして侵攻してきたのに逃げないでなぜ此処に居るんです。敵国に、獣王国に殺されますよ。」
「・・・・・・・」
「私は、別にあなたが死のうが生きようが関係ありませんので、数日後に処刑します。」
「ま。待ってくれ。死にたくない、待ってくれ。た、たのむ。」
マニストの話は、呆れたものであった。グラムット帝国に協力もしている、反帝国にも協力をしている。双方にいい顔をしていたが、それがばれて相手にされ無くなったしまった。どこからも支援を受けれず、内政も素人が集まり収拾が付かなくなっていた。国としての機能は麻痺状態であった。マニスト自身も亡命はおろか、民に恨まれているので、外にも出れない状態であった。
「お前は、何の為に国を興したのだ。民の為ではないのか。」
「俺は、影武者だったんだよ。本物が死んだのさ。だから側近も何もないんだよ。」
「影武者は、グラムット帝国側だったのだな。」
「ああそうだよ、だが裏切って殺されたんだ。俺は殺されるのが嫌だったのさ。だから帝国の言う通りに影武者をしていたんだ。だけど、突然、連絡が無くなり、支援が来なくなったんだ。お願いだ。俺は影武者で何もしてないんだ。殺さないでくれ。お願いします。お願いします。」
「お前な、影武者だろうが、関係ないんだよ。国の指導者が何もしなければ民が困るんだよ。お前は何もしなかっただと。何もしない事がいけないいんだよ。 数日後に処刑する。」
このマニスト、いや名無しの男は、マニスト国指導者として処刑となった。