103話
オリオン王国王都ブレスト
エレメルは、ハロルドに結果を伝える。カインには、姫が来た時にこちらに呼んで伝えようと話になった。
ミルトン王国は、返事待ちとなっているので待つしかない。
ミルトン王国
今、ミルトン王国の城内で、国王、国王妃、王女二人の4人での話し合いが行われていた。
「父上のお考えはいかがですの。」
「まだ決められん。」
ミルトン王国には、王太子、王子が2人いた。グラムット帝国との戦争で戦死していたのだ。王家には男が居ないのである。ミルトン王国には王女2人だけがいるのだ。
国王の中では、決定していた。考えるまでも無かったのだ。17歳と10歳なのだ。姉を嫁がせる年齢的にこれが一番だ。だが、ミルトン王国の事を考えると踏ん切りが付かないのだった。長女のミルティナは賢い子だ。ミルトン王国の危機にも頑張っていた。出来ればミルティナにミルトン王国を継いでほしいのだ。
10歳のエルティナも優秀だが、まだ子供だ先が見えない。
結論の出ないままに、数日が過ぎでいく。
ミルトン王国、宰相リンガーは、国王との話に臨んでいた。
「陛下、オリオン王国のアレクス様の結婚の件ですが、結論は出ましたでしょうか。」
「・・・・まだだ。考えている。」
「何を迷っておいでですか。跡継ぎの事でしょうか。」
「んー。それもある。」
リンガーはこの機会を使い、ミルトン王国の地位を上げようと考えていた。国王にその考えを伝えていく。アレクスとミルティナを結婚させる。その子供をミルトン王国の国王する。エルティナにはローエム帝国の王族に嫁いでもらう、今のこの時期なら可能だろうと、アレクスの件があるのでオリオン王国が、仲介役になるはずだと断言して言う。
ミルトン王国、オリオン王国、ローエム帝国と肩を並べるチャンスだと、この機会を逃せば、永遠に追いつかないと熱く語ってきたのだ。
国王も、この話をじっと聞いていた。ミルトン王国はこのままなら衰退していくだろう。ルミティナが優秀なだけにゆっくりとした衰退になるだろう。この乱戦の世界で王女では持たないと分かっているのだ。
ならばミルトン王国は賭けに出ていこうと決めたのだ。一時的にミルトン王国には、跡継ぎがいなくなる。だが賭けに勝てば、強力な跡継ぎが出来る。それも他の2か国との繋がりも付いてくるのだ。
「リンガーよ、オリオン王国にいけ。ミルティナをアレクス殿に、そして条件として、エルティナをローエム帝国の王族との婚姻を約束をさせる。これで纏められるか。」
「はい、必ずやり遂げます。ミルトン王国繁栄のために。」
リンガーはオリオン王国に向かう。 勝負だーー。とは言わなかった。
オリオン王国王都ブレスト
「エレメル様、リンガー殿が面会を申し込んできております。」
「そう、来たのね。貴賓室へお通して。」
「リンガー殿、いいお返事のようですわね。」
「はい、いい返事でありたいものです。」 ピキーーン。
二人の緊張感が伝わってくる。
「リンガー殿、どういう事ですの。」
リンガーは、ミルトン王国の事を説明をする。ミルトン王国の将来の為に、オリオン王国としても悪い話ではない。隣に兄弟国が出来るのだ。問題はローエム帝国が乗ってくるかだけだ。
ローエム帝国は、話に乗ると確信がエレメルにはあった。ローエム帝国には子供が多いのだ。オリオン王国がその子のバックに付く王族が出来るのはローエム帝国としても歓迎するだろう。
何しろ、エレメルはカトリーヌ皇帝妃と仲がいいのだ。
エレメルは、リンガーを伴い、急ぎローエム帝国へ飛んだ。
エレメルは、まずカトリーヌと面会をした。
カトリーヌに事情を話し、ローエム帝国としても悪い話ではないと説明をする。カトリーヌも、アレクスという起点となっている人物との関係が強化されるであろうこの話は乗っていいと判断していた。
ローエム帝国には、10歳の皇太子の子供がいるのだ。この子と結婚させれば、妻同士が姉妹である。ローエム帝国とアレクスの関係も強化されるのだ。もちろんローエム帝国とオリオン王国との関係も強化される。
カトリーヌは、エレメルに承諾の旨を伝え、後日、正式に話をすることになった。
そして、カトリーヌが動いた。ローエム帝国の皇帝と皇太子を呼び出し、説得、いやただ話を伝えただけだ。
皇帝も皇太子もアレクの重要性は十分に理解をしている。この話はローエム帝国にとって重要な事となった。ローエム帝国は、一つの案を出した。妻同士が姉妹なら少しの間、一緒に暮らさせようと考えたのだ。だがこの話は保留となり、時期を見る事となった。エレメルが嫌がったのだ。その理由としてアレクの性格を見た時に、無理だろうと判断をしたのだ。
カトリーヌも保留は承諾したが、一度は全員で顔合わせは行う事となった。
正式に、3か国による婚姻関係が成立する事となった。
エレメルは、青いすい星号でオリオン王国へ帰っていった。
オリオン王国に着くと、リンガーは急ぎミルトン王国に帰り、エレメルはハロルドに報告を行った。
「では、カインの件と一緒がよかろう。」
「そうですわね。カインとアレクは仲がいいですから一緒がよろしいかと。」
オリオン王国は、獣人の姫の到着待ちである。
数日後、バッハに連れられて、一人の狼族のかわいらしい女の子が、オリオン王国に迎えられた。
ハロルドは、カインとアレクを王都ブレストに再び呼び寄せた。
「父上、ただいま。」
「父上、決まったのですか。」
「ああ、決まったぞ。カインは獣人の子と結婚だ。まず理由を話す。その子は、十数年前に滅びた獣王王国の姫だ。獣人達が、隠し、大事に育てた子だ。獣人達の希望の子だ。獣人達の気持ちをしっかりと受け止めろ。いいなカイン。」
「はい。」
「アレク、お前は、ミルトン王国、国王の長女と結婚が決まった。それと同時にミルトン王国の次女は、ロ-エム帝国の皇太子の子に嫁ぐことになった。」
「そうですか、分かりました。」
アレクは、ハロルドの話を理解している。この結婚が、3か国の要になるだろうということを。
「結構重要な結婚ですね。」アレクの本音が漏れた瞬間であった。
アレクのお相手は、まだ到着していなかった。だが獣人の子が到着しているので、カインと顔合わせをする事になった。カイン緊張で、水をがぶ飲みしている。アレクは面白そうに見ているだけであった。
そこに、獣人の狼族の女の子が入ってきた。
「初めまして、カイン様、狼族のカミュウと申します。」
カミュウは耳をピコピコさせながらお辞儀をしていた。シッポがふわり。
カイン、ドストライクだったようだ。カインは嬉しそうに、カミュウに宣言をしてしまった。
「俺が、カミュウを獣人国の王の妻にしてやる。」
カインは拳を高く上げ、宣言をしている。カイン、自分に酔ってる。
アレクは、あちゃー、言っちゃったー。て顔をしていた。
だがアレクは、カインに協力をするだろう。カインの宣言を嘘にはしないのだ。
他の者は、カインの宣言を聞き流していた。ただのかっこつけと思っていたからだ。
カミュウは、カインの言葉を喜び、嬉しそうに笑っていた。 いい子のようだ。
その後、カインとアレクが二人で、内緒話をしていた事は誰も知らなかった。
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