10話 命名領都オリオン
オリオン領は、最初本村、奥の村、西の村と正式名称が無く、通称で各村を呼んでいた。
だがここに来て、弊害が出てきている。
人口が増え、新しい村ができたため、本村から見て、位置がずれてしまったのだ。
オリオン領の領主ハロルド、妻エレメル、長男ルドルフ、従士長デリックの4人が、話し合いをしている。
「あなた、本村の名称は決まりましたか」
「中々、名前が思いつかなくて、本村のままではまずいか」
「ハロルド様、それはだめでしょう。もう村じゃないですよ、町です」
「もう村ではないですよね、普通村に商店街とかないし」
「ルドルフ、開発計画の領地設計図があったはずだが」
「こちらにあります」
「領地から見ると本村の位置は北側だな」
「今までは、本村から見た位置で名前を呼んでいましたが、領地を中心に考えると、全く違う方角になります」
ん~~、ん~~、言いながら悩んでいた領主ハロルドが、決めた。
「ルドルフ、お前は将来オリオン男爵家を継ぐ、自分の領地だ。領主権限でルドルフに本村の命名を命ずる。ほかの村は、各村長に一任とする。」
ルドルフ、口をパクパクしながら、目が点である。
ハロルド見事な、丸投げだ。
後日、ルドルフは領都オリオンと命名した。まだ都市とはいえないが、将来を見越した命名である。
その頃、他の兄弟たちは、新しい領主館への引越し作業中だ。
この領主館、アレクが凝りに凝った造りになっている。
3階建のレンガ造りで1階を領の行政を行うスペースとし、2階を行事・客室等のスペース、3階をオリオン一家の居住スペースにした。
今までの家が、10戸ほど入るぐらい広い。
アレクはこの領主館を、魔道具で埋め尽くした。
魔石を加工した魔力タンクを造り、館内に供給し、照明・給湯・冷暖房・冷蔵庫の魔化製品を設置した。
2・3階に大きいお風呂を造り、1階に行政員用のシャワー室まで設置したのだ。
極めつけは、秘密の地下研究室(家族は承知している)まで造ってしまった。
快適生活が出来ると、アレク、ルンルン気分だ。
「マリ姉、イリ姉、このお風呂いいでしょう」
「毎日、お風呂に入れるなんて、幸せよね」
「浴槽に浸かると、は~~~って、感じよね」
「でしょう~」
3人が雑談していると、ぶつぶつ言いながら、ルドルフが歩いてくる。
ルドルフは3人に、気づかず素通りしていく。
「ルドルフ兄ぃ、大丈夫かな、何か疲れ切った顔してたね」
「大丈夫よ、あれで結構、要領がいいから。」
「2階の客室と、お風呂凄く豪華ね」
「でしょう~、最近のオリオン領はお客が多いからね、万一の為に造ったんだ。」
「まぁ、本村に、高級宿も出来たし、使うことはないでしょうけどね」
「そういえば、カインが地下室で練習したいと言ってたわよ」
「あっ、まだ入室制限の解除してなかった」
アレクは地下の研究室に向かう。
この地下室、3階からしか入れない構造にしている。
何しろ、秘密だらけの地下室なのだから。
地下室は、研究室(寝泊り可、キッチン・シャワー付き)、魔法の練習場、倉庫と、かなり広く造ってある。
アレク、住む気満々だ。
アレクの趣味部屋いや、研究室には、魔物の皮、魔石、牙、鉱石、等々の素材が山積みになっている。
魔力の通りの良い物を探して、商品にしようとしているのだ。
出来ればオリオン領内でとれる素材で商品化を考えるが、中々良い素材が無いようだ。
そんな、こんなで、ガチャガチャやってる内に、アレクは眠ってしまった。
アレクよ、もう住んでるよ。