ドッキリでした〜
僕の友人はヤクザの女に手を出していた。僕は前々から友人に手を引けと言っていた。そしたら、友人は分かったといってくれた。
そして、僕は今、目の前に木刀を持ったヤーさんがいる。友人とともに怪しげな倉庫内で正座をさせられている。
「なに、人の女に手をだしとるんじゃあ」
「いや、僕は関係ないので、帰ってもいいですか」
「黙っとれ、ボケが!!」
黙りたくはないが、黙ってるしかないらしい。僕は友人とたまたま服を一緒に買いに行って、一緒に拉致られただけなのに。なんか、三人組だった。
僕、関係ないのにどうなるのかな。こいつが殺されるとしたら、口封じに僕も殺されるのかな。嫌だな。こいつはどうなってもいいから、助けてくれないかな。
いや、だってさ、こいつさ。今、何て言ってると思う。
「あの人は、あんたと別れたがってるんだ。彼女は俺が幸せにする」
友人よ、人を巻き込まないでくれるかな。僕の命は僕のものだよ。
ヤーさんが木刀を床にパチーン。
「あの、僕小便ちびりそうなので、帰っていいですか」
「お前は黙っとれ、ボケが!!」
この人、レパートリー少ない。友達なら後で辞書を贈ってる。
「そうか、ならお前を殺さないといけんらしいな」
「殺せるなら殺してみろ。そんなことをしても、あの人はもう僕のものだ」
お前ら、その彼女の人権無視しないでくれる。ていうか、殺されるとしたら僕も一緒。仲良く、男同士で山中に埋もれたくないよー。
「あの〜」
「黙っとれ!!」「黙れ!!」
友人まで言いやがった。面倒臭くなって僕は白けた顔で周りを眺める。すると、柱の影にある看板が目に入った。手持ちできるような種類のやつなのだが、半分文字が見えている。
上の行は『ドッキ』で。下の方は『大成』だ。
ああ、そういうことか。何かおかしいと思ったんだよな。そんな現実にヤーさんに拉致されることなんて、あるわけないじゃない。あったとしたら北朝鮮ぐらいだよ。
ええ、ちょっと待て。これドッキリだとしたら、僕の印象最悪。これ、全国に流されるの、うっそ〜。いや、頑張ろうと思う。
「黙るのはお前らのほうだ。この薄ら馬鹿下郎どもめが」
ヤーさん木刀で床をパシーン。
怖ええ。この役者さん、すごく演技うまいよ。
「誰が、そんなことを言えって言った」
高感度アップ。あ、間違えた、好感度アップチャ〜ンス。
「あんたたちは間違ってる。暴力で解決して当の本人はどう思うがな」
「何を偉そうに、お前は無関係だろうが。せっかく、お前だけは無傷で帰してやろうと思ったのに」
えっそうだったんですか。あっこれ芝居だった。もともと怪我とかしないから。
「そんなのこっちからお断りだね。友人が痛い目を見てるのに、僕だけ素知らぬ不利などできるかーー!!」
カメラさん、アップでお願いします。
「お前……俺が巻き込んだっていうのに」
友人ホロホロ泣く。もっと泣け。いいぞ〜。僕がすごく見える。
「いいってことよ。それよりも、ヤーさんあんたはどうするんだよ」
「なっなに。どうするってなんだよ」
「男らしくないな、あんたも。彼女は友人に惚れてるんだよ。真の男なら受け入れるべきじゃないのか」
ヤーさんの顔がヒクつく。
「はあ、お前何様だ」
「もちろん、このままは無理だろう。落とし前ってやつが必要だ」
「ふん。そうだな。仮にそうだとしても、やっぱりケジメはつけないとな。だから、そっちの兄ちゃんを連れて行くぜ」
友人の襟首をつかもうとした手を、僕がつかんだ。
「ああ、だから僕を気の済むまで殴ればいい」
「なっなんだと」
ヤーさんうろたえる。はい、友人いいリアクションして。
「そっ、そんな俺の身代わりなんて、やめるんだ。これは俺の責任なんだ」
「幸せなカップルにそんなことさせられるかよ。ここは独り身の俺に任せな」
僕、明日ヤバイわ〜。すごいことになるわ〜。
「そうか、今どき珍しいやつだな。お前の心意気、気に入った。お前で勘弁してやるよ」
視聴率二百パーセント突破。
僕はさる靴輪を噛まされる。えらくリアルだな〜。そして、ついにヤーさんが看板を手にした。早くドッキリでした〜って言って。カメラさんどこ。
「それじゃあ、このドッキドッキ完成君看板で、お前を血祭りにするか」
えっ、なにそれ。
「ありがとう、親友。お前の分まで幸せになるからな」
ヤーさんが僕をずるずる引っ張る。
いや、えっえええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
なんか、そろそろ疲れた。後書きとか、そんなにないよ(笑)