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ゼロの世界  作者: 才谷屋
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エピソード1:良平編

 その日は澄み切った秋の爽やかな風が流れていた・・・。良平は会社の社用トラックに乗り業者から商品を引き取りに社外に出かけていた。良平は気分が良かった。昨日の夜、理由があってもう音信が取れなくなっていた、彼女からの突然のメールが届いた。それだけでも、飛びあがりそうなぐらい嬉しいのに、今週の日曜日にデートの約束まで交わしていたのだ。おまけに、朝から自分でも信じられないくらいの幸運続きであった。

道路も平日の午前中なのに、驚くほど空いている。本来ならば、業者までは最低でも1時間はかかる道のりを20分も早く着きそうだ。業者に着いた良平は、以前から生産を依頼していた商品を積み、今後の打ち合わせをした後、帰社の途についた。トラックに乗り、走りだす・・・しばらくすると・・強い衝撃が車体に響き何が起こったか考える間もなく意識がなくなる。

そして、目が覚めると白い天井が見える・・。かすかな、消毒液のにおい、頭がボーっとしているがここがどこなのか!?理解するのに長くはかからなかった。(ここは、病院・・・いったいどうして!?)意識がもどった良平はベッドの傍らにいた母親から今に至るまでの経緯を聞かされた。10月8日に仕事で業者から商品を引き取った帰り道、信号待ちをしていたところを大型トラックがハンドル操作を誤り、良平のトラックに突っ込んできたのだ。良平の乗るトラックは2t車、それに10t車の大型トラックが正面から突っ込んできたのだ本来ならば即死していてもおかしくない状態だったという。それが奇跡的に重傷ではあるが助かったのだ。なんとか、命拾いした良平だったが入院生活を余儀なくされた。

全身が痛い・・鎮痛剤を投与されているが薬の効きが悪いのか時々、全身に激痛が走る。その周期は約1時間ごとに起こり、その度に担当医を呼ぶ。しかしこの頃、良平の体に大きな変革が起こっていたのだ。それに気づくのはまだ、時間を要した。10月12日・・今日は彼女とのデートを約束した日だ・・。本当であれば、映画を見に行き、買い物をし楽しい時間を過ごす予定であったが・・それが、病院の部屋にいるとは、最低である。と・・その時、突如全身を感じた事のない激痛とともに、怪我をしている箇所が燃えるようにあつい。その激痛をともに燃え上がるような熱で意識が遠のいていく。意識が混濁している中、担当医の先生の声が聞こる。

「永瀬さん・・永瀬さん・・聞こえますか!?」「・・・剤投与、心拍数・・」

自分でも分かる今は相当、やばい状態だ・・このまま死ぬのか!?と思いつつ意識を失った。

何時間意識をうしなっていたのだろう。目を覚ました良平は、自分の体の異変に自分自身を疑った。骨折した箇所が、全身擦り傷だらけの体がまったくとっていいほど治っているのだ。完治といっていいほどだ。何が起こったのか理解できずにいると・・。担当医の先生が病室に入ってきた。入って来た先生が開口一番。

「永瀬さん・・現代の医学ではまったく信じられないことですが・・あ、っそのう・・体は完治と言っていいほどに治っています。」

「えっ、なんと言われましたか!?」

「本来ならば、リハビリ治療を含めれば完治に3ヶ月を要する程の重傷でした。が、信じられない事に・・・完治されています。」

「一応、念の為に検査を受けて頂いてからの退院とさせて頂きます。」

そう言うと病室からあわただしく出て行く。いまだに自分自身が信じられない・・何が起こったのかいまだに理解不能だ。だが、一つ言える事は通常の生活に戻れると言う事だ!!普通に戻ったって事で良しとしておこう!!



 その日は新たな出発の門出を祝うかの様に、青空が広がっている。出発ロビーはビジネスマンから海外で出かける人々でごった返している。胸は高ぶっているこれから行く日本での新しい生活に・・。思い出したくもない約半年前に起こった惨劇からは考えられないくらいの将来に対する希望に満ち溢れている。

約半年前に起こった出来事・・それは、2008年2月5日から始まる・・その日は朝から曇天の空で村は朝から不気味な静けさに包まれていた。その異変は幼友達の村長の娘、ナナが原因不明の高熱におかされ、痙攣した後発病から5日後には死亡した事から始まった・・それは、ナナだけに限らず村民全体に広まっていった。父も母も病気にかかり、看病のかいもなく亡くなった・・。悲しみに暮れていた、そんなある日一人の男が村を訪れてきた・・その男はケン・ノムラFBIの科学捜査官をしているという。ある筋からこの村で起こっている異変の情報を手に入れたFBIはケンを派遣してきたのだという。

ケンは言った「村は新型のインフルエンザウィルスにおかされている」と!!それは、自然的に発生したウィルスではなく人為的に造りだしたものであると・・。その何者かに村はウィルスの実用性を確かめるための、実験台として使われたと。

その時、大型の軍用ヘリが着陸し全身をオレンジの防護服を身にまとった人が降りてくる。明らかに、村での異変を知っている者だ。防護服をまとった者達は患者の容態の確認と血液を採取して颯爽と去っていく。

私はケンとともに車で、首都ジャカルタを目指して走り出した。しかし、大型の軍用ヘリは追跡してくる明らかに狙われている。何とか一度はヘリを捲いたが・・逃げ切れないと悟ったケンは私を安全を確認してから、おとりとなった・・。

それがケンとの最後となった。何とかジャカルタに着いた私は母方の親戚の家に世話になる事になった。が、村での異変は新聞どころか話にもなっていない。村は私以外全員病におかされたというのに。メディアに訴えてもとりあってくれない・・そもそも村自体の存在が消されていたのだ。その様な事もあって、親戚の叔母は日本へ研修生として行ったらどうだ!!と提案され、行くあてもなくこのまま叔母の家に居候することにも気が引けたので日本へ行く事を決意した。それから、約半年の間必死に日本と日本語を勉強した。村での父や母、友達の死を忘れるかのように・・。

「インドネシア航空ボーイング×××便・・・成田行きは5番ゲートまでお越しください」

出発を告げるアナウンスが流れる。

「ティアさん急ぎますよ!!」

日本の研修生を送り込む事業に携わっている、日本人コーディネターの前田がせかせる。

晴天の空がどこまでも澄み切っている、その空へ成田行きの飛行機は飛び立つのであった。



 今日は朝から雨模様のどしゃ降り、せっかく退院して出社する日だというのに・・。気がめいる休みたい気分にさせられる。自宅を出発し車を運転する事30分・・会社に到着した。

会社に到着し駐車場に車を止め、正門から工場へ入る。と、そこへ後ろから声をかけられる。

「おいっす、永瀬!!」

同僚の坂本だ。挨拶をかえす。

「おーす、坂本」

「お前もう大丈夫なのか?結構な事故だと聞いたぞ!?」

「ああ、重傷だったけど・・何とか奇跡が起こって治ったよ・・よく分からんけど」

「そっかぁ・・まあ、治ったんならなによりだ。」

「そうそう、今日はインドネシアから研修生が工場に来るらしいぞ!!で、朝礼あるから全員出席だってよ。」

(インドネシア研修生・・)

この時はまだ気づいていなかったインドネシア研修生のティアとの出会いが運命であった事を。

上司と先輩・同僚に一通り挨拶をした後、朝礼を告げる構内アナウンスが流れる。食堂に職員が集まる。うちの会社は従業員が100人程の中小企業で主に食品加工をなりわいとし、ふりかけ・茶漬・中華の素等の商品を扱っている。総売上げは80億弱。最近は2008年9月に起こったアメリカのサブプライムショックによって売上・利益に影響が出ている。自動車産業ほどではないが、大手スーパーの安売りの傾向から、営業の方も条件を出さざるおえない状況が、3年前から赤字のうちの会社の首をさらに苦しめている・・。

食堂に全員集まった所で、工場長から紹介を受ける。

「えー、この度わが社に研修生としてインドネシアから来日されたティアさんです。」

通訳の男性からティアに訳され伝えられる。

「ハジメマシテ、ティアトイイマスヨロシクオネガイシマス・・。」

従業員が多数整列している中の一番後ろにいたが、目に焼きついたのは真黒で澄んだ瞳にすごく魅入られた・・。

美しい瞳ではあるが、どこか悲しげな印象を受ける。

一通りの挨拶と連絡事項が話され、朝礼は終了した。

さっそく、休み明けでたまった資料を整理し休む前からこんにちまでの状況把握に午前中を使ってしまった。(今日は長い一日になるなぁ・・)と思いつつ昼休憩に入る。

ビービー、昼休みを告げるチャイムがなる。

11時頃からかなり空腹を覚えていたので、ダッシュで食堂に向かう。体型的には痩せ型ではあるがもともと、大食いな俺は朝食で食べたパン2枚(肉厚に切った)ではものたりない、11時頃どころか会社に来てすぐにお腹が空く。食堂に着いたがもうすでに、食堂には行列ができていた。行列の一番後ろにつき、順番を待つ。うちの会社はセルフサービスだ・・丼物・麺類・定食が主なカテゴリーだ!!当然、一番お腹にたまる丼物が自分の中では真っ先に選ぶメニューだが、今日はマーボー丼で真っ先に売り切れていた。しかたなく、次の定番メニューの「豚生姜焼き定食」を選択する。豚生姜焼きを取った俺は最後に味噌汁を注いでもらうのを待っていた時、ティアが後ろから来て定食の選択に困っていた。(日本食はまだ、日本に来てあまり食べてないんだろうから不安なのかなぁ・・)

「コレハナンデスカ??」豚生姜焼きを指差す・・。この時ハッと気づくそう言えばインドネシアではイスラム教が多いと高校の世界史で習った事がある。イスラム教では豚は禁食である。

「ティアさん、これはブタだから」

「ブタタベレナイ・・」

やはり、イスラム信者だ!!

食堂のおばちゃんに・・

「麺類は残っていないのですか?」

「うーん、ありあわせの物しかないけどなんとかなるよ!!でも、どうして??」

「あぁ、イスラム教では豚は食べてはいけない物なんですよ。」

「ふーん、そうなんだぁ」

いかにも、信心深くない日本人的な感覚だ!!

そんなこんながあり、席に着くと隣にティアが座り声をかけてきた。

「サッキハアリガトウ、イスラムキョウノコトシッテル??」

「そんなには知らないけど・・」

その他の雑談を交わしつつ楽しい昼休みは過ぎていった。



 薄暗い廊下を足取りが重く自身の研究室へ向かう。その男は気が重かったインドネシアでの失敗は自身も予期していなかった。研究は完璧で計画も緻密に練られたもので、万が一にも失敗するファクターも見つからなかったからである。しかし、自らの計画にはなかったアフターフォローがあった。組織が実験の失敗をカバーしてくれたからだ。村はその後、組織の私設部隊の核によって浄化されウィルスの拡散は防がれた。男が失敗と呼んだ研究は「新型インフルエンザウィルスによる生物化学兵器の開発」。男は学会でも細菌学の権威であった。その男が組織にスカウトされたのは10年前、ほとんど拉致同然に組織に連れてこられた。そこで法外な報酬を提示され研究を始めた。その研究所は地下に作られ、最新設備がそろっていた。大学で予算に苦しめられ満足な設備がないまま研究をしていた環境とは天と地の差だ。何も不満がなかった。もともと残虐で内向的な性格の男は人体での生体実験を望んだ。その要求に組織も答えた・・。何度も失敗の末、完璧なウィルス「G−02」を開発した。そして、その効果を試すためインドネシアの村をまるごと使った実験を行った。現地から持ち帰った「G-02」におかされた人体から摂取した血液を調べるとウィルスは突然変異を起こし、ウィルスと同時に開発していたワクチンが効かなかったのだ。村人にはあらかじめインフルエンザの予防接種ということで村人数人(年齢・性別で分けて)にワクチン「T-01」を打っていたのである。結果は当然発病しないと予測していた・・が結果は全滅・・。ワクチンがなければ生物化学兵器の意味がない下手をすればこちらまで、感染してしまう。早急に新たなワクチンの開発を進めているが芳しい結果は出ていない・・。(急がなくては計画に支障をきたす。)男は焦っていた・・・。

研究室に入るとそこには、一人の女性が座っていた。

「研究は進んでない様ね・・・。これでは、計画が進まないわ。あなたも結果が出せない様では消えてもらうしかなさそうね・・・アポロ!!」

「くっ・・結果は近いうちに必ず出す!!何の用だ・・アルテミス!!!」

アルテミスは不敵な笑みを浮かべ続ける・・

「あなたにとっても良い情報をもってきてあげたのに!!」

「良い情報!?」

「ハーデスからの情報よ。」

「ハーデスの野郎から・・・!?」

「G-02に抵抗力のある人間が日本にいるという情報よ!!」

「何・・!!村人は全員感染したはずだ。それに、組織の部隊によってウィルスの拡散は防がれたはず・・そんな人間がいるはずがない」

「まぁ、信じるか!?信じないか!?はあなた次第だけど・・でもこれだけは覚えといて私が動いたという事はこれがラストチャンス!!これ以上の失敗は組織が許さないわ。次失敗すればあなたには消えてもらうわ」

「くっ・・。分かった信じよう!!そいつの細胞さえ手に入ればワクチンは完成する!!本当に居所は掴めているのだろうな!?」

「NOAHの諜報部をなめてもらっては、困るわ。ターゲットにはハーデスがついている。でも、ターゲットが居所が掴めたのはつい最近だけど・・」

「ハーデスは信用ならない野郎だが、今は仕方がない奴に賭けよう」

「じゃあね・・・」

妖艶な香りを残しつつアルテミスは去っていった。


 秘密結社「NOAH」は、第二次世界大戦末期のアメリカで設立。組織の設立者、イアン・ハブロフスキーはロシア皇帝に仕える側近の名門ハブロフスキー家であったが、1905年から起きた「ロシア革命」によりソビエト革命軍に国を追われイタリアに亡命した。当時15歳のイアンは愛する祖国を革命によって奪われ又、祖国が変貌してしまった事に恨みを抱いた・・。イタリアでちいさな貿易商をはじめたイアンはすぐに頭角を表わた。その裏にはイタリアの裏社会との繋がりがあった。そんな折、さらに大きく飛躍する出来事がアメリカで起こる1917年に成立した禁酒法である。アメリカでアルコールが規制される中、イアンは様々なアルコールを裏で販売し又、同時にヨーロッパで起こっていた第一次世界大戦に武器弾薬を三国同盟・三国協商双方に供給し巨万の富を得る。それと同時に世界特にヨーロッパとアメリカでの裏社会に確固たる地位を確立するのであった。その後、第二次世界大戦でナチスドイツのヒトラー側に付く当時、独ソ不可侵条約を締結していたドイツ。しかし、イアンはヒトラーのあくなき征服欲につけこみ、1941年6月22日独ソ不可侵条約を破棄させる事に成功し独ソ戦が始まる。イアンはヒトラーを利用し祖国の変革しようと計画した。が、1943年2月スターリングラードでドイツ第6軍が敗北し、戦局が連合国側に傾くとイアンはヒトラーを見限りシュタウフェンベルク大佐を利用し暗殺を企てた。が、失敗に終わる。ナチスからの報復を恐れたイアンはアメリカへと渡る。そこで、1945年2月に秘密結社「NOAH」を設立。今度は連合国アメリカに取り入り武器弾薬・軍事技術を提供する。1945年10月には国際連合が設立されると裏から操ることになるのである。「NOAH」のメンバーは12人。イアンはギリシャ神話が好きでメンバーはオリンポス十二神から取ったコードネームで呼ばれている。1955年10月イアンは死の間際腹心のハーデスに「ゼロ計画」と「NOAH」を託し65歳で死亡する。その後、組織は衰退するが、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロによって「NOAH」は勢力を拡大させるのであった。それから、7年ついに計画が動きだした・・・・。



 ティアが来日して既に3ヶ月が過ぎようとしていた。日本語もかなり上達し仲も良くなっていた。2008年も暮れ2009年が始まる・・。ここ最近は、アメリカのオバマ大統領の就任式の話題で盛り上がっている。(ブッシュ大統領の後の大統領就任・・かなり貧乏くじの様な気がする。テロ・イラク派兵問題、特に問題なのがアメリカ経済の立て直し。AIG・BIG3の公的資金投入。アメリカ経済にほぼ依存しているわが国は、オバマ大統領の経済対策に大いに期待っていたった所かぁ・・)と思いつつ、新年明けてから経済に明るい話題がないニュースに耳を傾ける。

1月30日(金)この日は月末棚卸しで遅くなってしまった。9時頃、業務を終え作業着から私服に着替ていたその時、携帯が鳴る。それは、ティアからであった。(ティアには会社から安全の為に携帯が支給されていた。)

「・・・もしもし、ティア!?」

「良平、助けて・・家に早くきて・・!!」

その声はひどく怯えている様に聞こえた。

「どうしたの!?」

「・・・・」

ティアに危険が迫っていると感じた俺は車で10分の所にあるティアのアパートに急いだ!!

10分後ティアのアパートに到着。

ピンポーン・・・。部屋からティアが飛び出てくる。

「良平・良平・・・・・」

恐怖に涙を浮かべている。

部屋に入ると部屋はものすごく荒らされている。空き巣か!!

怯えて泣いているティアを落ち着かせた。

落ち着きを取り戻したティア。落ち着いた所で

「ティア何か盗られた物はない??お金やパスポートとか!?」

「お金もパスポートも大丈夫」

「そっかそれは良かった。」

ととりあえずホッとした。が、ティアが話を続ける。

「インドネシアから持って来た母親の形見のペンダントとか村から持って来た物取られている。」

(形見!?)

「お母さん亡くなったの??」

ティアは口をつむぐ。

「あ、ごめん余計な事聞いちゃったね。こんな時に・・・!!」

「うん、大丈夫」

「とりあえず、警察に連絡しなきゃ」

携帯から110番を押そうとした時、ティアが制止する。

「えっ、どうしたの!?」

「警察は待って!!ティアの話聞いて!!!」

ティアの剣幕にとりあえずティアの話を聞く事にした。

ティアは語りだした。ティアが日本に来るまでの惨劇を・・・そして、ケン・ノムラという日本人に助けられた事など・・・。今まで体験した出来事を途中詰まりながら。

「そうだったのかぁ・・。そんな事が!!」

(その村を襲った連中はいったい何者・・・。ケン・ノムラ!?なぜ、村の事を知っていた。で、彼はウィルスに感染していないのか!?ティアは特殊な体質だとしても・・。何か薬を飲んでいたのか??)と疑問が尽きない。

とりあえず、今まで重くのしかかっていた事を話をして安堵したのか。ティアは少し気が晴れたような表情をみせた。ここで、警察を呼んでまた気を重くさせるよりはこのまま、ソッとしておいた方がティアにとっては良いな!!それに、母親の形見とかは盗られてしまったが、お金やその他に大事な物は盗られていない。今日は落ち着く事が大事だなぁと思った。

「とりあえず、警察には連絡はしないから・・・今日は鍵をしっかり閉めて休んで!!」

「良平・・・帰っちゃうの!?」

「えっ」

「ティア不安・・!!今夜、一緒にいて!!!」

一瞬どきどきした。付き合っているわけでもないのにこんな事を言われては・・・。

でも、いまの状況なら誰かと一緒にいたくなる気持は多分に分かる。

「分かった分かった・・・ティアを守るよ!!だから、安心して」

「ありがとう」

ふっと、疑問が残ったなぜ、空き巣はティアのそれほど価値があるとは思えないペンダントや村から持ってきた物を盗っていったのだろうか!!)

一通り安全を確認した後、ティアはシャワーからあがり、まだ若干ちらかっている部屋で安堵の眠りについた。

寝姿は(かわいい!!思わずドキドキしてくる)そんな、多少の興奮を覚えたが昼から仕事で酷使した体は深い眠りにいざなっていく。

寒さで目が覚める。携帯の時間を見ると午前6時・・。ティアはまだ眠っていた。疲れていたとはいえ不覚にも眠ってしまっていた。その時、ティアも目を覚ます。

「おはよう」

ティアがかえす。

「おはよう」

(目覚めた姿もかわいい・・・)

「じゃあ、もう帰るね!!大丈夫!?」

「うん、もう大丈夫。良平も気よつけて!!」

アパートの部屋を出る。朝帰りになってしまった・・・。自宅へ車を走らせる。

午前7時45分・・家に到着する。(まだ、皆眠っているかな・・)

鍵でドアを開けようとしたが・・・鍵が開いている。(あれ鍵閉め忘れたのかな!!)

家に入りリビングのドアを開けた時、目の前に信じられない光景が広がっていた・・・。

「えっ・・・」目の前の出来事に信じられず思わず絶句する。

「親父・お袋・佳子!!」

皆仰向けに倒れており、部屋は血の海と化していた。

「何でだよ・・うっわああああああ」

その時、後ろに殺気を感たがふりむく間もなく頭を殴打され気絶する。


 暗い研究室に一室でイライラしながらハーデスの報告を待っていた。研究は一向に進んでいなかった。その時、研究室のドアが開くとアルテミスが入ってくる。

「アポロ、ハーデスからのお土産よ!!」

そう言うとアルテミスは白い手袋をしコートのポケットから厳重に保護された物を取り出す。

「・・・ペンダント!?」

「そう、ペンダント。これは、ハーデスが追っているターゲットが身に付けていた物よ。何か研究の足しになるんじゃない!?」

「なるほど!!もしかすると、そのペンダントにワクチンを開発するためのヒントがありそうだ。」

ペンダントについている汗や皮膚の一部を採取してワクチンを作れる可能性がある。

「じゃあ、さっそく研究を始めるとするか!!」

「期待しているわ!!計画の第一段階は既に動き始めているのだから」

「分かっている。まかせろ」

「あっそうそう、ハーデスには引き続きターゲットを追跡するわ。それから、あなたUD細胞って知っている??」

「UD細胞!?何だそれは??」

「まぁ、知らないなら良いけど・・・。」

「そのUD細胞がどうした!!なぜ、俺に聞く!?」

「ハーデスがにぎっているゼロ計画の計画書にUD細胞という記述を見つけたのよ!!」

「ふぅ〜ん、UD細胞か!!何か秘密がありそうだな!?」

「ハーデスの野郎の存在は組織の中でも不気味だ。何か裏がありそうだ!?しかし、アルテミスよ、あまり組織の事に深入りするとヘルメスの様になるぞ!!」

「ご忠告感謝しますわ。でも、これだけは確かな事がある。UD細胞とハーデスは何か関係している事は間違いないことよ!!」

「で、頼みがあるの。UD細胞の事調べてほしいんだけど・・。ワクチン開発で忙しいのは承知の上で!!」

「・・・分かった。ハーデスは信用できない野郎だ。あいつが、組織のリーダーぶっているのも気にならない。組織はゼウス様のものだ。」

「じゃあ、お願いね。私はハーデスの素性を調査するわ。この事は二人だけの秘密よ!!」

「了解した。」

そう言うとアルテミスは研究室から去っていった。



 (ティア・・・俺は俺は・・君を守る・・誰だ!!家族を殺した奴・・・お前か!?)

ハッと悪夢から目を覚ます。頭がクラクラする。ここは、どこだ!?救急車・・・。救急隊員らしき男が声をかける。

「大丈夫ですか??」

「えっ・・・あぁ大丈夫です。」

「頭が痛いとかありますか?」

「少しクラクラしますが、痛いところはありません。」

「では、もう少し横になっていて下さい。」

「はい・・・。」

そう言うと体をタンカーによこたえる。しばらくすると、救急車の中に一人の男が入ってくる。

「永瀬良平さんですね!?」

「はい・・・・あたなは??」

「私は持田と言います。警部をしています。」

「警部!?」

「ご家族は残念ながら・・・」

「うっううう・・・犯人は!?なぜ、殺されなければ・・。」

体面も気にせず、取り乱した・・・。

「残念ながらまだ、何も掴めていません・・・。少しお話を聞かせて頂いてよろしいですか?」

「・・はい」

警部に昨日のティアの事は伏せて、今朝帰宅するまでの出来事を警部に話した・・。

「・・・そうですか!!分かりました。良平さん・・・まことに、言いにくい事なのですが・・・署まで同行頂けないでしょうか??」

「はぁ・・。どういう意味ですか??まさか、俺が犯人だと疑っているのですか??」

怒りに身を震わせた。

「いえいえ、あくまで参考人と言う事で!!あなたも、襲われたと言う事ですから身の安全という意味で・・」

「はぁ・・・、分かりました。」

署まで向かう道中、ふっと素朴な疑問が出てきた。(意識を失っている最中、誰が警察に連絡したのか?そして、誰が何のために家族を手にかけたのか?昨日のティアの事から不可解な事件が身の回りでおこりすぎている。)

警察署に着くと取調室らしき部屋に通され、待つ事10分・・・持田警部と部下らしき警察官が入ってきた。

「永瀬良平・・・28歳。」

「君は、7時45分頃帰宅。そして、何者かに襲われて意識を失った。まちがいないな?」

「はい・・・」

(なんだ、この警部の態度は。)多少怒りを覚えつつ質問に答える。

「実は、凶器と思われる鈍器から君の指紋が検出された。で、ガイシャの死亡推定時刻は午前5時頃・・・。通報があってかけつけたのが午前8時頃・・」

「つまり、何が言いたいのですか??」

「率直に言うと君が殺ったんじゃないか?」

「はぁ、何を言うんですか?俺は犯人じゃありません。」

「では、昨日会社を退社してから、今朝までどこで何をしていたんだ!?」

「それは・・・」

「まぁ、良い。もう一つ言うと、第一通報者からの話だと君が凶器を手に倒れていたという事だ!!これだけ、状況証拠が揃っていて。」

少しの沈黙が続いた後、冷静に答える。

「これが日本の警察かぁ。確かに状況証拠から言えば第一に怪しまれるのは俺だ。ですが、疑問に思われませんか!?7時30分に帰宅して警察が到着したのが7時45分・・15分の早さで現場に到着している。そして、凶器など後ろから何者かが殴って気絶させた後、凶器を持たせたとも考えられる。それに、もう少し身辺を確認されてから、違う状況もお考えになってはどうですか??あまりにも短絡的すぎる。」

「くっ、まぁ良い・・・。すぐに化けの皮をはがしてやる。」

「では、釈放してくれますね。」

「いや、駄目だ!!重要参考人として拘束させてもらう。」

「今日の取調べは以上だ。」


 良平が警察に拘束されて1週間その間の取調べは連日同じ事の繰り返しであった。状況証拠不十分で釈放されたのは、拘束されて10日後であった。2月9日(月)久々に家に帰る。家にと到着したがまだ、規制線が張られ自宅なのに入る事さえできない状況であった。が、強引に中へと入る。家の中はすごくちらかり、まだかすかに血のにおいが漂っている。惨劇の場になったリビングに入る・・・。

(親父・お袋・佳子・・)

その時、背後に人の気配がする。

「誰だ・・・!?」

「私はケン・ノムラ FBIで科学捜査官をしている。」

「何・・・ケン・ノムラだと!!!」

「その様子だと、私の事を知っている様だな!!」

「なぜ、ここにいる。ティアを追ってきたのか?」

「ああ、その通り。ティアはある組織に狙われている!!」

「ある組織!?」

「ある組織とは秘密結社NOAH!!」

「NOAH!?そんな、組織聞いた事がない」

「君に話しておかなければならない事がある。ティアはG−02と言われている生物化学兵器に抵抗のある抗体を自ら作り出せる体質の持ち主だ。ティアを守れ、でないと世界は地獄となる。」

「何!?いまいち、話がみえてこない。つまり、NOAHは生物化学兵器を使ってテロを起こそうとしているのか!?」

「その通り・・・。時間がないティアが危ない急ぐぞ!!早く車に乗れ・・詳しい話は車の中でする。」

「あぁ・・・」

車に乗り発進する。

「NOAHとはいったいどういう組織なんだ?」

ケンは語りだした・・・。

「NOAHの最終目標は世界を一つにする事・・・。その為には今の世界の人口では支配しきれない・・・。民族・宗教・経済軋轢・環境等さまざまな問題がある。その中で一番やっかいなのが、紛争!!NOAHはもともと、軍事産業で成り上がった組織・・。かつては、相争っている者双方に武器を提供し莫大な利益を得ていた。そして、第二次世界大戦後、時代は冷戦状態になった実際に武器を多用して使用する機会はなくなったが、その変わり軍事技術が発達した・・・この軍事開発にNOAHは深く関わり、特にアメリカ政府の中で大きな権力を握るようになった。アメリカ大統領はNOAHの意志が深く関わっている。ケネディ大統領がその良い例だ!!ケネディはNOAHと取引をし大統領にまでのぼりつめた。NOAHはアメリカ政府を傀儡にするつもりであったが、ケネディが裏切り、組織は邪魔になったケネディを暗殺した。そして、9.11の同時テロを契機にNOAHはある計画を発動した・・。それはゼロ計画。その第一段階は人口の調整!!一番の目的は争っている民族やテロを起こす者どもを「G-02」による兵器で抹殺する事。そして、ある程度人口を減らした後、ワクチンを使用し人類を調整する。」

「何て事だ!!世界を一つにする事は良い事だとしても人口を調節するなんて・・・。」

ケンが答える。

「世界は人類が増えすぎた為に地球がもたなくなってきている。これからの人類と地球の事を考えるならばと言った所か!!」

「しかし、何でそこまで知っている??」

「FBIをなめてもらっては困る。私はNOAHという組織を知った時から追跡している・・。ティアをインドネシアで見つけて、一度は見失ったが日本にいる事を知って、密かにマークしていたら君に出会った・・・」

「・・・・」

「着いたぞ!!何だ!?」

ティアのアパートに着いた。アパートは灰燼とかしていた・・・。

「何が起こったんだ!!!」

その時・・

「永瀬・・永瀬じゃないか!?」

「さっ坂本・・・!?坂本!!これは、どうなっているんだ!?」

「あぁ、昨日の深夜に不審火による火事があって・・・。」

「なっ・・。ティア!!ティアは無事なのか!?」

襟に詰め寄る・・・。

「くっ・・・苦しい・・俺に言われても分からないよ!!」

「良平くん。落ち着けティアは大丈夫だ!!組織がみすみす殺すわけがない。」

「あっ・・そうかぁ。じゃあ、ティアはどこへ!?」

「おそらく組織がさらっていったんだろう。一足遅かった。」

「くっそぉ・・。なんてこった!!」

「永瀬・・・この人は!?で、組織って!!」

「あぁ・・。こちらは、ノムラ・ケンさん」

「ノムラです。よろしく!!」

握手を交わす。その時一台の車が止まる。車から降りてきたのは、中東系と白人風の男が二人。その二人がケンに声をかける。

「ケン無事だったか!?」

「おお・・・、カリアにフィリップ!!」

(この男達はいったい・・・!!)


 「バベルの塔」は旧約聖書の「創世記」中に登場する巨大な塔。保守的なキリスト教会以外では史実ではなく伝説上の話とされる。又、実現不可能な天に届く塔をを建設しようとして、崩れてしまったといわれることにちなんで、空想的で実現不可能な計画はバベルの塔ともいわれている・・・。ここに、チャン・リーという男がいた。もともと、チャン・リーは「NOAH」の幹部ヘルメスのコードネームを持つ者であった。ヘルメスは「NOAH」の秘密「ゼロ計画」について知り又、組織の事を深く知りすぎ不穏な行動が目立った為に「NOAH」によって消された・・・。と思われたがヘルメスことチャン・リーは生きていた。チャンもまた、中国・中東・ロシア等などの地域に武器を供給する武器商人であった。チャンは「NOAH」の権力拡大を阻止するため2000年「Babel」を創設するのであった。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロをきっかけに始まったアフガン戦争・・それに次イラク戦争・・・。このアメリカ発の対テロ戦争は一般的には過激なテロ集団の撲滅と大量破壊兵器の破壊にあった。しかし、メディアには取り上げられない事実があった・・・。それはテロ集団の撲滅と治安維持を名目として裏で「NOAH」の私設部隊・アメリカ軍による反政府組織・反乱分子に対する虐殺があった。「NOAH」はメディアを一方で多用し情報を開示するが、また一方で抑制し操作した。巧みな情報操作は本来「悪」とされる者達を「正義」とした。この頃から「Babel」の活動は活発化する。

 

 カリアとフィリップと名乗る男達はケンに近寄る。

「我等の動くのが遅かった・・・もっと、早くに彼女を保護していれば・・・。」

フィリップがつづける。

「予想以上に奴等の行動が早かった・・我等が護衛の者を出した時には既に奴等の手の内にあった・・・。」

「・・・そうかぁ。それでは我等ももはや一刻の猶予もなくなった。すぐに次の手を打たないと・・奴等の思う壺だ!!」

「分かっている・・だから、君を迎えに来た!!早く車に乗れ」

「あぁ・・この者達も一緒に連れて行きたい!!」

カリアとフィリップはお互い顔を見合わせ。アイコンタクトでお互いに了解を取る。

「じゃあ一緒に車に乗れ!!」

言われるがままに、同僚の坂本と一緒に車に乗る。

車に乗りしばらく、沈黙していたが・・・その空気をさえぎる様に俺は質問した。

「ケン・・・この人たちは何者??俺たちをどうする気だ!!」

ケンは一瞬、カリアとフィリップの顔を見、何かを確認する素振りを見せる。

車が信号で止まったのを見計らって、ケンとカリアは俺と坂本の口を何か薬品で濡れたハンカチをあてる・・・

「ケン・・・何を・・・!?」

急に意識を失う。

 

 成田空港からアメリカサンディエゴ行きのアメリカン航空ボーイング×××便が飛び立つ。その飛行機にはアルテミスの双子の妹コードネーム「アテナ」を名乗る女性とティアが座っていた。ティアとアテナの周りには黒いスーツの男達が周りを囲む。アテナは姉のアルテミスからティアの拉致を命令されていたのだ。任務は簡単であったティアのアパートに押し入りあっけなく拉致に成功した。その後、アパートに火を放った。しかし、ハーデスはティアに関してはまったく動く気配を見せなかった・・・。ハーデスの中では興味はティアではなく、良平にあった。ハーデスはティアをマークしている際に、その傍にいた「良平」が気になり、良平の身辺を調査した・・・。良平の秘密を知ったハーデスは良平にティアと行動を共にしないよう、良平を警察に拘束する事にした。アルテミス側に良平の「秘密」を知られる訳にはいかない。あらかじめ、ハーデスは持田警部の家族を誘拐し、脅しをかけた。「良平を拘束しろ」と。その間にアテナにティアを拉致をさせ、自身は良平の我が方へ引き入れる計画を進める・・・。が、思わぬ事態が起こる・・・。それは持田警部がハーデスに逆らった独自の行動をする。そこで、持田警部はある事実を知る事になる。事実を知られたと知ったハーデスは持田警部とその家族を消した。そこで思わぬ時間を要してしまった。が、計画に少しくるいはしたが、問題はない。問題は良平が私と同じ能力を秘めており、それが純粋に目覚めている事。それは、毒ともなるが味方になれば薬となる。

いま少し良平を泳がしておくか・・・!!アルテミス側も予定通りに動いているシナリオは完璧だ。アルテミスに餌を与えておいて正解だった・・・。後は・・・。


(ティア・・ティア・・今行く・・君を守る!!)

「うっ・・・」

(ここは・・・くっ、頭がクラクラする。そうだぁ、何か麻酔みたいな物をかがされて眠らされたんだぁ・・・。さっ坂本・・・!!)

隣の横たわる人の気配を感じた。室内が少し薄暗くて見えずらいが、姿は坂本だ!!まだ深く眠っているようだ・・・。

その時、ドアが静かに開き部屋の電気のスイッチを入れる。部屋は明るくなり、一瞬目がくらんだが、部屋に入ってくる人物は・・・。ケン!?)

「ケン!!」

思わず声を上げる。

「これは一体どういう事だ!!俺たちを騙したのか!?」

「いやいや、申し訳ない・・・。気分はどうかな??」

後方から声がする。ケンともう一人男が部屋に入ってくる。

「私はカリアという。いやいや、本当に申し訳ない。ここの基地は極秘としている事がおおくてねぇ!!あまり施設内を見せれないのだよ。そこで、君たち二人にちょっと眠って頂いたわけですよ。なにも、君たちを傷つける気はないよ。どうやら、お隣のお友達も目が覚めたようだねぇ。」

「うっ・・。あぁ・・お前俺たちをどうするつもりだぁ!!」

坂本がいきりたつ。

「落ち着け坂本!!大丈夫だって。危害を加える気はないそうだぁ。」

「何!!」

「いやいや、申し訳ない。・・・では、我等の素性を明かそう。では、こちらの部屋までご足労願うかな。ケンも一緒に。」

部屋を出る。まるで、SF映画で出てくる宇宙戦艦の内部みたいな感じの廊下を歩き、部屋に到着する。部屋は廊下の雰囲気とは全く別物で、まるで19世紀のヨーロッパの様な部屋だ。まったく、外と中では時代錯誤もはなはなだしい。しかし、風情があってどことなく落ち着く感じだ。部屋の中央の椅子に腰を落ち着かせる。

「コーヒーと紅茶どちらが良いかな?」

「俺はコーヒーを」

坂本が続く。

「俺も一緒ので!!」

「ケンは?」

「私もコーヒーを頂こう。」

「誰かコーヒーを4つ持ってきて!!」

コーヒーが4つ運ばれてくる。

カリアは語りだす・・・。

「さて、我が組織の事をまずお話しよう。我が組織の名は「Babel」古代の神話のバベルの塔に由来した名前だ。我々は悪の根源である「NOAH」に対抗して組織された。現在、我が「Babel」は、世界に10の基地施設を持っている。その中でここ日本支部は軍事関連技術開発を行う研究施設。現在「NOAH」はアメリカ政府の中にあって、中枢を掌握しているFBI・CIA・ホワイトハウス・・。大統領も彼らの総意によって決められている。最近の大統領選などは大衆を喜ばせるたんなるセレモニーにすぎない。選挙前から大統領は決められているのだ。そして、ブッシュ前大統領の時、彼らはアフガン・イラク・・・中東に対して戦争をしかけた。大義名分はあった・・・テロリストの壊滅と大量破壊兵器の破壊。しかし、奴等はこれら大義名分を元に軍関係者・テロリスト以外の民間人に対して、大量虐殺行為をおこなった。それは、彼らに反抗する勢力を徹底的に叩く・・・。反抗者達に見せしめを行ったのだ。その行為は、巧みな情報操作により世界には伝わらなかった・・。その結果・・・見た目には治安は回復したかに見えている。が、実は巨大な力に抑えられているだけの事。今、世界で伝えるれているテロの報道・・。全てではないが我々が起こしたものもある。正義の為に・・。民衆を解放する為に「NOAH」の傀儡とかしたアメリカ軍に抵抗したのだ。しかし、奴等の情報操作は巧みだ。その正義の行動も報道では「悪のテロ行為」と報道されている。」

一時の沈黙の時が流れる・・。

その沈黙をさえぎる様に素朴な疑問を問う。

「組織については分かりました。が、分からないのはなぜ、俺たちがあなた方の所へ連れてこられたのですか??」

「その理由は・・・。ティアの救出!!と、特に良平くん君の「秘めた能力」を知ってしまったからだ。坂本くんは失礼ながら成り行きといった所だが、見たところ正義感が強そうだ!!そういった、若者は「Babel」には必要だ。」

「俺の秘めた能力!?」

「そう君の能力・・・。我々は君がティアと接触した時から君が何者なのかを調べさせてもらった・・・。」

「何!!」

カリアは一呼吸置き語る。

「結論から言うと、君は不死人!!我々人類の技術では生み出す事が不可能とされた細胞・・・そう万能細胞のさらに上をいく細胞・・・UD細胞」

「UD細胞!?」

「UD細胞とは・・・アンデットの頭文字を取った意味だ。そして、この細胞の最大の特徴は永遠に年を取らず、ウィルスやどんな傷でも治してしまう。人類の夢とも言うべき細胞・・・」

「なぜ、俺がそんな細胞を・・・!!」

「この細胞自体は、かつてナチスが極秘に開発を進めていたものだ。ヒトラーは不老不死を追い求めていた。いつの時代も独裁者は不老不死を追い求める。秦の始皇帝は徐福を東国に派遣して不老不死の薬を求めた・・・。そして、ナチスはUD細胞の開発に成功した。細胞は完成したが、人体に移植する際適合率が極めて低い・・・ほぼ、適合しないと言っていい。適合していない人体に移植された場合。その人間は激しい拒絶反応を起こし100%死にいたる・・。それほど強力であると言う事。」

「・・・それでは、なぜ俺がその細胞を・・」

「我々の研究班でも、詳しくは分からないが・・・おそらく、事故にあって重傷を負った時・病院での治療中になんらかの異変によって自然発生的に覚醒したのだろう・・・」

「まぁ、我々もこの細胞を知ったのも最近だ!!ケンから得たXファイルの情報からだ。しかし、UD細胞については未知な部分が多すぎる。」

ケンが話をつなげる・・・

「我々人類は革新しつつあるのかもしれない・・・。君のUD細胞に限らず・・・。人類は大昔猿から人間に・・・さらに脳の許容量を大きくして、言語を操るようになった。その様な人類の進化は自然環境が激変しつつある現在、環境の変化に対応する為に!!」

カリアが変わる。

「君は、まだ完璧に覚醒してはいないが、その能力は未知数だ」

「・・・不老不死・・・、嬉しいやら何だか分からないですけど・・・つまり、俺にBabelに参加しろ!!と言う事ですか??」

「強制はしないが、できれば我々と行動を共にしてほしい。それに、ティアの居所はエージェントを使って調査している。すぐにでも、分かるだろう。」

ケンに変わる。

「NOAHと戦うにしても、君一人ではどうしようもない。我々は一人の人間を救出するのに組織全体を動かす事はまずない。しかし、ティアの救出の為に組織全体をもってあたろう。その条件は君の研究への協力をもって!!」

「・・・了解した。ティアを助けるためならば、できるかぎりの事は協力する。」

「ありがとう・・・我々も君の約束・・ティアの救出の為に全力を尽くそう!!」

「俺もBabelに参加させてもらえないか?」

(・・・坂本)

「もちろんだとも、歓迎するよ。」



 薄暗い研究室に一室でなかなか進まない研究に苛立つ一人の男がいた・・・。

「くっそ・・・また、精製に失敗だ・・。」

その時、研究室のドアが開く・・・

「苦戦しているようね。アポロ!?」

「アルテミス・・!?俺を始末に来たのか?」

「いえ・・・。あなたに朗報よ!!ターゲットの確保に成功したわ!!」

「何!?それは、本当か!?」

「ええ・・・。」

アルテミスがそう言うと・・・背後からアテナに連れられたティアが入ってくる。

ティアは目がうつろで生気がない。

「この小娘が・・・。」

「そう、名前はティア 年齢は24歳 インドネシア人よ。」

「薬を使っているのか!?」

アポロがティアを診察する。

「ええ、ちょっとおとなしくしてもらう為にね!!」

「ふっふっ・・・これで、ワクチンは完成する。」

「どれくらいでワクチンはできるかしら?」

「1週間あれば十分だ!!」

「了解したわ。それはそうと、ハーデスの秘密が少しだけ分かったわ。」

「・・・!?UD細胞の事か??」

「そう・・・。組織の基幹となるコンピューターにハッキングしたのよ!!」

アルテミスの話を遮る様にアポロが話を繋げる。

「UD細胞・・・。それは、アンデット細胞の事、万能細胞のさらに上をいく細胞だ。人工的に作り出す事は60年近く昔には完成していたが、人体に移植すると激しい拒絶反応の末100%死に至る。」

「・・・そうその通り。しかし、ただ一人例外が居たそれは、ハーデス!!彼は唯一のUD細胞を受け入れた男。つまり・・・ハーデスは不死人。彼は組織ができた時から組織を監視しつづけた番人。唯一、イアンの計画を受け継ぐ者。」

「何!!それでは、ゼウス様とは・・・」

「ゼウス・・・。ゼウスなんて存在しないわ。ゼウスはイアンであったが、ハーデスは組織そして、計画の全てを握る為にゼウス事イアンを殺した!!」

「何だと・・・!!しかし、こんな事を知って危険はないのか!?」

「大丈夫よ。こちらには「G-02」があるわ。それさえ握っていれば・・・。計画は私たちの主導で進む。それには、ワクチンが必須よ!!」

「分かった。任せておけ!!」

「これで世界は私達が・・・変える。」


 光陰矢のごとしとはよく言ったものだ。俺が事故にあってから約半年。色々な事が起こったがまさか、「正義」とは言っているがテロ集団の仲間になっているとは。ここ一週間ほどは研究の為の協力と基本的な銃の使い方。軍隊みたいな訓練。不思議な事に体の疲れはまったくない。これも、UD細胞の恩恵なのか。坂本はかなり疲労がたまっているみたいだが・・・。でも、坂本にも特殊な能力があるという事が分かった。坂本の能力・・・それは、狙撃能力。すぐに開花した。坂本とゲーセン行った時、射撃ゲームは確かにうまかった。それが、本物の銃で射撃を少ししただけで・・・。これも、ケンの言っていた様にこれが覚醒か!!

射撃訓練所で訓練している坂本に声をかける。

「坂本、調子はどうだ!?」

「まあまあかな!?」

「まさかなぁ、お前がこんな特技があったとは」

「昔から射撃系のゲームは得意だったからなぁ。それより、お前の体質の方が信じられんよ。不死人なんて・・・。」

「・・・・それより、ケンが見当たらないけどどこいったか分かるか?」

「知らないけど・・・。」

その時、後ろからカリアが・・・。

「ケンはアメリカに戻った。ティアの行方をおっているエージェントとのコンタクトとNOAHの動向監視の為に。」

「そうですか・・・。」

「我々も動くぞ!!アメリカのシアトル基地に飛ぶ。」

「・・・!?」

坂本と顔を見合わせる。

「ティアの居場所が分かったのですか??」

「あぁ、ティアは今サンディエゴにあるNOAHの研究基地にいる。ケンはその先行隊としても向かってもらっている。」

「いよいよ、決戦の時ですね!!」

「あぁ、時間はあまりないと言っても良いと思う。」

話が終わると自室に戻り身支度を整える。

「なぁ、良平。いまだにおかされている状況が信じられんよ。」

「ん・・。どうして!?」

「お前が不死人で、NOAHとか言う組織とやり合う。そんでもってテロ組織の仲間・・・。」

「んじゃあ、なんでBableに入ったんだ!!俺はもう戻るところもないし、それよりもティアを助けたい・・・。守ると約束したしね。ぶっちゃけると俺はBabelもNOAHも関係ない。ただ、ティアと添い遂げたいだけだ。」

「・・・正直言うと俺は仕事に嫌気がさしていたし、平凡な毎日から抜け出したかた・・・。ただそれだけだ!!」

「そうかぁ・・・。でも、これからのりこもうって言うNOAHの基地は命の危険がある。無理するなよ!!危なかったら逃げるんだ。」

「なにを・・・。おめえも一緒だろうがぁ!!」

「俺は大丈夫さ。不死人だから。いざとなったら俺が盾となる!!」

「ふっ・・・分かった分かった、お言葉に甘えるわ。」



 計画は完璧だ。そろそろ、次の段階・・・ポセイドンを動かす時期にきた。組織の設立から決して表に出てこなかった私設部隊「アクロス」。私設部隊「アクロス」元々はNOAH設立時に組織の要人警護の為の部隊であったが、10年前よりハーデスの忠実な部下ポセイドンによってその意味合いを警護の部隊から軍隊へと変えた。それは、ハーデスにだけ握っている裏の「ゼロ計画書」の第一段階「組織の破壊と再生」その真の目的は、NOAHの幹部の粛清と新たな組織の構築。NOAHは設立当時から大きな問題を抱えていた。それは、組織に所属しているゼウスを除く11人の幹部が一枚岩ではなく、それぞれが野望を持ちNOAHを己が物にしようとしている事。その様な不逞な輩を一掃する為に「アクロス」が動く。計画の完遂には絶対となる強いリーダーの元統制された組織が必要だ。その為には、NOAH自身が自浄する。その新生NOAHのリーダーにふさわしい人物・・・それは、不老不死の能力を持つ「ハーデス」。いままでの歴史がそれを証明してきた。強いリーダーでまとまった国も、そのリーダーの寿命が尽きれば国は常に崩壊の危機に瀕してきた。又、歴史を重ねる事に国の根幹は腐敗し国を無用に混乱をさせてきた。その事例を踏まえ、イアンは計画書にNOAHを絶対的な組織とする為、第一に絶対君主の創造。そして、第二に組織を自浄した上で、新たな幹部を選出する。NOAHができて約60年組織は腐敗しつつある。そして、いらぬ野望を抱く輩が出てきた。その者どもを一掃する。まず、第一に消す人物・・・アルテミス・アポロ。計画の為にも泳がせておいたが、もはや利用価値なし。無用な事を知りすぎた。

「ハーデス様・・・最終準備整いました。」

19世紀のヨーロッパを思わすような少し薄暗い居室でポセイドンからの報告を受ける。

「ポセイドン・・・ギリシャ神話において地上の覇権をハーデスと争った者同士・・・。海を統べる神。」

「はぁ・・。」

「本部の者どもを一掃しろ。本部ごと破壊してもかまわぬ。」

「はっ。して、サンディエゴの方はいかがいたします?」

「私が動く・・・。G-02など、もはやどうでも良い。それよりも、アルテミス・アポロは邪魔だ。もっとも、BabelはG-02とワクチンを狙ってくるがな!!私の真の目的は良平を我が方に引き入れる事。それが、かなわぬ場合は「プランB」にうつる。」

「お言葉を返すようですが、ハーデス様と同じ力を持つもの我が方に引き入れて後々、禍根とはなりはすまいか?」

「ふっ・・・。人類は急激な環境の変化により、本来持ちえぬ能力を解放しつつある。そういう事だ!!」

ハーデスの目が冷たく光る。

「はぁ・・・。いらぬ事を申しました。」

「行けポセイドン!!」

「はっ」



 非常に強い風が肌にかかるが、思っていたほど寒さを感じない。シアトルは北緯47度37分35秒、西経122度19分59秒に位置しているのに、比較的温暖だ。シアトル近郊のレドモンドにあるBabelのアメリカ支部に移動する。レドモンドといえば、世界的に有名な企業「マイクロソフト」と「ニンテンドーオブアメリカ」の本社がある土地。Babelのアメリカ基地は建物的には普通の建物。とても基地には見えない。基地は普通の二階建のオフィス・・・。さすがに、アメリカ土地が広いだけに、オフィスも広い。しかし、見た所普通の会社の業務をしている。本当にここが基地か!!建物に入り奥に進み、部屋に入る。部屋に入るとカリアは机の裏にある隠しボタンを押す。静かに本棚がスライドする・・・奥にある地下に続く階段を下る。降りて行くと大きなエレベーターが姿を現す。エレベーターに乗りさらに、地下へと下る。エレベーターの扉が開くとそこには広大な地下施設が広がっていた。

「うっ・・・すっすごい、この様な広大な地下施設があるなんて」

「驚いたかね!?主にこの基地は情報処理をつかさどっている世界中のあらゆる情報がここに集約され分析される。軍需施設としても一級品だ!!」

フィリップが奥に案内する。

「ここが、施設の中心コントロールルームだ!!」

「でも、こんなに広い施設なのにあんまり人がいないんですねぇ?」

カリアが坂本の質問に答える。

「ここで作業している人は30人程だ!!その内訳は医者が3人・基地機能を維持してるメンバーが15人程・残りは戦闘要員が12人。」

「では、カリアさっそくブリーフィングを!!」

「そうだな・・・。悪いがフィリップ皆を招集してくれ!!」

「はっ・・」

基地に居るすべての人が集まる。全員集まった所でカリアが作戦について語る。

「皆に集まってもらったのは・・・これよりNOAHのサンディエゴ基地に対して攻撃を開始する。」

「オオー!!」

歓声が上がる。フィリップが歓声を押さえる。静まった所でカリアが話を続ける。

「まず、ケンからの情報によると、NOAH内部で主導権争いが起こっているらしい。今なら、サンディエゴの基地も手薄でたやすく攻められるだろう。しかし、基地内の警備をあなどってはいけない。そこで、まず基地コントロールを無効化する。フローラ説明を頼む!!」

ブロンドの髪が美しい。フローラと呼ばれた女性が答える。

「はい・・・。まず、基地を全て一括にコントロールしているコンピューターにウィルスを送り全てのセキュリティーシステムをシャットダウンさせます。その後は・・・」

「私が変わろう。その後は、私と後二人計三人で基地内に潜入し、すみやかにティアを救出しG-02とワクチンを確保する。その他のメンバーは我等三人のサポートをしてほしい。脱出後基地を完全に破壊する。これが、主な内容だ。」

「メディアに対する情報操作は完璧です。我々の統制下にあります。派手にやってもらってかまわないわ!!」

フローラが答える。

会議に参加しているメンバーから質問が出る。

「その潜入する後二人は・・・!!」

カリアが答える。

「それは、永瀬良平と坂本諒の二人だ。」

会場がざわめくのを、フィリップが制止する。

「この二人には特筆した能力を持っている。しかも、NOAHとは浅からぬ因縁をもっている。人選には文句は言わせん。」

カリアが会議をしめる。

「作戦名:オペレーションコスモス。コスモスとは秩序・・・NOAHを倒し世界の秩序を取り戻す。解散!!!」



 NOAHの本部は首都ワシントンの郊外にある。その場所はアメリカ政府はもちろん、どの国の政府も軍も干渉はできない特別区。そのワシントン本部にNOAHの私設軍隊「アクロス」が取り囲む。アクオス軍の行動は迅速であった。あっという間に基地コントロールを制圧。全ての幹部を抹殺した。30分もたたずに基地は完璧に防御機能を失い、ハーデスの手に落ちた。同時刻、ポセイドン自ら指揮を執ってアメリカ国防総省「ペンタゴン」を制圧。各メディアも全て押さえた。もはや、アメリカ政府機能は全てハーデスの手に落ちた・・。それは、2時間の間に行われた電撃的な作戦であった。ハーデスは矢継ぎ早に命令を下す。NOAHのワシントン本部にハーデスに新たに選ばれた幹部が入る。この瞬間新生NOAHが誕生する。このNOAHの行動に対してアメリカ国民はもとより、世界中の誰一人として知らなかった。

「ハーデス様、作戦は終了致しました。」

ポセイドンからの連絡が入る。

「了解した。例の声明の準備をしろ!!」

「はっ」

(くっくっ・・・・完璧だ!!後は良平とBabelの奴等を待つのみ。)

「私を出し抜こうとした愚かな奴だ・・・ふん」

そう言うと足元で、事切れたアポロの遺体を冷たく光る目で眺める。

「ハーデス様・・・ターゲットと奴等が到着しました。」

アテナからの報告を受ける。

「ついに来たか・・・アテナよ。奴等を「ラボB」まで誘導しろ!!」

「はっ。して、我が姉アルテミスはどういたします。」

「ふっ。捨て置け!!・・・いや、奴も「ラボB」に誘い出せ。我が計画の始動に花を添える良い余興となる・・・。それにしても、アテナよ。自らの保身の為に姉をも犠牲にするとは恐ろしい奴よ。」

「何を言われます・・・私は元よりハーデス様に忠誠を誓っております。計画に支障があるならば、姉の命など軽いもの。」

「ふっ・・・。まぁ、良い。行けアテナよ!!」

(さぁ、来い良平とBabelのものどもよ!!決着をつけてやる。)



 サンディエゴはファイタータウンと呼ばれ海兵隊の基地となっている。又、ハイテクの町としても知られている。世界的なスクリップス研究所、スクリップス海洋研究所、ソーク研究所がある。人口は12,223,400人、450,691世帯。カリフォルニア州第二位の人口を誇っている町。

その町に今、NOAHとの決戦の為に降り立った・・・。

「もっと、暑い所かと思ってましたけど意外と良い気候ですねぇ」

坂本が俺と同じ感想を口にした。フィリップが答える。

「ここの気候は一般的には温暖な土地で、夏暑すぎず、冬は寒すぎない・・・。過ごしやすい土地。ここは、アメリカ海兵隊の基地があることからファイタータウンとも呼ばれている。そんな事よりも、急ぐぞ!!作戦の開始時間は目前に迫ってきている。」

「はい!!」

(そうだ、これからNOAHとドンパチやろうって時だ!!観光気分じゃいられない。作戦開始時間は2時間後・・・)

「それより、ケンからの連絡は!!」

「あぁ!!さきほど連絡が入った。基地内部の詳細な地図を送ってきた。それと、ティアは元気で無事だそうだ!!」

「そうですかぁ!!」

(これから助けに行く。ティア!!)

車で走る事、一時間基地近くの町に到着する。町は別に変わった様子もなく普段通りの感じに見える。

「作戦時間まで後約50分ほどある。とりあえず、飯でも食べるか!!」

「あっ、はい!!」

作戦「オペレーションコスモス」:作戦開始時間午後1時 シアトルの基地からNOAHのサンディエゴ基地に向けてハッキングにより、基地機能を無力化させる。その後フィリップ・坂本と共に基地に潜入。目指すはティアの救出。そして、生物兵器「G-02」とワクチン「T-01改」を奪取し、後は脱出する・・・。後は、Bableの特殊部隊による基地の爆破・壊滅させる。我々3人はある意味囮・・・潜入している間に本部隊は爆破の準備をする。作戦時間40分ほどの電撃作戦。

食事を終え・・・。NOAHのサンディエゴ基地に向かう。作戦開始まで後10分。

基地の全体が見える高台に陣取る。

「基地の外で警備している兵は3・4・・6人。ケンの情報によると基地内部にいる人数は40名ほど・・。そのほとんどが、研究者。実戦で戦える様な兵士は20名ほど。さて、ティアが捕らえられている場所は・・・ラボB・・基地の一番最深部かぁ。」

フィリップが現状を確認する。

「つまり、ティアを助けるにもウィルス・ワクチンを手に入れるにも敵を何人か倒さないと辿りつけないということですね?」

坂本が質問する。

「うむ。できるだけ戦闘は避けたい。20名ほどの兵士しかいないとは言えこちらは3人・・。どうみても分が悪い・・・。それに、研究者どもはそのほとんどが何も関係ない民間人。歯向かってくる者はしかたないとして、できるだけ基地から救いたい。」

「・・・では、俺が囮となって兵士をできるだけ気を引きます。その隙をついて坂本はラボBへ・・そして、フィリップは研究者の基地からの救出の指揮にあたって下さい。」

「それは危険じゃないか!?一人では!!」

「いえ、俺は不死人ですから大丈夫です。俺もなるべく戦闘は避けてラボBに急ぎます。フィリップも・・・」

「・・・なるほど!!では、その作戦でいこう!!!」

「皆無理はするな・・・。身の危険が迫ったら逃げる事を第一に考えろ!!もし、失敗したとしても、Babel本隊のバックアップがある。いいな!!」

「はい!!」

俺と坂本が同意する。

作戦開始まで後5分・・・。


・・・作戦開始・・・

基地のコントロールが全てシャットダウンする。

「よし、基地コントロールはシャットダウンした!!」

「では、行きます。」

「無理はするな!!」

「はい!!」

そう言い終えると単独基地に向かう。

「諒狙撃準備を!!良平の援護を!!」

「はい!!」

(基地は意外と混乱していない・・・。だが、そんな事はどうでも良い。今は敵兵を引きつける事だけに集中。)

「止まれ!!何者だ。」

警備兵が銃をつきつけるが・・・お構いなしに突っ込む。

銃が放たれるが、警備兵の方が倒れる。坂本からの援護射撃。

(よし、基地内部へ・・・目指すは・・)

「よし、良平が基地へ入った。諒・・・私達も行くぞ。」

「はい・・・」

「はぁ、はぁ・・。結構きつい・・・。くそっ、なんて広い施設だ。」

体に何発か銃弾は受けて負傷はしているのに、傷はすぐに治っている・・・。が、息は切れるのかぁ。

ピーピーピーピー

(フィリップからの連絡)

「はい、良平です。」

「私達も基地内部に潜入した。そちらの状況は!!」

「何人かは敵を排除しました。思ったより基地内部は手薄です。これより、ラボBにティアを助けに行きます。」

「・・・了解した。では、私達は研究者の保護に向かう・・。」

「了解。」

(ティアもうすぐ、もうすぐ・・・)


「申し上げます。良平以下2名基地内部に侵入してきました。」

アテナよりの報告を受ける。

「うむ。ついに来たか!!アルテミスをラボBにまで連れて来い。Babelのレドモンド基地はどうなっている!?」

「はっ。レドモンド基地はデメテルの軍が制圧に向かっております。」

「うむ。これより、ラボBに参る・・・。」


(くっくっ・・・ついに手に入れた!!G-02とT-01改これで、ハーデスにも・・・世界は私が変える・・・)

ピー・・・研究室のドアが開く。

銃口を向ける。

「何者だ!!」

銃から火を吹く・・・パパパーーーン乾いた音が鳴り響く。

「フィリップさん・・・大丈夫ですか!!!」

「くっ、大丈夫だ肩をかすっただけだ。まさか、敵がいるとは思わなかった。」

「部屋の中にはもう、敵はいないようです・・・」

「油断するな!!」

「はい!!行きます。」

銃を構えつつ内部に入る。基地システムがダウンしてる為予備の電灯だけで薄暗い。

「くっ、ここれは・・・・!!!」

「どうした、諒!!!こっこれは・・・!!」

そこは地獄絵図さながらの光景が広がっている。研究者だと思われる遺体が20体転がってる。

「仲間を殺すなんて・・・!!」

恐怖に身を震わせる。

「くっ。奴等、研究が成功したとたん用済みとなって消しやがった。」

「なんて、卑劣な!!」

「そう言う奴等だ!!NOAHという組織は。それよりも、ウィルスとワクチンを探せ!!」

「はい!!」


「お姉さま!!」

「・・・アテナ!!この様なところでどうした!?」

「それより、お姉さま。こちらへ!!格納庫に脱出用の戦闘機があります。そこまで、案内しますわ。」

「よし。頼んだぞ!!」


「諒・・・。見つかったか!?」

「ありません・・・」

「くっそ、どうやら一足遅かったようだな!!さっきいた奴に持ってかれたか。」

「どうします!?」

「・・・とりあえず、ラボBに行く!!良平と合流するぞ。」

「はい・・・」


ピピピピ・・・。パソコンにメッセージが入る。

「ハーデス様。レドモンド基地の制圧・破壊ミッション終了しました。しかし、カリアは取り逃しました。申し訳ありません。」

「了解した。」

「カリアは如何いたします?」

「カリアなど、どうでも良い。生きていようがいまいが何もできまい!!それより、アラスカ基地への全軍移転させろ!!」

「はっ」

引き続きメッセージが入る。

「ハーデス様。ホワイトハウスの機能は完全に制圧しました。次の指示をお願いします。」

「例の声明を発表する。大統領に声明を発信させる準備をさせろ!!」

「はっ」

(そろそろ、来るな良平・・・!!)


「はぁ、はぁ、着いた・・・ここがラボB・・・」

「良平、良平!!」

後ろから自分を呼ぶ声がする。

「坂本にフィリップさん!!」

「どうやら追いついたようだな。よし、いまから突入する。いくぞ!!」

「はい!!」

坂本と答える。

ラボBのドアが開く。

銃口を前に向けつつゆっくり歩みを進める。

その時、部屋が急に明るくなる。システムが回復したようだ。

「ようこそ、我が基地へ・・・!!」

「・・・・こっ、この声は・・・!!!」

「フィリップ、坂本くんそして、良平くんこの時を待っていた。」

「まさか、ケン!!!なんでお前がここにいる!?」

「私はケンなのではない。私はハーデス。NOAHをそして、世界を導く水先案内人ナビゲーター!!」

「何!!!!」

同時に反応する。

「どういう事だ。ケン・・・いや、ハーデス!?」

「まぁ、落ち着きたまえ。もう一人ゲストが来る。」

その時、ドアが開く。

「!!!」

「アテナこれはどういう事!!ここは!?」

アルテミスに銃を付きつける。

「くっくっくっ・・・お姉さま。ハーデス様を出し抜こうなどと。愚かですわ!!」

「ようこそ、アルテミス。これで、役者が揃ったようだな!!」

「何!!」

「ティアはどこだ!!ケン・・・」

「おお・・・そうであった。アテナよ。ティアを連れて来い??」

「はっ」

「アルテミスよ!!とんだ茶番であったな。どうだG-02とT-01改は手に入ったかね?」

「何!!どういう事だ!?まっ・・まさか、アポロを殺したのは貴様かぁ!!」

「あぁ、その通り!!目障りであったからな。本物のG-02とT-01はここよ!!そして、良平・・・。君をここまで導いたのも全ては計画通り。単刀直入に言う・・・君には新生NOAHのトップとなってもらう。」

「何!!俺がそんな誘いに応じると思っているのか!!」

「まぁ待て!!私の話を聞きたまえ。私は君と同じUD細胞を持っている。ご存知の様に不死人・・・。しかし、この能力は作られた。イアンによって!!1945年俺はシベリアに抑留された旧日本兵。本来ならばそこで死ぬ運命であったが、イアンによって救われた・・・というより実験用のモルモットととして買われたのだ。UD細胞を移植された私はすさまじい拒絶反応に何度も意識を失った。だが、奇跡が起こった。私の体が細胞を受け入れたのだ!!そこで、私は思った・・・私こそ選ばれた人類。革新者だと!!私はイアンから真のゼロ計画の全貌を知った。それは、「絶対者・組織による人類の統制と革新」人類をこれより、選別する。優秀な者とそうでないものと!!そう計画の最終段階は楽園「エリシオン」の創造。その仕事を完遂させる為には純粋な革新者、良平よ!!君こそ我々を導くナビゲーターにふさわしい。」

「おのれー!!ハーデス。覚悟しろ!!」

アルテミスがハーデスに発砲しようとするが、後ろから撃ち抜かれその場に崩れ落ちる。

「ごほっ・・・リ・・サ・・」

「嫌ですわ。お姉さま。とっくに捨てた名で呼ばれるとは!!」

「裏・・切った・・わね・・」

「裏切るなんて。人聞きの悪い。私は元よりハーデス様に忠誠を誓ってますわ。では、さようならお姉さま!!」

アルテミスの頭に銃で撃ち抜く。アルテミスが絶命する。

「ティア!!」

「良平、良平!?」

「おっと・・・感動の対面だけど。駄目!!」

「ティアを放せ!!」

「おっと、良平君ここで取引だ!!私の手元に君たちが欲しがっているG-02とT-01改がある。そして、ティア。君が私と共に来てくれるなら・・・。ティアを解放しよう。特典としてG-02とT-01改もつけよう。どうだ、悪くない話だと思うがな。君は私を押さえて、世界をこの手に握る事ができるのだからな!!」

「良平・・・」

「坂本。こころからハーデスの頭を狙えるか!?」

「何!!」

「頭を撃ち抜いた所で、奴も不死人・・・何にも効かないんじゃないか!?」

「いや、一瞬でも奴の行動を止められる。その内に俺はティアを助ける。フィリップさんはハーデスからG-02とT-01を奪って下さい。」

「なるほど。了解した。」

「うーん、どうした。返答は!!あっそうそう、一つ言い忘れていたがBableのレドモンド基地は破壊した!!残念だったなぁ。くっくっくっ・・・」

「何だと!!」

「くっ・・・カリア!!」

悔しさに身を震わせる。

「フィリップさん落ち着いて。今は良平の作戦を」

「分かっている。」

「では、行きます。」

パーーーン。坂本の銃がハーデスの頭を見事に撃ち抜く・・。

ハーデスの体が崩れ落ちる。

「ハーデス様!!」

(今だ!!)

「うおおおおおおっ」

「おのれ、ティアを渡すかぁ」

アテナと揉み合いになる。

(くそっ。さすがは、NOAHの幹部腕が立つ)

「不死人とは言えその様な程度かぁ。死ね!!」

パーーーン、アテナの銃が火を吹く。

「ティ・・・・ア、ティアーーーー」

腹部に銃弾を受けたティアはその場に倒れる。

「お・の・れーーー、貴様ーーー!!!」

無意識に銃をアテナに連射する。

「ぐふっ、ぐふっ・・・ゴポッ。」

その場に崩れ落ちる。

「ハ・・・デ・・ス・・さ・ま・」

アテナがその場に息絶える。

フィリップがG-02とT-01を奪おうとしたその刹那、ハーデスが目を覚まし銃を放つ。

「ぐふっ」

致命傷には至らなかったがその場に倒れる。

「諒・・・逃げろ・・」

「死ね!!!」

パパパーーーン。ハーデスの放つ銃声ではない。良平から銃が火を吹きハーデスに放たれたのだ。

「ゲホッ、ゲポッ」

「坂本ここから、離れろ!!」

「分かった。」

「おのれーーこざかしい真似を!!」

ビービービー。

「Babelの生き残り部隊が侵入してきたか。ふっ、この様な基地もはや不要。皆まとめて死ね。」

基地を爆破するボタンを押す。

グゴゴゴゴーーーー基地がいたるところで爆発している。

「くっくっくっ・・・良平と虫けらども良く聞け!!これからが、本当の始まり・・・。基地ととも消えるがよい。」

「坂本!!ここの部屋の裏に外へ脱出できる非常口がある。先に行け!!」

「良平はどうする??」

「俺はティアとフィリップを連れて脱出する。」

「しかし・・・」

「早く行け!!!俺は不死人だ。無理ができる。」

「分かった。無事に追いついて来いよ。」

「了解!!」


「ティア。大丈夫、大丈夫助かる・・・!!」

血が止まらない。手の震えが止まらない。どう見ても助からない・・・。

「りょ・・う・・へい・・。はぁはぁ、短かったけど一緒・・・にいられてうっ・・れし・・かった・・。」

「何言ってるの。これからも、ずっと一緒だ・・・。まだ、日本語覚える事いっぱいあるし。そうだ、旅行行こう。富士山とかそうだなぁ・・・」

涙があふれて止まらない。

「ティ・・・・ア・・うれ・・し・い。りょう・へ・・いに会・・え・て・・・こ・れ・・か・・・」

ティアから力が抜ける。

「ティア・・・ティア、ティアアアアーーーー!!!」

バーーーーーンいたる所で爆発音とともに施設が崩れ落ちる。

「良平・・・残念だが・・早くここから脱出しないと崩壊に巻き込まれる・・・」

「くっ・・・は・・い。」

「行くぞ!!」

非常口に急ぎ、間一髪の所で脱出に成功する。

「良平、フィリップさん!!」

坂本の声がする。その時、軍用の大型ヘリが降下してくる。

「良平君、坂本君、フィリップ無事でなによりだ!!」

「カリア!?良かった。レドモンド基地が制圧されたと聞いたから」

「あぁ、間一髪の所で助かった。それよりも急ぐぞ!!」

「えっ、どこへですか??」

坂本が質問する。

「メキシコにあるBabelの秘密基地に行く!!組織はほぼ壊滅してしまった。すぐにでも、NOAHの追っ手がくる。」


ピピピピーーー

「ハーデス様、用意全て整いました。」

「了解した。開始しろ!!」

「はっ!!!」


2009年4月25日(土)アメリカ東部時間 18:00 世界に向けてNOAHの声明がアメリカ大統領より発せられた。


「世界中の人々に報告する事があります。現在、世界は未曾有の経済危機、環境の激変、紛争・テロ行為が各地で起こり、我々人類は厳しい局面に立たされています。まず、経済危機に対する措置として二つの計画を実行します。まず一つは、暫く凍結すると発表した「アポロ計画」を再開させます。人類が宇宙に出て半世紀・・・月への人類移住を目指した開発を行います。それには、アメリカ単独では実現不可能です。そこで、世界中の国、人々のご協力をお願いする事になります。本計画の主目的は人類第二の住処の創造。そして、世界共通の超巨大な太陽光発電システムを作り上げます。人類共通の財産として石油に変わり、そして安全でクリーンなエネルギーの創造。次に紛争・テロ行為に関しては各国連合軍・アメリカ軍を始め軍隊とは別に新たな独立した国連治安維持部隊「アクロス」をもってして、全ての紛争・テロ行為に関して徹底して武力で解決します。そして、我がアメリカ軍はイラク・アフガニスタンから完全に撤退しその権限を「アクロス」に移行します。我々がつかんでいる情報によれば、世界でテロ行為を行っている者達・・・。その組織は「Babel」そして首謀者はカリア・マーティス。そして、あろう事か全世界に生物化学兵器を使って人類を破滅させようとした。しかし、アクロス軍の迅速な対応により未然に防ぐ事ができました。この卑劣な行為に対し多数の優秀な民間人に犠牲者を出しました。これ以上の犠牲を出さない為にも、この行為に対しテロ組織「Babel」に宣戦を布告します。最後にこの世界的な未曾有の局面に対し、今こそ国・宗教・人種を越え一つになる時であります。」



・・・・・・これより、世界は新たな時代へと突入する。










































 

 







 

 

 

 









 


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