解を探して
もはや理解できない技術に身を任せ、携帯にアリスを表示することができた。OSが違うのになぜこのような芸当ができるのか、考えることはやめた。そして少し寝た。
この日は大学の講義などがなかったので気にせずできた。しかし夜あった現象のためあまり寝られなかった。昼になりかけたところで起き、携帯の電源を入れた。OFFになっているときはどうなのかと思い、訊いてみた。
「それはよく私たちにもわかりません。あなたの言うOFFと呼ばれるものの間も私たちの時間は進んでいるのかもしれないです」とアリスは言った。どういうことかと思った。そして友人から連絡が入り友人宅に行くことになった。
移動中は周囲が見えるようにしておくと、アリスは「これが天の世界ですか」と感心したように言った。別に天の世界ではないのだがと思ったが、プログラムが生み出したかもしれないものにはそう見えたのだろう。そんな中で友人宅についた。
「来たな」と正樹の友人である淳が扉を開けつつ言った。
「突然すまないな」と正樹は言って中へ入った。
中へ入ると早速本題に入った。携帯の画面を淳に見せながら「これが件の女性だ」と言った。
「こんにちは神様のご友人」とアリスは言った。
「本当にしゃべるんだな」と淳は言うと、可能性のあるものから挙げてみた。このソフトウエアの根幹をなすプログラムはデータベースから適当なものを抽出するものではあったが、それはオープンソースのAI技術を援用したものであった。ランダムだけではなく既に記述された内容やデータベースを参照するものである。他にも膨大な量の資料等からデータベースを起こしていると言い、それだけでなく自動的に外部ネットワークに接続して情報収集、更新をすることもできた。正樹は頷き、それがレポートの作成に助かったと伝えた。ただしここで詰まった。AI技術は大いに使い、文章書き換えの能力も一部持たせたには持たせた。しかしここまでの能力は予想がつかなかった。
「神様たちにもわからないことはあるのですね」とアリス。
「俺たち神様も神様が作ったみたいなもんだからねぇ。あ、それはないか」と冗談めかして淳が言った。
「やはり何らかのバグか」。正樹が考え込みながら言った。
「外部のネットワークからの影響かとも思ったが、書くためのパソコンは他のと分けてある。言われた通り基本的にネットワークに接続していたのは確か」。正樹は記憶を確かめながら言った。
「いやひょっとすると」と淳はあることを思い出した。それはこのAI技術にはある程度の余裕を持たせてあるということであった。つまりしっかりとした答えが出ないようになっていた。
「確かに数学以外の答えのはっきりしないものは無茶苦茶な時があったな」。正樹が思い出して言った。
「余裕があれば自己学習する。自己学習はこのAIにもあってソフトウエアを構成している。そしてもうひとつ、この進化に足りないものがある」。淳はそう言うとパソコンの画面を見せた。