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助けを求める声

 夜も深くなったある日のこと、正樹は書きかけであった小説の続きでも書こうかと、執筆支援ソフトを起動し、パソコンの前に座っていた。しかしその日ガチガチに大学の講義を組んでいたため、もはや起きているのもままならない状態であった。新規の文書の冒頭でカーソルが点滅している。その時であった。寝ぼけ眼でもわかる。勝手にカーソルが動いていったのだ。ハッとしてその部分を見ると、明らかに自分の打った文字でない言葉が書かれてあった。一度顔を引っ張ってみる。しかしはっきりとそこに文字はあった。

「助けて、ください」

 ネットにつないでいたのがまずかったのかと感じ、正樹は素早くLANケーブルを抜いた。しかしふたたび文字が書かれた。

「助けてください」

 初めは恐怖すら覚えていたこの現象であったが、次第に正樹の中では興味関心の思いが強まっていった。そしてあえてその言葉に返答することにした。

「どうしたのですか」

 すぐさまその言葉に返答があった。

「今私たちの王国で反乱がおきようとしています」

 王国ってなんだ、と思ったが事情が全く飲めない。詳しい事情を訊こうと簡潔に続ける。

「内情は」

 返答が来る。

「私たちの王国の経済内情不安定にかこつけて、驚くべきことを唱えて軍部が伸びてきたのです。今王立軍と軍部直轄軍で戦闘すら起きています」

 じゃあどうすればいいのか悩んだ。しかしその内容に見覚えがあった。そう、自分の書いた小説の一部分であった。王と軍、国内事情。ちょうどそこの部分迷っていたのだ。つまり続きを描けばいいのかと思ったが、肩入れするのはとも思った。とりあえずファイルを開いてみた。

「なんだこれは」と思わず声を出した。そこには自分の書いていない文章が一部追加、改稿されており、軍事対立の様相を呈していた。そのファイルを開いたまま、元のファイルへと戻り、とりあえず名前を訊こうと打った。

「そちらの名前は」

「私はアリス。王女です」と返事があった。

 そうだ、人名がよく分からないため、わかりやすい名前を付けたのだった。もう少し考えてあげればとも思った。とりあえず助けには答えないとと返事をした。

「つまり君の助けになるようにすればいいんだね」

「そうです。お願いします」と返事があった。

 小説のファイルへと移り、まず王立軍の増強というわけで鉄の鎧に魂を入れて鉄人軍団を作ってみた。しかしなんと、軍部直轄軍は土人形軍団で対抗、情勢は拮抗していた。

 どうすればいいんだと頭を抱えてしまった正樹であった。できることは端から試し、武器強化、経済支援などやってみたが、まるで釣り合いがあるかのようにうまく打倒できない。もともとどんな設定だったか戻ってみると、どうやら近隣諸国との関係が根底にあったらしい。本来この対外交渉編は次にやるつもりだったが、なぜか巨大な隣国の内部事情と軍部が繋がっていた。こんなものは書いてないと思ったが、何とか自分の本来の流れに戻す、というよりもはや王側に肩入れしてもいいとも思いつつ、隣国の支援を受けつつ、繋がっていた軍部の闇を暴きつつ、裏をかかれないよう、王国自体が滅ばないよう細心の注意を払って書き続けた。もう何時かわからないぐらいであった。そして、軍部の裏にあった商人組織までたどり着いてそれとの戦いを何とか終えることができた。

「ありがとうございます。これで何とか助かりそうです」と返事があると、小説のファイルがさらに書きかえられた。

 もう追加はしないほうがいいかなとも思ったが、それどころではない。なぜこんなことが起きているのかを追究しなければならなかった。

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