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最弱勇者は吟遊詩人  作者: 神崎柴乃
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勇者 武器屋に行く

異世界の敵対キャラの攻撃力がどんなものか知らないが少なくとも今の服では問題があるだろう。そう思い、まだなにか言おうとした神官の言葉を遮り、武器屋の場所を教えてもらう。

「武器屋ですか?あぁ、この目抜き通りを真っ直ぐ行ってもらい、3つ目の角を左に曲がって頂ければすぐにわかると思います。」

「あぁ、ありがとう。」

「いえ、こちらこそ不快な思いをされたと思いますがどうか御容赦下さい。」

「気にするな。俺にとってはどうでもいい。」

理不尽な顧客なんざ山ほどいる。いちいち気にしていたらそれこそ胃がもたないだろう。この神官……苦労人だな。

「では、20日後の災厄の前に1度城までおいでください。」

「分かった。」


異世界召喚、勇者。夢にまで見た現状だが、素直に喜べない。嫌々ながら使命を受けたので……。取り敢えず20日過ごすであろう城下町に視線を移した。

人間多数。亜人、獣人が少数。どの亜人も首輪のようなものを付けているところを見ると奴隷という扱いなのだろう。先程説明を受けた目抜き通りは商店が軒を連ね、威勢のいい声が街に溢れている。


「……。何だかなぁ。」

正直先の見えない説明ばかりで何が何だか分からないという状態だ。どこからか情報を仕入れて……。いや、その前にスキルを確認するか。

一応人気のない路地に入り込むとスキル欄を開いた。スキルを注視すると説明文が浮かび上がり、視界にウィンドウとして表示される。

スキル『音界』

説明「クールタイム30秒。特殊な音波を周囲に発射し地形や障害物を把握する」

要するに……ソナーか。後で試すとしよう。

スキル『奏術Lv.1』

説明「クールタイム60秒。Lv.1の効果 催眠音波」

スキル『付与術Lv.1』

説明「クールタイム60秒。Lv.1の効果 攻撃力10%上昇重ねがけ不可。効果時間3分」


ふむ、前者がデバフ、後者がバフ……かな?なるほど。取り敢えず気になった『音界』を放ってみよう。何か変わるか?

『黎明の笛を使用して下さい』

黎明の笛……。この笛か?


銀色に輝く高そうな笛を見る。見た目はフルートのようで、試しに吹いてみると綺麗な音が響いた。すると、視界の端にマップの様なものが広がっていき、白い点が道上に2つ浮かぶ。

「白い点?周りには誰も居ないはずだが……。」

1つは背後もう1つは前方。どうやら挟み撃ちにされたらしい。音界のおかげでどこにいるのか、背格好までバッチリである。どうやらこのスキルだいぶ便利なようだ。


「前と後ろに隠れてるやつ。見えてるから出てこい。」

通りに声だけが虚しく響く。仕方がないのでもう1つのスキル『奏術』の催眠音波を放ってみた。

綺麗なのだがゆったりとした曲が流れ始める。


どさっ。どさっ。


音のした方に向かうとそこには真っ黒な装束に身を包んだ忍者のような不審者が眠っていた。

「はてさて、どうするか。状況証拠的にあの王様だろうな……。知らん顔して逃げるか」


尾行の理由や命令も聞きたかったが今は取り敢えず武器屋に行こう。

そそくさと路地裏から表通りに出ると言われた通りの道順で武器屋『イゾラの火』という店に入る。中にあったのはファンタジーでお馴染みの無骨なロングソードや短剣、革鎧やプレートメイル等々バリエーションに富んでいた。


「いらっしゃい。」

「どうも。」

筋骨隆々な厳ついおじさんに尻込みしつつ店内を見渡す。

「見ねぇ顔だな。この店をどこで聞いた?」

「え?あぁ、王城にいた女の神官さんからですね」

「王城?するってぇとあんたが噂の勇者様か?」

「……。一応……。そうなります。」

「へぇ。オタク職業は?見たところ武闘派には見えねぇが」

「吟遊詩人です。」

「吟遊詩人……?あの酒場で歌ってるあいつらか?うちには楽器なんてもんねぇんだが?」


おやっさん……。いくらなんでも職業聞いた時点で何しに来たんだお前オーラを出すのは辞めてくれ〜。帰りたくなる。


「防具ですよ防具。一応後方支援職なので接近戦用に短剣もですけどね。」

「あぁ、なるほど。んー予算はいくらだ?」

「銀貨300枚くらいで」

「あいよ。待ってな。革鎧に鉄の短剣。鎖帷子はおまけしといてやる。合計銀貨270枚だ。」

「待ってください。いいんですか?」

「ん?あぁ。今後いい取引相手になるかも知れねぇ勇者の出だしに恩を売るってのも手だろ?」

「なるほど。ありがとうございます。」

「奥にある個室で着替えてきな。」

鎧の着方など、おやっさんに聴きながら準備を整え、近くの道具屋を教えて貰い、道具もきっちり整える。


「あぁ、えっと名前聞いてなかったな」

「桜馬悠です。桜馬が苗字で悠が名前です。」

「おう。俺はレンブラントだ。宜しくなユウ。」


実に不思議な感じだった。つい数分前まで帰りたい気分だったのに今ではおやっさんのおかげで気分がいい。

「レベル上げするなら西の森に向かう途中に街がある。そこのギルドのほうが初心者にはオススメだ。」

「何から何までありがとうございます。」

「おう、頑張れよ。」

「はい。」


先程までの不快感が嘘のように晴れ、意気揚々と俺は紹介された村まで向かうことにした。

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