いつか、かわいいきみだから。
みなが言う
きみがいるから花が咲かないと
きみのいない世界に花が咲くと
だからぼくは花を愛でるこの目をつぶって
香りを楽しむこの鼻を塞いで
花を手折るよりもやさしくきみの手を握り
いっそこの地の果てへでも駆けてみよう
きみのいない世界に咲く花ならば
ぼくにはどれほどの価値もない
それがたとえぼくの命を救うものだとしても
花弁の彩りもかぐわしい香りも甘い蜜さえ目をくらませる毒になる
きみの柔らかな手がぼくの命を散らすものだとして
痛みに呻もうと苦しさに悶えようときっとぼくから手放しはしない
ぼくときみとが行き着く果てはどんなに素晴らしいところだろう
色のない森を抜け色のない廃墟を駆け
色のない海を渡り色のない荒野を行けば
その先の地図にない世界へ飛び込める
そこはどんなに素晴らしいところだろう
難しいけれどぼくがこの地と決別し
ほんとうにぼくを生かすすべてと解き放たれたとき
きみをつかまえて
ただ美しいだけの場所へ駆けていける