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 シャロンノース州、サウスシャロン駅というわけのわからない住所だ。北なのか南なのかよくわからないところで下車して、私たちは改札口を出た。

 家を出たときにはあったかかった格好なのに、北上したせいでかなり寒かった。

 隣のリチャードがそれに気づいたようで、コートを貸してくれた。

「薄着だね。南のほうからだね」

 そう言ってすたすたと歩きだす。

 ねえ、Gray-man。すでにこの若い神父候補に陥落しそうなのだけど、この人に告白したところでにべもなく振られるか、誘惑には応じないって悪魔のようにしっしされるかどっちかだよ。

 こんな不純な動機で私シスターになれるのかな。

 なれないんじゃないかなあ……。


 リチャードは修道院の鍵を開けると、すぐに神父を探しにいってしまった。

 何人ものエクソシストがいると思っていたのに、誰もいない礼拝堂でしばらく立ち往生した。

 簡素な礼拝堂は、荘厳な雰囲気こそないが、とても落ち着いた。

 リチャードはなかなか戻ってこなかった。

 そりゃそうか。男性用の修道院に、女の子を連れてきたのだし。


 しばらくそうしているうちに、内側の扉が開いて、禿げた神父さんが出てきた。

「はじめまして。ミハエル神父とお呼びください」

 私は神父と握手をした。

 神父さんってもっとやさしく柔和な雰囲気しかイメージになかったけど、ミハエル神父は筋肉質で、握る手にも力があった。

 意思の強そうな、静かな目をした神父だった。禿げてるけど。


「部屋へ案内してあげなさい。それと、夜10時をすぎたらお互いを訪ねてはいけません」

「わかりました。こっちだよ、メアリー」

 あっさり二の句で承諾して、リチャードは私の荷物を持って移動し始めた。

 比較的きれいな部屋に通してもらえたのだと思う。トイレがきちんとついている部屋で、共用のトイレを使わないように配慮してくれたんだということがわかった。

「お腹すいてない? 冷えてるけどごはんあるってさ」

 小首をかしげてくるリチャードに何も答えずにいると、リチャードは困ったような顔をした。

「ごめんね。色々ちょっとしゃべりすぎて、俺のこと怖いよね? ここ、鍵かかるから心配しないでね」

 肩がこけかけたし、そんなことあってたまるかとなった。

 リチャードが良い奴なので、私はリチャードの神父になる道を邪魔しないためにはどうすればいいか悩んでいたのに。

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