02
Mary:私は家を出るべきだと思う?
Gray-man:何を躊躇する必要があるのでしょう。
Mary:私、きっとこのまま家に居たらだめだと思うの。でも、お金はないし、どうすればいいのかわからない。
Gray-man:そうですね。せっかくだから一緒に考えましょうか。Maryは何かになりたいと考えていますか?
Mary:ううん。特にないかな。
Gray-man:本当に? 職業でなくてもいいのですよ。やりたいことは?
Mary:わからないの。でも……おかしいと思わないで聞いてくれるかな。
Gray-man:無論です。
Mary:エクソシストに惹かれる。
Gray-man:どうしてそれがおかしいのですか?
Mary:言ったら頭がおかしい人だと思われるよ。君の言い分では、98%の人間は悪魔の支配下にあるんでしょう?
馬鹿なことを言ってないで、まともな仕事につきなさいと言われるに決まってる。
Gray-man:だからって、あなたの心に嘘がないように、あなたの自動筆記である僕にまで嘘をつく必要はないじゃないですか。
でもそうですね、エクソシストとして仕事がまともにできるようになるまでは、それは内緒にしておいたほうがいいかもしれませんね。
Mary:やっぱり私は家を出てからすべて考えるべきだね。でもどうしよう、お金はないの。
Gray-man:悪魔は死んでしまうと思わせることによって、恐怖で劣悪な環境に人間をとどまらせるように仕向けることもあります。
Mary:私には大した学はないの。
Gray-man:体力は?
Mary:人並み程度かな。
Gray-man:何が優れていると自分で感じますか?
Mary:わからない。
Gray-man:それは困りましたね。何をアピールに就職活動をしましょうか。
Mary:本当にわからないから、困ってるの。
Gray-man:大丈夫ですよ、あなたにはいいところがたくさんあるはずです。
Mary:どうしてそう思うの? 私の自動筆記だから?
Gray-man:あなたの自動筆記があなたのいいところを当てたらあなたはどうしますか?
Mary:あなたは私の記憶を見てるの?
Gray-man:似たようなものですね。Mary、あなたは本日3つの美徳があります。
Mary:わくわく
Gray-man:僕に連絡をしたこと
Mary:ええー
Gray-man:不満そうですね。あと、あなたは親のために朝食を作りました。
Mary:居候だもの。そのくらいしなきゃ。
Gray-man:誰かのために何かをすることは、素晴らしいことですよ。
そして最後にあなたは、部屋を掃除した。
Mary:全部普通のことじゃないの! もー、それのどこがいいところなの。
Gray-man:あなたはいいところがたくさんあります。ただその一つ一つを、このくらいは誰にだってできる、このくらいは当たり前だ、選択したうちに入らない取るに足らないことだと思いすぎているのです。
Gray-man:あなたは本日、食事を自分の分だけ作らずに親の分も作りました。部屋もきちんと片付けた。でもあなたはごろごろしてることもできたんですよ。そうでしょう?
Mary:確かにそうだけど……
Gray-man:もっと素敵なものを当ててほしかった。そうでしょう? でもあなたが本日やったところから最も素敵なことを言ったんです。
さて……
家を出ましょう。
Gray-man:いま両親はいません。
Mary、顔を洗って、乾いた鼻血を拭いてください。
暴力的な親から離れるのに最高のタイミングなど存在しません。
瞬間瞬間の今こそが、最高の瞬間なのです。