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夏の終わりの物語  作者: じんべい
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始まり

  第一章〔始まり〕



ドゥルン、ドゥルルン。まだ暑さの厳しい8月の終わり、オートバイの音がこだまする。


「ちょっと、出かけて来る。」



「お兄ちゃん、どこ行くの?もうトラック出ちゃうよ!」


まるでアニメから飛び出してきたような萌え声が聞こえて来る。


3つ下の妹だ。血の繋がりさえなければ、きっと惚れていたであろう。

家族自慢の妹である。


「先に行ってていいよ、あとから行くから」


俺が答えると


「じゃあ、ついでにタイヤキお願い、白いやつ。

隣の明菜ちゃんにあげるんだから」


となりの明菜ちゃんとは、引っ越し先の隣の家にいる、妹とと同じ年の女の子の事である。


早くも引っ越しで友達を作ってるとは、なんとも出来過ぎた妹である。


親父の「妹の爪の垢でも飲ませたい」という俺に対するあのセリフがよくわかる気がする


ま、妹のあの声で頼まれると断る理由が見付からない。


手を挙げてピースで答える。


「なにカッコつけてんだか…」


妹の心の声が聞こえたような気がした



家の外には何人も女の子が。中には男の子もちらほら。


みんな妹の同級生である。転校する妹を見送りに来てくれたみたいだ。



この春から妹は高校生、俺もとりあえず大学生になったのだか、親父の急な転勤…

俺は大学の寮に住んでいるから実家がどこになろうと、さほど関係ないが、

妹は今年、高校生になったばかり。家からの通学が困難になると、

転校せざるおえないのである。


そもそも親父の単身赴任という案もあったのだか、親父の「お母さんと離れて暮らすのは嫌だ」


と、母親の「お父さん一人は心配…」

という、ラブラブな両親の一言で無くなった。



妹も最初は転校をこころよく思ってなかったが、

両親の「高校を卒業したら、自分の好きな道を進んでいい」

という言葉に快諾。

転校を決めたのである。


妹には中学の頃から、声優になるという夢がある。

兄としては今でも十分通用しそうなのだが、

そんなに甘くはないのであろう。

とりあえず高校卒業後、声優アカデミーに入って勉強するのが、妹の目標らしい。


おっと、のんびり引っ越しの経緯を説明してる場合じゃなかった。

急がないと時間に間に合わない。

タイヤキの店もそうだが、もう一つ急がないといけない理由があった。



外に集まっていた妹の友達の横をすり抜け、

よくまあ、こんなに集まってくれたものだと、改めて妹の人柄の良さを改めて感じさせられた。

横目で俺の知り合いをさがしてみたが、居るはずもない。

というより、友達といって思い浮かぶやつも居ない。

唯一の友達と呼べるやつは、妹だけなのかもしれないからな。


あいつは誰にでも優しい。

もちろん 兄である俺にも、だから妹に頼まれたら、タイヤキだろうが、何だろうが、買ってきてやる。


俺は、少し赤く染まり始めた空を見ながら、真っすぐ海へと向かってオートバイを走らせた。




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