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ヘレティックワンダー 〜異端な冒険者〜  作者: Twilight
第三章 迷宮都市前編

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第88話 ダンジョンボス撃破


 ノーナというトレジャーハンターを加えて三人になったパーティーは破竹の勢いでダンジョンを進んでいった。

 途中の十階層では、一度だけファンガスという二足歩行する赤いキノコと出会ったが、ゴブリンよりも弱いとは思わず、どんな敵か分からないまま倒してしまうという事があった。

 そんな珍事があったものの、それ以外ではゴブリンやオーク、バッド、ウルフ、スネーク系などの敵が出て来たりしたが、やはり寄生されている奴が多く、ただの木偶の坊にしかならなかった。

 キノコの大きさも宿主の体に比例するのかと思ったら、蛇なんて頭に帽子を被ってるみたいで笑ってしまった。


 さらに潜って十六階層の森の中ではギンイロダケを見つけた。

 ノーナが「こっちに階段ありそう!」とか言って、指差した方を歩いていたら、途中で銀色のキノコを見つけたので採取したのだ。

 二人ともピカピカ光るキノコが足元にあったというのに、普通に通り過ぎてしまったのでそれくらい擬態というか発見しにくいキノコなんだろう。

 俺にとっては森の中に光るものがあったので「お金かな?」くらいにしか思ってなかったのだが、おそらく森に入った経験が少ないから見つけられたのだと思う。

 だって、足元ばかり見て歩いてたから……。


 そうして3時間くらいかけて二十階層の最奥、大きな扉の前まで辿り着いた。

 これまでと違い、人工的な扉に驚きながらも考察を欠かさない。


「これがいわゆるボス部屋か……」


 ダンジョンにはこのように「ボス部屋」と呼ばれる関門が存在している。

 大体が切りの良い階層毎にあるようで、一番小さいモノで十階層、今回の場合には初級ダンジョンという事なので、おそらくこの先がゴール地点を兼ねたボス部屋なのだろう。

 ちなみに、【白磁の塔】では五十階層からそれ以降に渡り、十階層毎にあるようなのでそれだけであそこの特異性が理解できるというものだ。


「ええ、この先の魔物を倒したらお宝をゲットできるわよ!」


 隣にいるノーナが鼻息を荒くしながら物知り顔をする。


「あんたは知ってたのか?」


「名前」


「はいはい、ノーナは知ってたんだな」


「まあね。ダンジョンに潜ったことが無くても、それくらい常識でしょ」


 常識、か……。

 こういう小さなところで自分の知識不足をひしひしと感じる。


(まあ、これから知っていけばいいか)


 そう結論付けると、いま一度扉を眺める。

 無機質な金属製の扉の表面には浮かび上がるようなレリーフが描かれており、数人の人型とそれよりも大きい人型が対峙している事だけは分かった。

 ボス部屋と呼ばれるのだからおそらく戦うのだろうが、何と戦うのかまでは分からない。

 試しに他の奴の意見も聞いてみる事にした。


「これ……何描かれているか分かるか?」


「うーん、そうね……おそらくオークかオーガじゃないかしら」


「オーガ? あの鬼みたいなやつか」


「まあ、そんなものね。言っとくけど、ゴブリンやオークなんか比較にならないくらい強いわよ」


「へぇ~」


(なるほど。なら、そのオーガとやらがこの先に待ち構えている可能性があるということか)


 オーガというのは魔物大図鑑でしか見たことないが、オークと同程度の大きさで人を丸のみにして喰う事もあるというので、それなりに強いという事だろう。


(まあでも、このダンジョンの事だからキノコが生えて弱いなんてことも……)


 そんな冗談とともに淡い期待に胸を躍らせながら二人を見た。


「もう少し休むか?」


「大丈夫よ」


『いつでも行けるぞ』


 ノーナもアギトも力強く頷いた。

 懐中時計を取り出す。


(現在時刻が十六時ごろで、一日は十三時だから、残りは二時間くらいか……)


 ボスを倒して、ここから帰るだけなら二時間もあれば事足りるので、時間は問題なさそうだ。


「ふーん、アンタって懐中時計持ってるんだ。結構お金持ち?」


「ん? いや、これは俺の私物じゃなくてただの借り物だ」


「え゛!? 時計貸すような酔狂な人がこの世にいるっていうの……! ありえない、誰それ?」


「もう一人のパーティーメンバーって言ったらいいのか分からんが、その男からだ」


「へぇ~、そんな人いるんだ。その人ってイケメン? お金持ってそうだった?」


 興味津々と言わんばかりにノーナが訊ねてくる。

 俺に聞かれても困るがイケメンかと言われると……まあ、悔しいが奴はイケメンの部類だろう。

 だが、例え心の中で思ったとしても、絶対に言葉には出してやるものか。

 あんないけ好かない野郎の事なんて……と憎たらしい顔しか浮かばなかった。


「……さあな。俺は知らん」


「えー、教えてくれたっていいでしょ。ねえねえ、どうなの?」


「うるさい、さっさと行くぞ」


 ノーナを無視して、剣を抜いてから扉を押した。

 想像していたよりも扉は重くなく、少しの力で押すと次第に自動で開いていく。

 金属扉特有のキリキリとした音に誘われ部屋に入ると、そこは正方形の闘技場のような場所だった。


「あれがオーガか……」


「うっ、強そうね……」


 ノーナは俺を盾にするかのように背中に隠れる。

 突き放したい衝動に駆られるが、初見の敵を前に油断はできない。

 目の前にはオーガと呼ばれる魔物が一体おり、その周囲にはオークとゴブリンが取り巻きとして存在していた。

 部屋の中に入ったというのに、魔物たちは睥睨してくるものの動き出す気配はない。

 頭にキノコが生えている影響かもしれない。


「オーガ1、オーク5、ゴブリン10ってとこか。種族違うけど、あいつら喧嘩しないんだな」


「ダンジョンの中なんてそんなもんよ。常識で考えるだけ無駄だわ」


「そういうもんか。とりあえず、ノーナ。今回はお前にも戦闘に参加してもらおうか」


 別にノーナが居なくても、おそらく俺一人ですら魔法をぶっ放せば勝てそうだ。

 しかし、それではパーティーを組んでいる意味がない。

 それに寡黙なアギトとはいえ、獲物を奪われたとあれば文句の一つや二つを言われそうだ。


「あ、やっぱり戦わないとダメ?」


「当然。じゃないとおまえの取り分は一つもないからな。オークは無理でもゴブリンくらい相手出来るだろ」


「よりにもよってゴブリンなんて……最悪ッ!」


「アギトはオーガを頼もうかな。倒せるだろ?」


「もちろんだ」


 ニイッと犬歯を剥き、笑う。


「じゃあ、俺はオーク含めて取り巻きでも相手にするか」


 ――ついでにノーナの援護もしないとな。


「では、各自頑張ってくれ!」


「フッ!」


 言うが早いか、アギトは剣を抜くと力強く地面を蹴り、オーガに向かって一直線に駆けだした。


「ゴブリンなんて師匠の顔より見慣れてるわよ!」


 ノーナも腰から二本の短剣を抜くと、意味不明な事を言いながらゴブリンに向かって走り出す。


「俺も行くか」


 ユートも剣を片手に身体強化をしてから疾走する。

 最初の相手はゴブリンだった。

 寄生されたゴブリンは無機質な瞳を宿しながら、錆びた剣を手に振り下ろしてくる。

 それを剣で払い、首を落とす。


「一体目!」


 続いてオークが棍棒による左からの薙ぎ払い。

 余裕をもってバックステップで躱すが、後ろから襲い掛かって来たゴブリンに取りつかれる。

 身をよじって突き飛ばすと、槍を持ったオークが突き刺してくる。


「おっと!」


 躱した槍を掴んで、顔面に蹴りを入れる。

 怯んだところで後ろに回り、即座に【火球ファイアーボール】をお見舞いする。

 オークの叫び声と焼ける匂いを嗅ぎながら機動力で翻弄し、数秒の内に三体のゴブリンの首と一体のオークの腱を斬った。

 そこで一旦、呼吸をして心を落ち着かせていると二体のオークが前から向かってくる。

 魔法で迎撃できる距離だったが、剣で戦いたくなって魔力を剣に流した。


「ハァッ!」


 二体のオークはどちらも槍を持っているらしく、仕留めると言わんばかりに同時に突いてくる。

 そこで調子に乗った俺は突いてきた槍をしゃがんで躱すと、全力で剣を上に振り切った。

 スパンッ!という良い音が鳴ると、穂先の部分が斬り落とされ、ただの長い棒になる。

 気を良くした俺は、突然頭に沸いた閃きを試みることにした。

 刃に纏わせた魔力を燃料に火の魔法を発動する。

 ボウッ!と燃えた火の剣をしっかりと握り、左回りにオークの周囲を回転しながら斬りつけた。


 ――火剣・回転切り! なんちゃって。


 おそらく客観的に見たら痛々しいだろうことは容易に目に見えたが、気分が昂ったのでしょうがない。そういう時もある。

 脂肪を蓄えたオークとはいえ、流石に火達磨にはならなかったが、腹部に火傷を負うと熱そうに叫んでいる。

 その隙を逃がさずに、ジャンプしながら剣を横に振った。

 俺のイマジネーションによって燃えていた剣から炎が吹き荒れる。

 火炎放射のように放たれた火が二体のオークを覆うように燃やす。

 今度は火達磨になると、そのまま地面に転がりながら息絶えた。


 周りの魔物は火を嫌ってか近づいて来ないので、都合がいいとばかりに二人の様子を見た。

 オーガは傷ついているものの依然として存在しており、どうやらアギトも苦戦しているらしい。

 ノーナはチマチマと削りながらダメージを与えている。

 残っているのはオーガとオーク4体、ゴブリンも4――いや、今減って3体になった。

 そのオークも2体は負傷で、もう2体は遠巻きに睨んできている。


「そろそろ魔力も厳しいな……」


 燃えている剣の火を消し、通常の状態に戻す。

 魔物たちは脅威がなくなったと思ったのか、一斉に襲い掛かってくる。

 オークが棍棒を持って叩き潰そうとし、槍を持って貫こうとし、同様にゴブリンも武器を手に向かってくる。

 そこでユートは最終手段に出る。


「【大地の槍(アースランス)】!」


 ユートの後方から数十本の大地の槍が前方の敵を穿つ。

 顔に喰らった事で即死した奴を除けば、全てが重傷を負っている。

 わき腹や胸、足、肩、腕など様々な部位を串刺しにされ、今にも死にそうだ。


「とどめだ、【氷の矢(アイスアロー)】」


 瀕死の重傷を負ったオークとゴブリンは身動きが取れないまま脳天を貫かれ、息絶えた。

 ついでにノーナを後ろから襲おうとしたオークもこめかみにブチ当てておいた。

 魔力を大量に失った事により、少し気分が悪くなる。


「残るはオーガのみか……」


 オーガを相手に真正面から戦っているアギト。

 横から援護の名のもとに攻撃することも出来たが、アギトに任せたため割り込みづらかった。


「アギト! 魔法で援護するか!?」


「いらぬ! 手出しは無用だ!」


 そういうだろうとは思っていたので、言われた通り大人しく傍観する事にした。


「彼、大丈夫なの?」


「大丈夫だろ。オーク10体を相手に大立ち回りを出来るんだ」


 信頼しているというよりかは、あのアギトが負ける光景を想像できないと言った方がいいか。

 当のアギトは冷静に長剣を握りしめ、オーガはツーハンデッドソードを力任せにぶん回して攻撃している。

 力に対して真正面から防ぐのではなく、受け流すことで武器の損耗と最小限の体力で戦っている。

 遠目から見ているだけで技術力の違いが一目瞭然だった。

 とはいえ、オーガに与えたダメージに比べれば少ないものの、アギトもそれなりに生傷を負っている。

 それから五分間、ずっと打ち合いをしている中で戦況に変化が現れた。


「あっ、剣が!」


 オーガの握っていた剣が半ばから折れた。

 それを成したのは勿論、オーガ相手に独りで立ち向かっているアギトだ。

 オーガは剣が折れたことにより致命的な隙を晒してしまい、最後にはアギトの振り下ろしにより一刀両断された。


そういえば、PV数が7万、ユニーク1万人を突破しました!

拙作を読んでくださり、いつもありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします!!

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